山ガール・ミーツ・山ガール／燐花
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rinka_creation 2021年02月01日(月) 19:33:58履歴
ウルリッカは山の空気を存分に堪能する。素晴らしい。この感覚、この空気。肌に触れる山の空気から愛おしい。山神様ありがとう、私今日を存分に楽しむ。
ざくざくと音を立てるウルリッカのブーツ。その足はそのまま川に向かう。
「そろそろ良い…？」
ずるずる川から引きずり上げたのは金属のワイヤーだ。ウルリッカは引き上げたそれに鼻を近付けるとスンスン音を立てて臭いを嗅いだ。
「抜けたかな？いける」
罠に使うワイヤーの金属臭は獲物となる動物、特に鼻の利くイノシシには非常に分かりやすい目印となってしまう。新品のまま使用するなんて「ここに罠がありますよ」と知らせている様な物なのだ。
なので少しの間川に浸させ金属の臭いを取る。ウルリッカの浸けておいたこのワイヤーも、おそらく誤魔化せるくらいには臭いが薄まった筈だ。
ウルリッカはこの日、括り罠を作ろうとしていた。
引き上げたワイヤーを手に良い場所まで足を伸ばす。獣道を進み、何となく当たりを付けて罠を設置していく。とは言え、獣道があるからと言って今もその道を使う獣が居るとは限らないし、ウルリッカは頻繁に山に来れる訳ではないので設置できる罠は最低限。捕まえても逃げられる可能性も十分だし、正直罠による狩猟は彼女のメインでは無い為ネームプレートだけ設置してとりあえずその場を離れる。
今日は愛銃、エルドちゃんのみ持って来ている。後は剣鉈と普通のナイフ。剣鉈はナイフとしてはかなり長いが、大型動物の心臓まで到達させようとしたら刃渡り二十センチは必要でこのサイズになってしまう。装備を確認するとウルリッカはザクザク山道を突き進んで行く。
「どっかに何か…ん？変なニオイ…」
これは、死臭だろうか。臭いを辿ってウルリッカが向かった先に地滑りを起こした跡を見付けた。
「地滑りだ…。あ、イノシシが落ちてる」
サッと懐から双眼鏡を取り出し覗き込む。この地滑りに巻き込まれたらしいイノシシが川に落ちて死んでいた。これは死後一週間程経過した腐敗の進行だろうか。目玉が無いところを見るとトンビやカラス等のスカベンジャーに食べられたかな。
どうかこの子の魂が無事山神様のところに還り、また私達に恵みを与える肉として戻って来ます様に。ウルリッカは心の中でそう唱えると、またザクザク奥へ進む。ちらほらと動物がいるのは分かるが、目立って獲ろうと思う獲物は居ない。山の空気だけでも堪能出来ているからそれでも良いけど。そんなウルリッカは目線の先に蛇を見付けた。
「……見っけ…」
何食わぬ顔で近付き頭を踏み付ける。そして直ぐに頭を切り落とした。毒蛇だった場合、唾液の変化した毒は頭部に残っているので燃やすか埋めるか後始末をしなくてはならない。ウルリッカは土に埋めた。蛇の皮は丈夫なので思い切り引いて良いし、腹に肉は無い為内臓も簡単に取り除ける。魚より捌くのは簡単では無いかな？と常々ウルリッカは思っていた。
「ゲット…」
思わぬ獲物を捕まえて少しだけモチベーションの上がったウルリッカ。山の景色も堪能しつつ獲物を求めて山を彷徨う。暫く歩くと流石に用意したボトルの水も切れてしまい、そう言う時は沢を利用する。意見が分かれるところな気がするが、寄生虫が怖いウルリッカは直ぐに飲む事はせず汲んだ水を煮沸した。気にし過ぎかもしれないが。
煮沸した沢の水に粉末ココアを混ぜる。サワサワと木々が囁く山の中で至福の一服。ああ、良いな。私今山に居るなぁ…。
故郷の事を思い出しながら自然の素晴らしさに浸っていると、ダーン！！と大きな音がビリビリと響き渡った。これが他の音ならウルリッカは大袈裟に驚いたかもしれないがここは山、聞こえたのはおそらく銃声。となればウルリッカも肝の座ったものである。
「誰か居るのかな…？」
耳を澄ませていると、よっぽど嬉しかったのか獲物を仕留めたのを喜ぶ声がした。しかも女性の声だ。
「女の人？」
やったー！やったですのー！と聞こえてくるので双眼鏡で見れば、そこに居たのは第四小隊のヘレナ・マシマだった。そう言えば彼女も猟をすると言っていたっけ。
歩いていれば行き合うかも、と思っていたら、意外と歩いて直ぐに仕留めた獲物を回収したばかりの彼女と行き合った。ヘレナは仕留めた鴨の肉の味を保つ為にその場で内臓を抜いていた。
「あ、腸抜き…」
「あ…第六小隊の…腸抜きフックをご存知ですの！？」
鴨の肛門に針金で作ったフックを突っ込んでずるーっと内臓を引きずりながらその会話はにこやかに行われた。
「へぇー！罠の免許あるんですの！？」
「うん。でも、そんな頻繁に来れないし、なかなかヌタ場も寝屋も簡単に探せないからそんなに沢山は仕掛けてない」
「確かに…あたしも前程頻繁には来れないですの。だからイノシシにはまだお目に掛かって無いですの」
「ところで…」
ウルリッカはちらっ、ちらっとヘレナの手の中にある鴨を目にする。勿論、と言わんばかりにヘレナはにっこり笑った。
「帰ったら解体…ですの！一緒にどうですの？」
「良いの…！？楽しみ…！」
その時、ウルリッカは蛇を獲っていた事を思い出した。
「…蛇ある」
「蛇！？じゃあ蛇も一緒に食べるですの…！」
鴨と蛇にうきうきしながら二人で山を進む。
罠猟でイノシシに遭遇した事はあるか、ワイヤーを引きちぎったイノシシの牙に刺されて何人も山中で亡くなったらしいとか、そう言う意味だと鹿に角で肺に穴を空けられたり後ろ足で蹴られて骨折した人もいただとか、そんな話に花を咲かせられるのがウルリッカは幸せだった。ヘレナも同様、まさか同じ話題で話の出来る女の子がいるなんて思わなかった二人。幸せそうに狩猟談義に花を咲かせる。三つ足のイノシシや犬を食うイノシシの話なんて喜んで聞いてくれる女性はなかなかいないからだ。同年代でこんなに趣味の話が合うなんて。
結局獲物はこの後ウルリッカが鳩を獲り、ホクホクしながら帰った二人はヘレナの部屋で解体、調理し山神様に感謝しつつその味に舌鼓を打った。
「はぁ〜…幸せですの…！」
「幸せな山の味…！」
「久々の猟…素材そのものを味わうなら味付けはシンプルに限りますの！！」
「でも…年に一度くらい…」
「ええ…ハンターならシシにありつきたいですの…！」
二人して頭の中はメスイノシシの事ばかり。
発情期に特有のニオイを放つオスの肉はこの時期不味くなりがちだ。致命傷を防ぐ為に鎧の様に硬くなる脂もまた風味を損なってしまうので猟師は発情期のオスは捨ててしまう事も多い。
だからこそ頭に浮かぶのは美味しい美味しい若いメス。
魚釣りも好きですの。私も。
スッポンが食べたいですの！私も！
ところで、あそこから少し行った所の川に天然温泉があるんですの。
そんな会話から次は温浴で山を感じたいなんて軽く約束を交わした二人。年明けにふとした会話から「そうだ、山へ行こう」となり温泉に向かう事になる。
ワイルドな山ガール達は山神様に感謝しながら今日も山の事を考えている。
ざくざくと音を立てるウルリッカのブーツ。その足はそのまま川に向かう。
「そろそろ良い…？」
ずるずる川から引きずり上げたのは金属のワイヤーだ。ウルリッカは引き上げたそれに鼻を近付けるとスンスン音を立てて臭いを嗅いだ。
「抜けたかな？いける」
罠に使うワイヤーの金属臭は獲物となる動物、特に鼻の利くイノシシには非常に分かりやすい目印となってしまう。新品のまま使用するなんて「ここに罠がありますよ」と知らせている様な物なのだ。
なので少しの間川に浸させ金属の臭いを取る。ウルリッカの浸けておいたこのワイヤーも、おそらく誤魔化せるくらいには臭いが薄まった筈だ。
ウルリッカはこの日、括り罠を作ろうとしていた。
引き上げたワイヤーを手に良い場所まで足を伸ばす。獣道を進み、何となく当たりを付けて罠を設置していく。とは言え、獣道があるからと言って今もその道を使う獣が居るとは限らないし、ウルリッカは頻繁に山に来れる訳ではないので設置できる罠は最低限。捕まえても逃げられる可能性も十分だし、正直罠による狩猟は彼女のメインでは無い為ネームプレートだけ設置してとりあえずその場を離れる。
今日は愛銃、エルドちゃんのみ持って来ている。後は剣鉈と普通のナイフ。剣鉈はナイフとしてはかなり長いが、大型動物の心臓まで到達させようとしたら刃渡り二十センチは必要でこのサイズになってしまう。装備を確認するとウルリッカはザクザク山道を突き進んで行く。
「どっかに何か…ん？変なニオイ…」
これは、死臭だろうか。臭いを辿ってウルリッカが向かった先に地滑りを起こした跡を見付けた。
「地滑りだ…。あ、イノシシが落ちてる」
サッと懐から双眼鏡を取り出し覗き込む。この地滑りに巻き込まれたらしいイノシシが川に落ちて死んでいた。これは死後一週間程経過した腐敗の進行だろうか。目玉が無いところを見るとトンビやカラス等のスカベンジャーに食べられたかな。
どうかこの子の魂が無事山神様のところに還り、また私達に恵みを与える肉として戻って来ます様に。ウルリッカは心の中でそう唱えると、またザクザク奥へ進む。ちらほらと動物がいるのは分かるが、目立って獲ろうと思う獲物は居ない。山の空気だけでも堪能出来ているからそれでも良いけど。そんなウルリッカは目線の先に蛇を見付けた。
「……見っけ…」
何食わぬ顔で近付き頭を踏み付ける。そして直ぐに頭を切り落とした。毒蛇だった場合、唾液の変化した毒は頭部に残っているので燃やすか埋めるか後始末をしなくてはならない。ウルリッカは土に埋めた。蛇の皮は丈夫なので思い切り引いて良いし、腹に肉は無い為内臓も簡単に取り除ける。魚より捌くのは簡単では無いかな？と常々ウルリッカは思っていた。
「ゲット…」
思わぬ獲物を捕まえて少しだけモチベーションの上がったウルリッカ。山の景色も堪能しつつ獲物を求めて山を彷徨う。暫く歩くと流石に用意したボトルの水も切れてしまい、そう言う時は沢を利用する。意見が分かれるところな気がするが、寄生虫が怖いウルリッカは直ぐに飲む事はせず汲んだ水を煮沸した。気にし過ぎかもしれないが。
煮沸した沢の水に粉末ココアを混ぜる。サワサワと木々が囁く山の中で至福の一服。ああ、良いな。私今山に居るなぁ…。
故郷の事を思い出しながら自然の素晴らしさに浸っていると、ダーン！！と大きな音がビリビリと響き渡った。これが他の音ならウルリッカは大袈裟に驚いたかもしれないがここは山、聞こえたのはおそらく銃声。となればウルリッカも肝の座ったものである。
「誰か居るのかな…？」
耳を澄ませていると、よっぽど嬉しかったのか獲物を仕留めたのを喜ぶ声がした。しかも女性の声だ。
「女の人？」
やったー！やったですのー！と聞こえてくるので双眼鏡で見れば、そこに居たのは第四小隊のヘレナ・マシマだった。そう言えば彼女も猟をすると言っていたっけ。
歩いていれば行き合うかも、と思っていたら、意外と歩いて直ぐに仕留めた獲物を回収したばかりの彼女と行き合った。ヘレナは仕留めた鴨の肉の味を保つ為にその場で内臓を抜いていた。
「あ、腸抜き…」
「あ…第六小隊の…腸抜きフックをご存知ですの！？」
鴨の肛門に針金で作ったフックを突っ込んでずるーっと内臓を引きずりながらその会話はにこやかに行われた。
「へぇー！罠の免許あるんですの！？」
「うん。でも、そんな頻繁に来れないし、なかなかヌタ場も寝屋も簡単に探せないからそんなに沢山は仕掛けてない」
「確かに…あたしも前程頻繁には来れないですの。だからイノシシにはまだお目に掛かって無いですの」
「ところで…」
ウルリッカはちらっ、ちらっとヘレナの手の中にある鴨を目にする。勿論、と言わんばかりにヘレナはにっこり笑った。
「帰ったら解体…ですの！一緒にどうですの？」
「良いの…！？楽しみ…！」
その時、ウルリッカは蛇を獲っていた事を思い出した。
「…蛇ある」
「蛇！？じゃあ蛇も一緒に食べるですの…！」
鴨と蛇にうきうきしながら二人で山を進む。
罠猟でイノシシに遭遇した事はあるか、ワイヤーを引きちぎったイノシシの牙に刺されて何人も山中で亡くなったらしいとか、そう言う意味だと鹿に角で肺に穴を空けられたり後ろ足で蹴られて骨折した人もいただとか、そんな話に花を咲かせられるのがウルリッカは幸せだった。ヘレナも同様、まさか同じ話題で話の出来る女の子がいるなんて思わなかった二人。幸せそうに狩猟談義に花を咲かせる。三つ足のイノシシや犬を食うイノシシの話なんて喜んで聞いてくれる女性はなかなかいないからだ。同年代でこんなに趣味の話が合うなんて。
結局獲物はこの後ウルリッカが鳩を獲り、ホクホクしながら帰った二人はヘレナの部屋で解体、調理し山神様に感謝しつつその味に舌鼓を打った。
「はぁ〜…幸せですの…！」
「幸せな山の味…！」
「久々の猟…素材そのものを味わうなら味付けはシンプルに限りますの！！」
「でも…年に一度くらい…」
「ええ…ハンターならシシにありつきたいですの…！」
二人して頭の中はメスイノシシの事ばかり。
発情期に特有のニオイを放つオスの肉はこの時期不味くなりがちだ。致命傷を防ぐ為に鎧の様に硬くなる脂もまた風味を損なってしまうので猟師は発情期のオスは捨ててしまう事も多い。
だからこそ頭に浮かぶのは美味しい美味しい若いメス。
魚釣りも好きですの。私も。
スッポンが食べたいですの！私も！
ところで、あそこから少し行った所の川に天然温泉があるんですの。
そんな会話から次は温浴で山を感じたいなんて軽く約束を交わした二人。年明けにふとした会話から「そうだ、山へ行こう」となり温泉に向かう事になる。
ワイルドな山ガール達は山神様に感謝しながら今日も山の事を考えている。
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