気まま気ままに花を愛でる／燐花
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rinka_creation 2021年04月23日(金) 15:58:19履歴
例えどれだけ山の様に仕事が積まれようとも、花を愛でる心は忘れてはいけない。そう、例えどれだけ仕事が山積みされようとも。
「悪いのは君だ…君さえ逃げなければこんな事にならなかったのだからな…」
「……」
珍しくミサキ・ケルンティア以外で「絶対零度」なんて言葉が似合う様なそんな瞳でギルバートは見下す様にギャリーを見る。流石にこの視線から逃れられず、ギャリーはギルバートの顔をチラチラ見ながら書類にペンを走らせた。
サボりたい。サボって女の子と遊びたい。度重なるサボりと逃げにとうとう何かがキレたギルバートがこんなに恐ろしいだなんて。まさかのアルヴィまで加担するとは…敵に回すと意外と恐ろしい二人だ。
「ね、ねぇギルバート。俺トイレ行きたいなー…なんて…」
「トイレはさっき行っただろう…？言った筈だ、今日は休憩はおろか排泄の許可も含めて僕が管理する…君はここで今まで怠けた分までしっかり働かねばならない…それはもう馬車馬のごとくだ…！！」
「こ、怖ぇー…」
いつになく暗く淀んだ様な瞳でしかし射る様に覗いてくるギルバート。何だか彼らしからぬ圧にギャリーの心はもう折れそうだった。そもそもギャリーの日頃の行いが今の結果な訳なので自業自得なのだが。
「ギ、ギルバート…？」
「無駄口を利くな」
「怖ぇ…」
嫌だ。絶対に逃げ出してやる。何故なら今日はあらゆる種類の甜点心を持って来たのだ。全ては女の子と食べる為。医療班に持って行って、ミアかヴォイドと食べる事を想定していた。勿論、兎頭国の文化が好きだと言ってくれたアキヒロに分ける事も忘れていない。そして小さな体でいっぱい美味しそうに頬張ってくれるウルリッカ。彼女に一番食べて欲しくて甘い点心ばかり持って来たと言うのに。まさかこんなところでギルバートに捕まるなんて。
「絶対逃げてやる…！」
「聞こえているぞ…ギャリー」
ギャリーはペンを走らせながら必死に頭を捻った。どうにかしてギルバートを出し抜く方法は無いか。せめて彼のこの妙なテンションを解除する何かさえ見付けられれば…。
それにしても、ギャリーはギャリーで大変器用な事をしている。仕事をきちんと支障なくこなしながら頭の中でこの場から逃げる事だけを考えているのだ。そんな器用な事が出来るなら普通に仕事をしてさっさと片付ければ良いのに。
「ギルバート…？」
「手を動かせ」
「…本当いつになく怖ぇんだよな…」
「君さえ…君さえ逃げ出したりしなければ僕はこんな事していない…！」
鬼気迫るギルバート。ギャリーは少し引きながらもどうしようかと遠くを見つめた。どうにかしてここから逃げ出せないものか。
「……うーん、何だかなぁ…」
* * *
「と言う事があったもんでせ」
ギャリーは疲れた疲れたとぼやきながら肩をコキコキ鳴らす。そして手に持った豆沙包子を頬張った。彼に捕まり、横で見ていたセリカは呆れた様に溜息を吐いた。
「…で？どうやってそんなベネットさんから逃げて来たんですかぁ？」
「ん？ギルバートの言葉の言い回しが切羽詰まり過ぎて一々エロ同人みたく聞こえたもんでそれ指摘したら勝手に自滅した」
「お可哀想に…」
「俺もなかなか可哀想ずら？トイレの時間まで決められるとか…へぇ俺ァ囚人か何かかや？」
「でもそうでもしないとファンさん逃げてしまいますよねぇ？」
「それでもそんな横暴は断固反対だでせ」
可愛い女の子におねだりされたらすぐ言う事聞くんだけどなぁ、と呟きながらセリカに寄りかかる。セリカは相変わらずなギャリーを見てくすくす笑った。
「それ、食べたら戻ってくださいね」
「ええー…せっかく蒸して来たんだから熱々を女の子と食べるまで俺帰りたくねぇ」
「わがままなんですから…」
セリカは携帯端末を取り出すとメッセージを打ち出す。誰に打っているのか気付いたギャリーはそっとセリカに近付いて腕を伸ばし、バックハグをする様に彼女の体を拘束すると手から端末を優しく抜き取った。
「やっぱギルバートにか…」
「…返してくださいな。後この手は何でしょう？」
「セリカちゃん、俺の目の前でギルバートに告げ口入れようとしてたろ」
「あら、ファンさんを早く捕まえる様に促して見えたなら誤解ですよぉ。それよりこの手は何でしょう？」
「それは単に女の子とくっ付きたかったからってのもある」
「むしろそっちが目的ですよねぇ。離してください」
セリカの打ち掛けていた文字が端末に浮かび上がる。そこにあったのは「そんなに時間掛からずすぐ戻るそうですよ」だった。ギャリーに不利にはたらくものでもなく、かと言って諸々諦めたギルバートが変にイライラする文言でもない。ギャリーはぺしぺし手を叩かれたのでセリカを解放するが、どこか不服そうに彼女を見た。
「セリカちゃん、この後仕事無いんでしょ？」
「今のところ無いですけど私はそろそろお姉様とお茶をしに行きたいんです」
「はぁ…今日も俺じゃなくエレオノーラちゃんを優先されたか…」
「そんなの当たり前ですよぉ」
「ツレない…」
不意にセリカは目の前に袋を差し出され、一瞬びくりと体を強張らせる。受け取った彼女がガサガサとそれを開けると、そこにはまだ温かくおやつにちょうど良い大きさの包子が三個程入っていた。
「そのピンクに色付けしてあるのは蓮蓉包。甘い。それから、少し黄色っぽい生地になってるのはカスタードクリーム。それも甘い。一番オーソドックスな見た目してんのは、肉と茸。セリカちゃんに食べてもらいたくて持って来た」
「まあ…」
「セリカちゃん、茸好きずら？」
「…はい」
「じゃあきっと好きな味だよ」
餌付けですか？なんて言葉が一瞬過ったが、彼の優しさから出た行動なので野暮な事は言わずありがたく受け取った。
「じゃあ、お姉様といただきます」
「そうしてくれや。俺はウルちゃんとヴォイドちゃんとミアちゃんにあげてこよ。それから機械班でロザリーちゃんとヒルダちゃんとアンちゃんにも…」
「……」
セリカは静かに端末からメッセージを送る。しょうがない、少しだけ時間稼ぎをしてやろう。
「良いですけど、せめて一回は経理部に戻ってくださいよ？」
「んー…うん。いや、本当は一緒に包子食べたかったけど皆に配ったら戻るよ。女の子と一緒に食べたかったけど、ギルバートこれ以上怒らせるのも可哀想だし…」
熱々を女の子と食べたい、と言っていたのに何だかんだちゃんと戻る意思はある様だ。全く仕方ないなぁ、とセリカは身を乗り出すとギャリーが手に持って居た食べ掛けの豆沙包子を少し千切って一口摘み、パクリと自分の口に放り入れた。呆気に取られるギャリーの口にも同じ様にして放り込んでやる。
「ほら、熱々を誰かとシェア出来ましたでしょう？さあ後は彼女達に配ったら戻ってくださいな」
やっぱり甘いのより茸餡の方が好きですねぇ、と笑うセリカを見てギャリーは頭を抱えた。
「…小悪魔！！セリカちゃん小悪魔にも程がある！！」
「そんな事ないですよぉ」
「不意打ちで弄ぶ天才がここにいる…！」
「人聞き悪い事言わないでくださーい」
兎に角、シェアは出来たでしょう？としてやったりな顔を向けるセリカ。少し悔しさを滲ませたギャリーは赤い顔のまま医療班に向かって足を進めるが、振り返るとじっとセリカを見つめた。
「どうしました？」
「…次はエレオノーラちゃんとのお茶休憩に俺も混ぜてね。両手に花でお茶したい」
「お姉様が「良い」と言いましたら」
「…そのハードルが高いんだよなぁ…」
セリカからギャリーの行く先と諸々を聞いていたギルバートは少しそわそわしながら経理部の部屋で待っていた。彼女に限って嘘を言う事は無いだろうが、仮にギャリーが気紛れを発揮して逃げ出したらどうしようか。
しかし、そんな心配をよそにギャリーはきちんと帰ってきた。
「…僕を散々出し抜いて得た休憩はどうだったかな？」
「ああ…帰って来たしちゃんと仕事しますよ…」
「珍しいな…君が気紛れを発揮せず帰ってくるとは…」
「だって…どこ行っても皆二言目には「ちゃんと経理部帰ってね」って言うもんだから…」
ギルバートはセリカからもらったメッセージを確認した。そこには「ファンさんの行かれる先に居る女性達には先に一言送っておきますから」とある。おそらく、ヴォイドにもミアにも、そして彼が一番会いたがっていたウルリッカにも、皆に送っておいたのだろう。「ちゃんと経理部帰ってねと一言添えて送り出してくれ」と。こんな根回しをされたらギャリーも帰る以外の選択肢は無かったのだろうな。そう思いながらギルバートはこっそりセリカにメッセージを送った。
『面倒を掛けたな。ギャリーはちゃんと戻って来た。どんな手を使ったんだ？』
すると少ししてセリカから一言だけ返って来た。『女の子におねだりされたらすぐ言う事聞く、と仰ったので』と。ギルバートは、今後何かあったらセリカを頼ろう、と密かに思った。
本当に、真面目に仕事さえしてくれれば悪い奴では無いのになぁ。きちんと定時までに終わらせられる能力もあるし。
「…ギルバート？何？」
「いや、きちんと仕事してくれれば僕は何も言わない」
「……ん？あ、気付かなかった。包子食べたい？」
「一言も言っていないんだが」
とは言え何だかんだギャリーに乗せられやすいギルバート。アルヴィも含めて皆で包子を手に取り、それを片手に定時まで仕事をした。
次の日、また普通にギャリーがサボり癖を発揮した為朝からギルバートの怒号が経理部にこだました。
「悪いのは君だ…君さえ逃げなければこんな事にならなかったのだからな…」
「……」
珍しくミサキ・ケルンティア以外で「絶対零度」なんて言葉が似合う様なそんな瞳でギルバートは見下す様にギャリーを見る。流石にこの視線から逃れられず、ギャリーはギルバートの顔をチラチラ見ながら書類にペンを走らせた。
サボりたい。サボって女の子と遊びたい。度重なるサボりと逃げにとうとう何かがキレたギルバートがこんなに恐ろしいだなんて。まさかのアルヴィまで加担するとは…敵に回すと意外と恐ろしい二人だ。
「ね、ねぇギルバート。俺トイレ行きたいなー…なんて…」
「トイレはさっき行っただろう…？言った筈だ、今日は休憩はおろか排泄の許可も含めて僕が管理する…君はここで今まで怠けた分までしっかり働かねばならない…それはもう馬車馬のごとくだ…！！」
「こ、怖ぇー…」
いつになく暗く淀んだ様な瞳でしかし射る様に覗いてくるギルバート。何だか彼らしからぬ圧にギャリーの心はもう折れそうだった。そもそもギャリーの日頃の行いが今の結果な訳なので自業自得なのだが。
「ギ、ギルバート…？」
「無駄口を利くな」
「怖ぇ…」
嫌だ。絶対に逃げ出してやる。何故なら今日はあらゆる種類の甜点心を持って来たのだ。全ては女の子と食べる為。医療班に持って行って、ミアかヴォイドと食べる事を想定していた。勿論、兎頭国の文化が好きだと言ってくれたアキヒロに分ける事も忘れていない。そして小さな体でいっぱい美味しそうに頬張ってくれるウルリッカ。彼女に一番食べて欲しくて甘い点心ばかり持って来たと言うのに。まさかこんなところでギルバートに捕まるなんて。
「絶対逃げてやる…！」
「聞こえているぞ…ギャリー」
ギャリーはペンを走らせながら必死に頭を捻った。どうにかしてギルバートを出し抜く方法は無いか。せめて彼のこの妙なテンションを解除する何かさえ見付けられれば…。
それにしても、ギャリーはギャリーで大変器用な事をしている。仕事をきちんと支障なくこなしながら頭の中でこの場から逃げる事だけを考えているのだ。そんな器用な事が出来るなら普通に仕事をしてさっさと片付ければ良いのに。
「ギルバート…？」
「手を動かせ」
「…本当いつになく怖ぇんだよな…」
「君さえ…君さえ逃げ出したりしなければ僕はこんな事していない…！」
鬼気迫るギルバート。ギャリーは少し引きながらもどうしようかと遠くを見つめた。どうにかしてここから逃げ出せないものか。
「……うーん、何だかなぁ…」
* * *
「と言う事があったもんでせ」
ギャリーは疲れた疲れたとぼやきながら肩をコキコキ鳴らす。そして手に持った豆沙包子を頬張った。彼に捕まり、横で見ていたセリカは呆れた様に溜息を吐いた。
「…で？どうやってそんなベネットさんから逃げて来たんですかぁ？」
「ん？ギルバートの言葉の言い回しが切羽詰まり過ぎて一々エロ同人みたく聞こえたもんでそれ指摘したら勝手に自滅した」
「お可哀想に…」
「俺もなかなか可哀想ずら？トイレの時間まで決められるとか…へぇ俺ァ囚人か何かかや？」
「でもそうでもしないとファンさん逃げてしまいますよねぇ？」
「それでもそんな横暴は断固反対だでせ」
可愛い女の子におねだりされたらすぐ言う事聞くんだけどなぁ、と呟きながらセリカに寄りかかる。セリカは相変わらずなギャリーを見てくすくす笑った。
「それ、食べたら戻ってくださいね」
「ええー…せっかく蒸して来たんだから熱々を女の子と食べるまで俺帰りたくねぇ」
「わがままなんですから…」
セリカは携帯端末を取り出すとメッセージを打ち出す。誰に打っているのか気付いたギャリーはそっとセリカに近付いて腕を伸ばし、バックハグをする様に彼女の体を拘束すると手から端末を優しく抜き取った。
「やっぱギルバートにか…」
「…返してくださいな。後この手は何でしょう？」
「セリカちゃん、俺の目の前でギルバートに告げ口入れようとしてたろ」
「あら、ファンさんを早く捕まえる様に促して見えたなら誤解ですよぉ。それよりこの手は何でしょう？」
「それは単に女の子とくっ付きたかったからってのもある」
「むしろそっちが目的ですよねぇ。離してください」
セリカの打ち掛けていた文字が端末に浮かび上がる。そこにあったのは「そんなに時間掛からずすぐ戻るそうですよ」だった。ギャリーに不利にはたらくものでもなく、かと言って諸々諦めたギルバートが変にイライラする文言でもない。ギャリーはぺしぺし手を叩かれたのでセリカを解放するが、どこか不服そうに彼女を見た。
「セリカちゃん、この後仕事無いんでしょ？」
「今のところ無いですけど私はそろそろお姉様とお茶をしに行きたいんです」
「はぁ…今日も俺じゃなくエレオノーラちゃんを優先されたか…」
「そんなの当たり前ですよぉ」
「ツレない…」
不意にセリカは目の前に袋を差し出され、一瞬びくりと体を強張らせる。受け取った彼女がガサガサとそれを開けると、そこにはまだ温かくおやつにちょうど良い大きさの包子が三個程入っていた。
「そのピンクに色付けしてあるのは蓮蓉包。甘い。それから、少し黄色っぽい生地になってるのはカスタードクリーム。それも甘い。一番オーソドックスな見た目してんのは、肉と茸。セリカちゃんに食べてもらいたくて持って来た」
「まあ…」
「セリカちゃん、茸好きずら？」
「…はい」
「じゃあきっと好きな味だよ」
餌付けですか？なんて言葉が一瞬過ったが、彼の優しさから出た行動なので野暮な事は言わずありがたく受け取った。
「じゃあ、お姉様といただきます」
「そうしてくれや。俺はウルちゃんとヴォイドちゃんとミアちゃんにあげてこよ。それから機械班でロザリーちゃんとヒルダちゃんとアンちゃんにも…」
「……」
セリカは静かに端末からメッセージを送る。しょうがない、少しだけ時間稼ぎをしてやろう。
「良いですけど、せめて一回は経理部に戻ってくださいよ？」
「んー…うん。いや、本当は一緒に包子食べたかったけど皆に配ったら戻るよ。女の子と一緒に食べたかったけど、ギルバートこれ以上怒らせるのも可哀想だし…」
熱々を女の子と食べたい、と言っていたのに何だかんだちゃんと戻る意思はある様だ。全く仕方ないなぁ、とセリカは身を乗り出すとギャリーが手に持って居た食べ掛けの豆沙包子を少し千切って一口摘み、パクリと自分の口に放り入れた。呆気に取られるギャリーの口にも同じ様にして放り込んでやる。
「ほら、熱々を誰かとシェア出来ましたでしょう？さあ後は彼女達に配ったら戻ってくださいな」
やっぱり甘いのより茸餡の方が好きですねぇ、と笑うセリカを見てギャリーは頭を抱えた。
「…小悪魔！！セリカちゃん小悪魔にも程がある！！」
「そんな事ないですよぉ」
「不意打ちで弄ぶ天才がここにいる…！」
「人聞き悪い事言わないでくださーい」
兎に角、シェアは出来たでしょう？としてやったりな顔を向けるセリカ。少し悔しさを滲ませたギャリーは赤い顔のまま医療班に向かって足を進めるが、振り返るとじっとセリカを見つめた。
「どうしました？」
「…次はエレオノーラちゃんとのお茶休憩に俺も混ぜてね。両手に花でお茶したい」
「お姉様が「良い」と言いましたら」
「…そのハードルが高いんだよなぁ…」
セリカからギャリーの行く先と諸々を聞いていたギルバートは少しそわそわしながら経理部の部屋で待っていた。彼女に限って嘘を言う事は無いだろうが、仮にギャリーが気紛れを発揮して逃げ出したらどうしようか。
しかし、そんな心配をよそにギャリーはきちんと帰ってきた。
「…僕を散々出し抜いて得た休憩はどうだったかな？」
「ああ…帰って来たしちゃんと仕事しますよ…」
「珍しいな…君が気紛れを発揮せず帰ってくるとは…」
「だって…どこ行っても皆二言目には「ちゃんと経理部帰ってね」って言うもんだから…」
ギルバートはセリカからもらったメッセージを確認した。そこには「ファンさんの行かれる先に居る女性達には先に一言送っておきますから」とある。おそらく、ヴォイドにもミアにも、そして彼が一番会いたがっていたウルリッカにも、皆に送っておいたのだろう。「ちゃんと経理部帰ってねと一言添えて送り出してくれ」と。こんな根回しをされたらギャリーも帰る以外の選択肢は無かったのだろうな。そう思いながらギルバートはこっそりセリカにメッセージを送った。
『面倒を掛けたな。ギャリーはちゃんと戻って来た。どんな手を使ったんだ？』
すると少ししてセリカから一言だけ返って来た。『女の子におねだりされたらすぐ言う事聞く、と仰ったので』と。ギルバートは、今後何かあったらセリカを頼ろう、と密かに思った。
本当に、真面目に仕事さえしてくれれば悪い奴では無いのになぁ。きちんと定時までに終わらせられる能力もあるし。
「…ギルバート？何？」
「いや、きちんと仕事してくれれば僕は何も言わない」
「……ん？あ、気付かなかった。包子食べたい？」
「一言も言っていないんだが」
とは言え何だかんだギャリーに乗せられやすいギルバート。アルヴィも含めて皆で包子を手に取り、それを片手に定時まで仕事をした。
次の日、また普通にギャリーがサボり癖を発揮した為朝からギルバートの怒号が経理部にこだました。
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