ミサキの年末年始 幕間！第4小隊と第6小隊編
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suzujiu_orichar 2020年09月19日(土) 13:13:16履歴
日の出より少し前。正に薄明の時刻のころ。
前線駆除班待機室の一角に男女3人と機械人形1人が車座に座っていた。
そろって青の腕章を巻き、難しい顔をしながら日の出のカウントダウンするラジオの音を聞いている。
「絶対に第4小隊長を休ませる」これが彼らの願いだ。
「シフト表は決まっている訳ですし…いくらロナさんでも諦めるのではないでしょうか。」
「エリック、甘いね。真面目一徹なロナさんが大人しく休むはずないだろ？」
恐る恐る声を出す気弱そうな黒髪の男、エリックの台詞を桃色のベリーショートの機械人形、ヘラが切り捨てる。その横で黒のおかっぱを揺らしながら頷く細身の女、ユリィ。
「軽業師、俺も同感だ。小隊長なら少しの異変でも飛んでくるだろう。」
筋肉が本体かのような男、ビクターが唸りつつ言う。
「こうなったら最後の手段でしょ。1週間くらいで治る怪我を……」
「駄目ですよ！」「小隊長に怪我なんかさせるな。」「真面目に考えな、ユリィちゃん」
物騒なユリィの言い方にエリックとビクター、ヘラが止めに入る。
「全力でお願いしましたし、上層部からの通達もあります。特に今回はあの子が関わっていますから、大丈夫だと……思いたいです。」
「あの子か……嬢にそこまでできるのかい？」
訝しむヘラにふと思い出したビクターが口を開いた。
「そういえば、小隊長を結社に勧誘したのはあのお嬢ちゃんらしいぞ？」
「そうなのかい？」
「本当に本当？」
ビクターの情報に驚くヘラとユリィ。
「あぁ。小隊長がミクリカで助けた子だったらしい。避難所生活の間に再会して拾って貰った、ってな。」
「それで、今も頭が上がらないってわけかい？ロナさんも愛いところがあるねぇ」
「ま、そんなとこだ。」
「それなら大丈夫じゃないでしょうか……？」
「そうだよ、みかんが気づかないうちにうちらで鎮圧できればいいんでしょ？」
ユリィの言葉に頷くビクターとエリック、ヘラ。
「そういえば、刀の子とスナイパー、どこに行ったんだ？」
周囲をキョロキョロ見回すビクター。
「アサギなら非番さね。毎回仕事が派手だからねぇ、部品の磨耗も激しいだろうし、メンテナンスじゃないかい？」
「ビクターさん、ヘレナさんは今日のシフトにいないだけですよ。」
ヘラとエリックの答えに「あぁ、そうか！」と手を打つビクター。
彼の頭にシフト表は入っていない。
「問題は俺たちの方だろうな。出動命令が下っても、指揮官がいつもと違う。」
「おまけに第6小隊長のアイツの下になるんだろう？」
「気が重すぎて黒い覇気出せそう……」
「そうですね……」
ちらり、と4人が見やった先には青みがかった黒の髪を持つ優男が机の上に座っていた。
隣りには影のように寄り添って立つ薄紫の髪で金銀のオッドアイの機械人形もいる。
「ねぇヨダカ、なんで私には長期休暇が無いんだい？」
「必要が無いからでしょう。」
「私もサオトメ君と同じ小隊長だよ？長期休暇の何もおかしくないだろうに。」
「答えはお分かりなのでしょう？聞くなんてお人が悪い。」
機械人形の言葉に口を尖らせた男は机の上で体育座りをする。
「小隊長達の中で一番柔軟に対応ができて、今のところストレスはあまり感じていないから、と言うところだろうね。この間のストレスチェックで何も出なかったのは私だけだし。」
「本業再開までの暇つぶし、ですからね。」
歌うように機械人形が答えた。大きく頷く男。
「と言っても他の小隊まで面倒見るのはお門違いだろうけどね。」
「それだけ貴方様は評価されている、という事でしょう。喜んで良いんですよ。ここに来てからキチンと仕事ができるようになった賜物です。と言うより、本業もまともにしてこなかったツケかもしれませんが。」
涼しい顔で言い放つ機械人形の言葉で複雑な表情になる男。
「いつからこんな事言う子になったかな」と小さく言うと「機械人形は持ち主に似るそうですね」と笑顔で返され、泣きそうになるのを我慢する。
「サオトメ君には医療班から診断書が出ている。恐らく、PTSDの症状と鬱の気だろうね。以前の話からすれば幻覚や幻聴もあるだろう。そして、休むと強迫観念に襲われる。彼の能力や経験値は前線から外すには惜しい存在だから、もちろん過労死なんて事はあってはいけない。それで今回の休暇対象になった、と言う訳だ。」
「アサギ殿も同じ時期に休暇です。理由があるのでしょうか。」
「それは私が押した。あれは一見の私には使いこなせないからさ。」
ふふ、と笑う男。
「まーったく、世の中つまらない事だらけだよ。血湧き肉躍る猟奇事件でも起きないだろうかね？キャベツの芯みたいなテロよりずっと面白いだろうに。」
「不謹慎です。お言葉を謹んでください。」
「うん？そうだったかな？まぁいい。これから少し寝る事にするよ。私の予測では朝のうちに1回テロがあるね。多分小規模だから、第4の面々も落ち着くんじゃないかな。と言うわけでアラームを30分後にセットしてくれ。」
「承知しました。主人マキール。」
出動命令が出るまで後62分ーーロナには、聞こえない。いや、聞こえさせない。
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前線駆除班待機室の一角に男女3人と機械人形1人が車座に座っていた。
そろって青の腕章を巻き、難しい顔をしながら日の出のカウントダウンするラジオの音を聞いている。
「絶対に第4小隊長を休ませる」これが彼らの願いだ。
「シフト表は決まっている訳ですし…いくらロナさんでも諦めるのではないでしょうか。」
「エリック、甘いね。真面目一徹なロナさんが大人しく休むはずないだろ？」
恐る恐る声を出す気弱そうな黒髪の男、エリックの台詞を桃色のベリーショートの機械人形、ヘラが切り捨てる。その横で黒のおかっぱを揺らしながら頷く細身の女、ユリィ。
「軽業師、俺も同感だ。小隊長なら少しの異変でも飛んでくるだろう。」
筋肉が本体かのような男、ビクターが唸りつつ言う。
「こうなったら最後の手段でしょ。1週間くらいで治る怪我を……」
「駄目ですよ！」「小隊長に怪我なんかさせるな。」「真面目に考えな、ユリィちゃん」
物騒なユリィの言い方にエリックとビクター、ヘラが止めに入る。
「全力でお願いしましたし、上層部からの通達もあります。特に今回はあの子が関わっていますから、大丈夫だと……思いたいです。」
「あの子か……嬢にそこまでできるのかい？」
訝しむヘラにふと思い出したビクターが口を開いた。
「そういえば、小隊長を結社に勧誘したのはあのお嬢ちゃんらしいぞ？」
「そうなのかい？」
「本当に本当？」
ビクターの情報に驚くヘラとユリィ。
「あぁ。小隊長がミクリカで助けた子だったらしい。避難所生活の間に再会して拾って貰った、ってな。」
「それで、今も頭が上がらないってわけかい？ロナさんも愛いところがあるねぇ」
「ま、そんなとこだ。」
「それなら大丈夫じゃないでしょうか……？」
「そうだよ、みかんが気づかないうちにうちらで鎮圧できればいいんでしょ？」
ユリィの言葉に頷くビクターとエリック、ヘラ。
「そういえば、刀の子とスナイパー、どこに行ったんだ？」
周囲をキョロキョロ見回すビクター。
「アサギなら非番さね。毎回仕事が派手だからねぇ、部品の磨耗も激しいだろうし、メンテナンスじゃないかい？」
「ビクターさん、ヘレナさんは今日のシフトにいないだけですよ。」
ヘラとエリックの答えに「あぁ、そうか！」と手を打つビクター。
彼の頭にシフト表は入っていない。
「問題は俺たちの方だろうな。出動命令が下っても、指揮官がいつもと違う。」
「おまけに第6小隊長のアイツの下になるんだろう？」
「気が重すぎて黒い覇気出せそう……」
「そうですね……」
ちらり、と4人が見やった先には青みがかった黒の髪を持つ優男が机の上に座っていた。
隣りには影のように寄り添って立つ薄紫の髪で金銀のオッドアイの機械人形もいる。
「ねぇヨダカ、なんで私には長期休暇が無いんだい？」
「必要が無いからでしょう。」
「私もサオトメ君と同じ小隊長だよ？長期休暇の何もおかしくないだろうに。」
「答えはお分かりなのでしょう？聞くなんてお人が悪い。」
機械人形の言葉に口を尖らせた男は机の上で体育座りをする。
「小隊長達の中で一番柔軟に対応ができて、今のところストレスはあまり感じていないから、と言うところだろうね。この間のストレスチェックで何も出なかったのは私だけだし。」
「本業再開までの暇つぶし、ですからね。」
歌うように機械人形が答えた。大きく頷く男。
「と言っても他の小隊まで面倒見るのはお門違いだろうけどね。」
「それだけ貴方様は評価されている、という事でしょう。喜んで良いんですよ。ここに来てからキチンと仕事ができるようになった賜物です。と言うより、本業もまともにしてこなかったツケかもしれませんが。」
涼しい顔で言い放つ機械人形の言葉で複雑な表情になる男。
「いつからこんな事言う子になったかな」と小さく言うと「機械人形は持ち主に似るそうですね」と笑顔で返され、泣きそうになるのを我慢する。
「サオトメ君には医療班から診断書が出ている。恐らく、PTSDの症状と鬱の気だろうね。以前の話からすれば幻覚や幻聴もあるだろう。そして、休むと強迫観念に襲われる。彼の能力や経験値は前線から外すには惜しい存在だから、もちろん過労死なんて事はあってはいけない。それで今回の休暇対象になった、と言う訳だ。」
「アサギ殿も同じ時期に休暇です。理由があるのでしょうか。」
「それは私が押した。あれは一見の私には使いこなせないからさ。」
ふふ、と笑う男。
「まーったく、世の中つまらない事だらけだよ。血湧き肉躍る猟奇事件でも起きないだろうかね？キャベツの芯みたいなテロよりずっと面白いだろうに。」
「不謹慎です。お言葉を謹んでください。」
「うん？そうだったかな？まぁいい。これから少し寝る事にするよ。私の予測では朝のうちに1回テロがあるね。多分小規模だから、第4の面々も落ち着くんじゃないかな。と言うわけでアラームを30分後にセットしてくれ。」
「承知しました。主人マキール。」
出動命令が出るまで後62分ーーロナには、聞こえない。いや、聞こえさせない。
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