狼煙――ネビロスの場合（後編）
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g_a3b2c3o12 2020年09月19日(土) 08:53:35履歴
目が覚めた俺は、 ビニールで作られた簡易的な施設内に居た。体を起こすと気付いた看護師が慌てて寝かせに来る。俺は点滴だらけの腕を見て愕然とした。
手の甲には患があって紫色に変色しており、擦り減って凹凸 の無くなった中手指節関節が俺が何かを手の甲の骨が減るま で殴り続けた事を表していた。 反対の手も同様だった。
ふと、政府のお偉方だか知らないが、身なりのきちっとした 人間が集まって俺を見ている事に気がついた。
「彼です。ケンズでの生存者の中でもその..抜きん出て異様 だったのは」
「アレは本当に人間か?銃弾すら通さない耐久性に優れた機 械人形を拳一つで鉄の塊にまで分解してしまったと言うし」
「彼にケンズの様子を聞けば何か分かるかもしれないな」
「お待ちください。患者はまだ療養が必要です。状況から精 神的なショックが重篤なのは明白です。 ケンズでの生存者で はありますが、先ず一被害者として、患者としての扱い を!」
俺はどうやら、なるほど、銃弾も通さない頑丈な物を、あの 子を原型が無くなるほど殴れば代償として骨も擦り減らさせ るだろう。そうか俺は、最愛の妻を殺めた最愛の我が子を原型が無くなる程破壊したのか。
どんな気持ちだった?所詮機械人形と思っていたのか?或いは、ウイルスの回路を見ようとでもしたのか?妻の仇でも取 ったつもりか?汚染された我が子を殺戮兵器から解放してあげたつもりか?その結果が分解する程の殴打か?俺の頭を占めたのは何だった?
妻と子を失った絶望か? 子をウイルスから解放してやろうと言う責任感か?
それとも。
ウイルスを作ったものへの興味か?
「ファウストさん!まだ歩いちゃ駄目です!」
看護師の制止を振り切り、 私は歩み寄った。
「貴方達は何者だ?」
「わ、私達は、政府の.!」
「鳴呼、間接的に私の妻と子を殺した機関か」
「ち、違っ!」
「冗談だ。何故そんな目で私を見る?私を異様と言っていたじゃあないか。異様と対峙するのは、初めてかね?」
「ファウストさん!ーヶ月も昏睡状態だったんです!まだ安静に!」
「人と機械人形の同居する機関はないか?」
私の言葉にその場に居た皆が顔を強張らせた。その機関に所 属したとして、内側から破壊するのではないか?という顔をしている。
「まだ汚染されておらず、機械人形と共存出来ている機関はある」
しかし、一人の男がそう告げたのを私は聞き漏らさなかっ た。
「そこに戦闘部隊はあるか..?」
「ある。が、貴方を入れる訳にはいかない」
「何故?」
「貴方の為だ」
あまりにも真っ直ぐな瞳で言うものだから、私は思わず吹いてしまった。
「ヘヘ、ヘヘ、 なるほど」
「もし来てくれるなら、 貴方の腕を見込んで医療班に来て貰いたい。人が足りないんだ」
「私はこの通り拳で機械人形を破壊したぞ?戦力が多い方が 良いのではないのか?」
「確かに貴方は強い。 だが、機械人形を壊した記憶は無いん だろう?破壊する度に悲しみから自我や記憶を失われてはかなわないし、こんな風に長く意識を失われては余りにも脆弱過ぎて戦力として数えられるか分からないからな」
「ふふふ」
「貴方はいずれ機械人形との心中を望んでいそうだから悪いが余計に前線には立てられない。その代わり、治癒と守りを買って出てくれるなら我々の元に来て欲しい」
治癒と守り。私の医学知識と技術程度でも良い程人手が足り ないのは事実だろうが、心中されては困ると言うのも真実だ ろう。そしてまだ、守るべき人間がいると言うのも、この事 件の首謀者が生きているだろうということも。
放っておいたら知らず知らず自滅の道を選ぶであろう私を欲す。
そんな物好きの名前は一
ーようこそマルフィ結社へ
手の甲には患があって紫色に変色しており、擦り減って凹凸 の無くなった中手指節関節が俺が何かを手の甲の骨が減るま で殴り続けた事を表していた。 反対の手も同様だった。
ふと、政府のお偉方だか知らないが、身なりのきちっとした 人間が集まって俺を見ている事に気がついた。
「彼です。ケンズでの生存者の中でもその..抜きん出て異様 だったのは」
「アレは本当に人間か?銃弾すら通さない耐久性に優れた機 械人形を拳一つで鉄の塊にまで分解してしまったと言うし」
「彼にケンズの様子を聞けば何か分かるかもしれないな」
「お待ちください。患者はまだ療養が必要です。状況から精 神的なショックが重篤なのは明白です。 ケンズでの生存者で はありますが、先ず一被害者として、患者としての扱い を!」
俺はどうやら、なるほど、銃弾も通さない頑丈な物を、あの 子を原型が無くなるほど殴れば代償として骨も擦り減らさせ るだろう。そうか俺は、最愛の妻を殺めた最愛の我が子を原型が無くなる程破壊したのか。
どんな気持ちだった?所詮機械人形と思っていたのか?或いは、ウイルスの回路を見ようとでもしたのか?妻の仇でも取 ったつもりか?汚染された我が子を殺戮兵器から解放してあげたつもりか?その結果が分解する程の殴打か?俺の頭を占めたのは何だった?
妻と子を失った絶望か? 子をウイルスから解放してやろうと言う責任感か?
それとも。
ウイルスを作ったものへの興味か?
「ファウストさん!まだ歩いちゃ駄目です!」
看護師の制止を振り切り、 私は歩み寄った。
「貴方達は何者だ?」
「わ、私達は、政府の.!」
「鳴呼、間接的に私の妻と子を殺した機関か」
「ち、違っ!」
「冗談だ。何故そんな目で私を見る?私を異様と言っていたじゃあないか。異様と対峙するのは、初めてかね?」
「ファウストさん!ーヶ月も昏睡状態だったんです!まだ安静に!」
「人と機械人形の同居する機関はないか?」
私の言葉にその場に居た皆が顔を強張らせた。その機関に所 属したとして、内側から破壊するのではないか?という顔をしている。
「まだ汚染されておらず、機械人形と共存出来ている機関はある」
しかし、一人の男がそう告げたのを私は聞き漏らさなかっ た。
「そこに戦闘部隊はあるか..?」
「ある。が、貴方を入れる訳にはいかない」
「何故?」
「貴方の為だ」
あまりにも真っ直ぐな瞳で言うものだから、私は思わず吹いてしまった。
「ヘヘ、ヘヘ、 なるほど」
「もし来てくれるなら、 貴方の腕を見込んで医療班に来て貰いたい。人が足りないんだ」
「私はこの通り拳で機械人形を破壊したぞ?戦力が多い方が 良いのではないのか?」
「確かに貴方は強い。 だが、機械人形を壊した記憶は無いん だろう?破壊する度に悲しみから自我や記憶を失われてはかなわないし、こんな風に長く意識を失われては余りにも脆弱過ぎて戦力として数えられるか分からないからな」
「ふふふ」
「貴方はいずれ機械人形との心中を望んでいそうだから悪いが余計に前線には立てられない。その代わり、治癒と守りを買って出てくれるなら我々の元に来て欲しい」
治癒と守り。私の医学知識と技術程度でも良い程人手が足り ないのは事実だろうが、心中されては困ると言うのも真実だ ろう。そしてまだ、守るべき人間がいると言うのも、この事 件の首謀者が生きているだろうということも。
放っておいたら知らず知らず自滅の道を選ぶであろう私を欲す。
そんな物好きの名前は一
ーようこそマルフィ結社へ
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