ウルリッカとサリアヌ姫様／べにざくろ
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g_a3b2c3o12 2020年09月17日(木) 23:44:21履歴
むかしむかし、むらで とっても わるい びょうき が りゅうこう しました。
やまがみさま に おいのりしても、なかなか びょうき は なおりません。
むらびと が こまっていると、そこへ うま に のった えらい きぞく の ひと が あらわれました。
「 なにやら こまっている ようですね 」
「 びょうき で みんな くるしんでいるんです 」
それを きいた きぞく の ひと は、
「 なんて たいへんだ 」
と たくさん の くすり を わけてくれました。
その くすり を のむ と、 びょうき は あっというまに なおりました。
よろこんだ むらびと は、 きぞく の ひと に なまえ を ききましたが、 そのひと は、なまえを いわず に いなくなりました。
「 なんて きぞく は すばらしい ひと なんだ ！」
「 やまがみさま の つかい だったのだ 」
むらびと は なんねん たっても、 いのちのおんじん の きぞく への かんしゃ を わすれません。
わたしたち も きぞくのひと への かんしゃ を わすれないよう に しましょう。
幼い頃から何度も読み聞かされた絵本の話がウルリッカの脳内で見事に再生されていた。
何故なら、ウルリッカ・マルムフェの目の前には絵本でしか知らなかった“貴族”がいたからだ。
カヌル火山の麓にある小さな村育ちで外の街になんて行ったことのなかった田舎者のウルリッカが貴族を見るのは初めてだ。それでも、貴族という身分の一族の名前は電子世界でしっかり把握していた。
貴族の名前はサリアヌ・ナシェリ。ナシェリ家といえば、カンテ・ターロゥという舞踊が有名で、その方面では絶大な知名度を誇る貴族だ。
その貴族であるサリアヌが何をしているかといえば。
マルフィ結社総務班人事部部屋の何の変哲もない椅子に腰掛け、これまた何の飾りもない机に置いたウルリッカの書類に不備がないか真剣な眼差しを向けていた。
（ まさか貴族が本当にいるなんて ）
感情が表情に出辛いウルリッカなのでサリアヌに不審がられてはいないが、内心は狂喜乱舞の嵐だった。それは、推しに会った時のオタクの気分―――オルヴォがユリィに会った時のテンションと同じようなものだ。
マルフィ結社に加入した際の書類に不備があったとかで呼ばれた先で貴族に会うとは、さすがの山神様だって想像できなかったに違いない。ちなみにウルリッカがサリアヌが貴族だと気付けたのは、サリアヌがウルリッカの書類を預かってからドレスを着ている訳ではないので簡略的ではあるが、丁寧なカーテシー付きの自己紹介をしてくれたからである。個人情報を渡す相手が誰だと分からないと不安でしょうから、という前置き付きでだ。その気遣いにウルリッカが感動したのは言うまでもない。
「 書類は大丈夫ですわ。ご足労願いまして申し訳無かったですわね 」
書類から顔を上げてサリアヌが黒い瞳をウルリッカに向けて優雅に微笑む。その微笑みに含まれたキラキラの貴族オーラ―――ウルリッカにはそう感じられた―――を浴びた庶民のウルリッカが出来るのは首を左右に振ることだけだ。そんな失礼ともいえる動作のウルリッカに対して、サリアヌは気分を害した様子は欠片も見せず美しく微笑む。
優雅で上品、高貴さを身に纏う者。
粗野な田舎者の自分とは違い、サリアヌは物語の登場人物のようだ。
（ すごい……まさに本物の、 ）
「 お姫様 」
思わずポツリと口をついてその単語が飛び出す。
ウルリッカの脈絡もないその言葉にサリアヌが小首を傾げるが、ウルリッカから見ればそれすら高貴な動作に見えてくる。もはや見えてくる、ではない。ウルリッカには高貴な所作にしか見えなかった。
「 もしかして……私のこと？ 」
やがて、ウルリッカの言葉の意味から何となく言わんとすることを察したサリアヌが、サリアヌ自身を指差しで問うてくるのでウルリッカは強く「是」の意味を込めて頷いた。
その思考を肯定された事に一瞬思考が止まったような顔をしたサリアヌだったが、やがてコロコロと鈴が鳴るように笑う。
「 冗談はよしてくださいな。姫ではありませんわ。王族の血は引いてませんことよ 」
その言葉に小首を傾げたのは今度はウルリッカだ。同じように首を傾げても、やっぱり何か違うような気がするのはウルリッカの気のせいだろうか。
とにかく、姫は駄目と言われたので何と言おうか。
とりあえず思いついた言葉を言ってみようと思って、ウルリッカは別の呼び名を口にする。
「 王女様の方がいい……？ 」
「 王女……いえ、私は 」
「 やっぱり、お姫様？ 」
何度もこういう押問答を繰り返して、とうとう白旗を上げたのはサリアヌだった。
「 少々恥ずかしいですが……かまいませんわ 」
「 ありがとう。サリアヌ姫様 」
最後は困ったような笑みだったけど、それでもやはり気品が感じられるその表情に、ウルリッカは自分の目に狂いは無かったと満足して人事部の部屋を後にした。
浮かれたウルリッカは2人の攻防を見守っていた周囲の人事部の人間が、扉が閉まると同時に耐えきれず噴き出したことは知る由もないままで。
貴族のお姫様との邂逅を終えて廊下を歩くウルリッカは上機嫌だった。
今の調子なら愛銃のエルドちゃんで450メートル先の的を狙撃できそうだ。いや、もっと先まで狙えるかもしれない。それ程に浮かれていた。
「 あら、ウルじゃない 」
ウルリッカに結社内の知り合いは少ない。名前を呼ばれて相手は誰かと振り向くと、薄紫色の髪をした機械人形が最初に目に入った。その隣には見知らぬ茶髪の人間の少女が１人。
「 シリル 」
機械人形とは面識があったので、その名を呼ぶ。
シリルとは前線駆除班で同じ第6小隊に所属する仲間だ。しかしながら、何やらフワフワとした変な性格付けがなされていて、元々の主人が何を思ってこういう性格にしたのか聞いてみたいような気分にさせる不思議な機械人形でもある。
「 良いトコロにいたわね。今、ヒマかしら？ 」
今日の予定は先程終わった書類補正くらいだ。後は趣味の的撃ちでもしようかと思っていたくらいなので、暇といえば暇である。ウルリッカはシリルの問いに頷いた。
「 良かったわ。 ワタシだと飲食するオプションが無いから、誰を誘おうか悩んでいたのよ 」
パンッと手を打ってシリルが喜びを表した。喜んでくれるのは嬉しいが、ウルリッカには話の流れが読めない。
「 ねえ。私は初対面だから、自己紹介していい？ 」
流れを変えるように、シリルのロングワンピースの袖を引いて少女が問う。
「 そうよね。人間は電隣会話ができないのだもの。まずは自己紹介しないとダメだったわね 」
「 じゃあ、自己紹介するね 」
そう言って茶髪の少女は明るく輝く水色の目をウルリッカに向けた。年齢はウルリッカより下のようだが、背はウルリッカより高い。ちょっと、悔しかった。
「 私はミア・フローレスって言います。所属は医療班です 」
まだウルリッカは医療班の世話になったことがなかった。聞きながら、今後は世話になることがあるかもしれないなんてことを思う。
「 とはいえ資格持ちでは無いから、簡単なコトしかできないのよねー 」
「 良いの！ 今、勉強中だもんっ！ こないだ、包帯巻くの上手になったってエル先生が誉めてくれたし……ああっ、ごめんなさいっ。医療班に来ることがあったら……あ、もちろん！ 無い方が良いんですけど、何かあったら私に出来ることなら頑張るので頼ってください 」
表情をくるくると変えながら言い切ると、ミアは満足そうにニッコリと笑う。自分とは違い随分と元気の良い子だな、と思いながら今度はウルリッカが口を開いた。
「 ウルリッカ・マルムフェ。ウルで良い 」
ウルリッカの自己紹介はミアとは違い、非常にあっさりとしたものであったので、補足説明とばかりにシリルが付け足す。
「 ウルはワタシと同じ第6小隊なのよ 」
「 あの優しそうな肌の白いイケメンお兄さんの？ 」
「 ……ミアの目にはそう見えているのね。ええ、そうよ。ユウヤミ隊長の隊の仲間なの」
憐憫の目を向けるシリルには気づかず、ミアは「 一緒にいる機械人形さんも素敵な感じだよね 」とニコニコと笑っていた。
何も知らないのは幸せなことである。
「 それでね、本題なのだけど。これからミアの部屋で女子会しようと思ってるのよ 」
「 女子会……？ 」
確かシリルは無性体の機械人形なのではなかっただろうか。
ウルリッカが思わずシリルをじっと見つめると、シリルは「 気分的には女子なのよ 」と心を読んだ回答を寄越してきた。あまりにも的確なシリルの回答に、ウルリッカは最近の機械人形は人間の心を読む機能がついているのか、などとズレた考えを持ってしまう。
「 今、ミアの部屋にはお菓子が沢山あるから食べ放題よ。この子ってばネビロスが買ってるお菓子全部真似して買っているんだもの 。あ、ネビロスっていうのは医療班の男性でね、ミアの…… 」
「 わー！！ 」
シリルの言葉を遮ってミアが大声を上げるが、彼女の顔だけじゃなく耳まで真っ赤に染まった姿を見れば、見知らぬネビロスとやらにどんな感情を抱いているのか初対面のウルリッカにでも容易に分かる。
クルクルと表情の変わる分かりやすいミアと、掴みどころのないフワフワとしたシリル。
この1人と1体ともう少し会話するのも楽しいかもしれない。ウルリッカはそう思った。
「 しようか、女子会 」
「 ありがとうございますっ。 私、ウルさんのお話聞きたいです 」
何の話をしようかなどとウルリッカは悩まなかった。今、話したいことは一つ。先程、運命的に出会った貴族の美しさについてだ。
その後行われた女子会で熱弁を振るったウルリッカが、結社には他にも貴族がいると聞かされて喜びの声を上げたのは言うまでもない。
初出Twitter
やまがみさま に おいのりしても、なかなか びょうき は なおりません。
むらびと が こまっていると、そこへ うま に のった えらい きぞく の ひと が あらわれました。
「 なにやら こまっている ようですね 」
「 びょうき で みんな くるしんでいるんです 」
それを きいた きぞく の ひと は、
「 なんて たいへんだ 」
と たくさん の くすり を わけてくれました。
その くすり を のむ と、 びょうき は あっというまに なおりました。
よろこんだ むらびと は、 きぞく の ひと に なまえ を ききましたが、 そのひと は、なまえを いわず に いなくなりました。
「 なんて きぞく は すばらしい ひと なんだ ！」
「 やまがみさま の つかい だったのだ 」
むらびと は なんねん たっても、 いのちのおんじん の きぞく への かんしゃ を わすれません。
わたしたち も きぞくのひと への かんしゃ を わすれないよう に しましょう。
幼い頃から何度も読み聞かされた絵本の話がウルリッカの脳内で見事に再生されていた。
何故なら、ウルリッカ・マルムフェの目の前には絵本でしか知らなかった“貴族”がいたからだ。
カヌル火山の麓にある小さな村育ちで外の街になんて行ったことのなかった田舎者のウルリッカが貴族を見るのは初めてだ。それでも、貴族という身分の一族の名前は電子世界でしっかり把握していた。
貴族の名前はサリアヌ・ナシェリ。ナシェリ家といえば、カンテ・ターロゥという舞踊が有名で、その方面では絶大な知名度を誇る貴族だ。
その貴族であるサリアヌが何をしているかといえば。
マルフィ結社総務班人事部部屋の何の変哲もない椅子に腰掛け、これまた何の飾りもない机に置いたウルリッカの書類に不備がないか真剣な眼差しを向けていた。
（ まさか貴族が本当にいるなんて ）
感情が表情に出辛いウルリッカなのでサリアヌに不審がられてはいないが、内心は狂喜乱舞の嵐だった。それは、推しに会った時のオタクの気分―――オルヴォがユリィに会った時のテンションと同じようなものだ。
マルフィ結社に加入した際の書類に不備があったとかで呼ばれた先で貴族に会うとは、さすがの山神様だって想像できなかったに違いない。ちなみにウルリッカがサリアヌが貴族だと気付けたのは、サリアヌがウルリッカの書類を預かってからドレスを着ている訳ではないので簡略的ではあるが、丁寧なカーテシー付きの自己紹介をしてくれたからである。個人情報を渡す相手が誰だと分からないと不安でしょうから、という前置き付きでだ。その気遣いにウルリッカが感動したのは言うまでもない。
「 書類は大丈夫ですわ。ご足労願いまして申し訳無かったですわね 」
書類から顔を上げてサリアヌが黒い瞳をウルリッカに向けて優雅に微笑む。その微笑みに含まれたキラキラの貴族オーラ―――ウルリッカにはそう感じられた―――を浴びた庶民のウルリッカが出来るのは首を左右に振ることだけだ。そんな失礼ともいえる動作のウルリッカに対して、サリアヌは気分を害した様子は欠片も見せず美しく微笑む。
優雅で上品、高貴さを身に纏う者。
粗野な田舎者の自分とは違い、サリアヌは物語の登場人物のようだ。
（ すごい……まさに本物の、 ）
「 お姫様 」
思わずポツリと口をついてその単語が飛び出す。
ウルリッカの脈絡もないその言葉にサリアヌが小首を傾げるが、ウルリッカから見ればそれすら高貴な動作に見えてくる。もはや見えてくる、ではない。ウルリッカには高貴な所作にしか見えなかった。
「 もしかして……私のこと？ 」
やがて、ウルリッカの言葉の意味から何となく言わんとすることを察したサリアヌが、サリアヌ自身を指差しで問うてくるのでウルリッカは強く「是」の意味を込めて頷いた。
その思考を肯定された事に一瞬思考が止まったような顔をしたサリアヌだったが、やがてコロコロと鈴が鳴るように笑う。
「 冗談はよしてくださいな。姫ではありませんわ。王族の血は引いてませんことよ 」
その言葉に小首を傾げたのは今度はウルリッカだ。同じように首を傾げても、やっぱり何か違うような気がするのはウルリッカの気のせいだろうか。
とにかく、姫は駄目と言われたので何と言おうか。
とりあえず思いついた言葉を言ってみようと思って、ウルリッカは別の呼び名を口にする。
「 王女様の方がいい……？ 」
「 王女……いえ、私は 」
「 やっぱり、お姫様？ 」
何度もこういう押問答を繰り返して、とうとう白旗を上げたのはサリアヌだった。
「 少々恥ずかしいですが……かまいませんわ 」
「 ありがとう。サリアヌ姫様 」
最後は困ったような笑みだったけど、それでもやはり気品が感じられるその表情に、ウルリッカは自分の目に狂いは無かったと満足して人事部の部屋を後にした。
浮かれたウルリッカは2人の攻防を見守っていた周囲の人事部の人間が、扉が閉まると同時に耐えきれず噴き出したことは知る由もないままで。
貴族のお姫様との邂逅を終えて廊下を歩くウルリッカは上機嫌だった。
今の調子なら愛銃のエルドちゃんで450メートル先の的を狙撃できそうだ。いや、もっと先まで狙えるかもしれない。それ程に浮かれていた。
「 あら、ウルじゃない 」
ウルリッカに結社内の知り合いは少ない。名前を呼ばれて相手は誰かと振り向くと、薄紫色の髪をした機械人形が最初に目に入った。その隣には見知らぬ茶髪の人間の少女が１人。
「 シリル 」
機械人形とは面識があったので、その名を呼ぶ。
シリルとは前線駆除班で同じ第6小隊に所属する仲間だ。しかしながら、何やらフワフワとした変な性格付けがなされていて、元々の主人が何を思ってこういう性格にしたのか聞いてみたいような気分にさせる不思議な機械人形でもある。
「 良いトコロにいたわね。今、ヒマかしら？ 」
今日の予定は先程終わった書類補正くらいだ。後は趣味の的撃ちでもしようかと思っていたくらいなので、暇といえば暇である。ウルリッカはシリルの問いに頷いた。
「 良かったわ。 ワタシだと飲食するオプションが無いから、誰を誘おうか悩んでいたのよ 」
パンッと手を打ってシリルが喜びを表した。喜んでくれるのは嬉しいが、ウルリッカには話の流れが読めない。
「 ねえ。私は初対面だから、自己紹介していい？ 」
流れを変えるように、シリルのロングワンピースの袖を引いて少女が問う。
「 そうよね。人間は電隣会話ができないのだもの。まずは自己紹介しないとダメだったわね 」
「 じゃあ、自己紹介するね 」
そう言って茶髪の少女は明るく輝く水色の目をウルリッカに向けた。年齢はウルリッカより下のようだが、背はウルリッカより高い。ちょっと、悔しかった。
「 私はミア・フローレスって言います。所属は医療班です 」
まだウルリッカは医療班の世話になったことがなかった。聞きながら、今後は世話になることがあるかもしれないなんてことを思う。
「 とはいえ資格持ちでは無いから、簡単なコトしかできないのよねー 」
「 良いの！ 今、勉強中だもんっ！ こないだ、包帯巻くの上手になったってエル先生が誉めてくれたし……ああっ、ごめんなさいっ。医療班に来ることがあったら……あ、もちろん！ 無い方が良いんですけど、何かあったら私に出来ることなら頑張るので頼ってください 」
表情をくるくると変えながら言い切ると、ミアは満足そうにニッコリと笑う。自分とは違い随分と元気の良い子だな、と思いながら今度はウルリッカが口を開いた。
「 ウルリッカ・マルムフェ。ウルで良い 」
ウルリッカの自己紹介はミアとは違い、非常にあっさりとしたものであったので、補足説明とばかりにシリルが付け足す。
「 ウルはワタシと同じ第6小隊なのよ 」
「 あの優しそうな肌の白いイケメンお兄さんの？ 」
「 ……ミアの目にはそう見えているのね。ええ、そうよ。ユウヤミ隊長の隊の仲間なの」
憐憫の目を向けるシリルには気づかず、ミアは「 一緒にいる機械人形さんも素敵な感じだよね 」とニコニコと笑っていた。
何も知らないのは幸せなことである。
「 それでね、本題なのだけど。これからミアの部屋で女子会しようと思ってるのよ 」
「 女子会……？ 」
確かシリルは無性体の機械人形なのではなかっただろうか。
ウルリッカが思わずシリルをじっと見つめると、シリルは「 気分的には女子なのよ 」と心を読んだ回答を寄越してきた。あまりにも的確なシリルの回答に、ウルリッカは最近の機械人形は人間の心を読む機能がついているのか、などとズレた考えを持ってしまう。
「 今、ミアの部屋にはお菓子が沢山あるから食べ放題よ。この子ってばネビロスが買ってるお菓子全部真似して買っているんだもの 。あ、ネビロスっていうのは医療班の男性でね、ミアの…… 」
「 わー！！ 」
シリルの言葉を遮ってミアが大声を上げるが、彼女の顔だけじゃなく耳まで真っ赤に染まった姿を見れば、見知らぬネビロスとやらにどんな感情を抱いているのか初対面のウルリッカにでも容易に分かる。
クルクルと表情の変わる分かりやすいミアと、掴みどころのないフワフワとしたシリル。
この1人と1体ともう少し会話するのも楽しいかもしれない。ウルリッカはそう思った。
「 しようか、女子会 」
「 ありがとうございますっ。 私、ウルさんのお話聞きたいです 」
何の話をしようかなどとウルリッカは悩まなかった。今、話したいことは一つ。先程、運命的に出会った貴族の美しさについてだ。
その後行われた女子会で熱弁を振るったウルリッカが、結社には他にも貴族がいると聞かされて喜びの声を上げたのは言うまでもない。
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