Twitter創作企画「薄明のカンテ」のまとめ。世界観の説明に始まり、小説・イラスト・漫画・音楽その他、創作企画で生まれた作品を掲載する場所。

くしゃりと皺になったベッドのシーツ。
そこに仰向けに寝るヴォイド。
それだけは、結社に来てすぐの頃部屋で寝てた彼女の姿と変わりない。だが今日は違う。そんなところで無防備に寝てるなら俺にもしたい事はある。それを主張する様に、俺はヴォイドのヒラヒラしたキャミソールに手を掛けた。
「逃げなくて良いんだな?」
「うん…」
「まあ、こんだけ煽られて待てったって止まんねえし逃がせるかも分かんねえけど」
すっと上に持ち上げると露わになるヴォイドの肌。まあ、普段から見えない事も無いが自分の手で触れて捲って見えるのはまた意味が違うわけで。見えたヴォイドの肌はいつになく白い。俺もそうだが、結社以前はまともに陽に当たる生活をしていなかったからかその白さは薄く血管まで見える程。それにとても柔らかそうだった。思わず手を這わすとヴォイドはくすぐったいのか小さく体を震わせる。我慢出来なくなり、彼女の肌に覆い被さるように顔を埋める。そうだ。俺はずっとこうしたかった。
「テオ…」
ヴォイドに名前を呼ばれる度体の中心が熱を持つ。心臓が痛いくらいにドクドク脈打つ。胸が苦しいって、こう言うことか。
「もう…全部見てえ…」
頰に手を這わし優しく囁く。息を上げたヴォイドは少しだけいたずら気味に「まだダメ…」と呟いて同じ様に俺に手を這わす。
「まだ…?」
「まだ…」
「本当、ヒッデー女…」
その手を逃さない様に掴んで、そして考える。
何でこうなったのか分からない。昨日までヤケ酒してて、あれ?それから?
覚えて無いけどまあ良いや、今据え膳食うとこだから。
「手…」
「掴まれるの嫌か?」
「ううん…」
「なら良いだろ?」
「テオ君」
「…ん?何だその呼び方珍しいな」
「テオ君、起きて」
「いや、寝てねぇし起きてるって」
「ねえ、起きてってば」
「ンだよこんな時にそんな…タイガみてぇな喋り方して」
すると、目の前のヴォイドの顔が途端にカラフルになってまるで百面相みたくころころと変わる。そしてカシャッ!と切り替わり音が響いたと思ったらその顔はヴォイドではなくタイガになった。
「タイガみてぇなって言うか、オレだよタイガだよ!起きて!」
「うわぁぁぁぁあっ!!」
目の前に広がるのは、空になった瓶。適当に買って適当に食ったつまみの中途半端な残り。
危うくタオルケットに絞め殺されるのではと言うくらい変な巻き付かれかたしてる俺の目の前にはその光景とタイガとノエ。
「え、夢…?」
「顔見ないからどこ行ったのかと思ってたら…テオ君オレより強いからって流石に飲み過ぎじゃない!?いきなりむにゃむにゃ言って腕掴むしどうしたの?早く離して」
「え、夢…?」
「ご気分は大丈夫ですか?今お水をお持ちしますね」
「え、夢…?」
うわ、この量何!?と片付け作業に入るタイガ。
気持ち悪くないですか?と水をくれるノエ。
え?夢?夢か!?夢なのか!?こっちが夢じゃなくて!?あっちが夢!?
「いくらそこそこ強くてもこんな量飲んだら…あれ?何落ち込んでんの?」
「うるせー…」
「もしかして嫌な夢でも見た?」
興味津々な顔で聞いてくるタイガにプツッと何かが切れた。
「逆だ逆!何で起こしたんだよ!?もう一回寝る…続き見るぞ俺は…!」
「ちょ、ちょ、寝ないでよ!って言うかそんな良い夢見てたなんてオレ知らないし!」
「うるせぇ…せめて夢でも良いからとりあえず続きに行くんだ俺は…!」
「そんなに大事な夢なら機械班に聞いてみる?見てる夢を可視化出来る装置作れませんかー?って。そしたら夢の内容次第でテオ君が満足いくまで見てから起こす事も…あれ?何て顔してんの?真っ青だけど」
「いや、よくよく考えたらあれ見られるのはマズイ…」
「…どんな夢見たんだよ」
まあ想像付かなくもないけど、と冗談なのか本気なのか鼻歌交じりに、座る場所確保の為ガサゴソとゴミ掃除をするタイガ。何だかとんでもない弱みを握られた気がした。夢の内容も言っていないが多分反応でバレた気もする。
「で?そう言やお前何で来たの?」
「タイガもお酒で失敗しまして。傷を癒したくて来たんです」
「早々にバラすなってー!!」
聴くとどうやら酔った勢いでヒギリにとんでもねぇ事を口走った様で。悪口じゃねぇし好意的な話なら良いんじゃねぇの?とも思うが「これはファンの偲ぶ想いだから」と言うタイガにとっては大失敗だった様だ。まあ、これきっかけに逆に距離縮みそうだなとも思うが。あのタイプの女は自分が追われてるのが分かると広い意味で追ってくる男以外意識出来なくなる奴が多いから。
「何だ…お前も年明け早々やらかしたか」
「本当やっちゃったんだよ…あのびっくりした顔見た!?ヒギリちゃんの!」
「居なかったし見てねぇよ」
「可愛かった!」
「お前まだ酔ってんじゃねぇの?」
ひとしきり笑って酒の代わりに水を飲んで、流石に顔は洗った方が良いと思ったので散歩がてら酔い覚ましに共用の洗面所まで歩く。タオルで拭いていると後ろから声を掛けられた。
「やあ、メドラー君」
「ん?おお、ユウヤミ…アレ?」
「どうしたんだい?私の顔に何か付いてるかい?」
あれ?この色の白さ、何かデジャヴ。あ、そうだ。そう言やユウヤミを見て常々思ってたんだよな。ユウヤミって探偵業してたんだろ?岸壁街出身でもなく、そうであったとしてももう普通の生活営んで久しいユウヤミがやたら色が白くてなんか珍しいなって思ってたのはそうか年明ける少し前か。そうか年明ける少し前か。年明ける少し前にユウヤミの肌の白さに関心持ったか……!!
「…何変な顔してるんだい?え?本当に私の顔何も付いてないんだよね?」
少し不安になったのか鏡を覗き込むユウヤミ。
「ああ、大丈夫だ…鼻と口と目が付いてるだけだよ。そうだよ鼻と口と目が付いてるあたりそっくりじゃねぇか…」
「(何かあったな…)」
よくよく考えたら、僅差ではあるがヴォイドはユウヤミより少しだけ色が黒い。あくまでユウヤミと比べればだ。ヴォイドも十分白い。でもあの夢に出てきた肌の色は…あれはユウヤミの白さだ。
「ユウヤミの白さで現れてタイガで起こしにくるとかおちょくってんだろ俺の夢…」
「(何を見た…)」
大丈夫、君の夢は君だけのものだ、と上手い事慰められて部屋に戻る。物足りなそうなタイガがディーヴァ×クアエダムの曲を聴いていた。
「お帰りー」
「おう…」
「結局何の夢見たの?」
「…絶対言わねぇ」
「良いけど、そんな振り回されちゃむしろ悪夢じゃん」
好きな女が目の前で見知った男にトランスフォームすりゃそりゃ悪夢だろ。
とも言えず。でもまあ、夢見るくらいゆっくり寝れたって事で。十分幸せだって思っておこう。
あわよくば中断された夢の続きが見たかったものだが、何故だか犬と戯れる夢を見た。後々調べたら犬が出てくる夢は吉兆だとか何とか言うから、それはそれで良しだ。良しとしておこう。
それでもやっぱり、今年は色んなものに振り回されそうな予感がする。あ、でもやっぱりどっかで夢の続きは見たかった。

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