Twitter創作企画「薄明のカンテ」のまとめ。世界観の説明に始まり、小説・イラスト・漫画・音楽その他、創作企画で生まれた作品を掲載する場所。











父の旅立ち


ぼくの父さんは機械人形に搭載されているAIの開発者の一人だった。酔うと「そのうち、AIにも擬似的な感情が生まれるだろう。だから友情もありうる。」と口癖の様に言っていた。
家では口喧嘩すら母さんに負けて尻の下に敷かれて困り笑いしているような人だったけど、会社では「仕事のできる人」として重宝されていたらしい。
その能力を買われてか、ある日、父さんは3日間だけ北の都市ミクリカに出張になった。
「取引先に送ったAIのデータにバグが見つかってね、ややこしい事になって父さんじゃないと直せないって言われたんだ」、と父さんは眉を八の字にして笑っていた。
夕ご飯の準備をしながらそれを聞いた母さんはわざわざ火を止めて椅子に座ってから「明後日は何の日だか覚えてるでしょうね?」と優しい笑顔で言った。いや、あれは優しいというより獲物を見つけた蛇だったかもしれない。
顔の強張る父さんと蛇顔の母さんの間に気まずい沈黙が流れる。
ずり落ちるメガネを持ち上げる父さん。
察したぼくとミーファは視線をチロチロ向けながら『気付けよ!』と父さんに念を送る。
残念ながら、父さんは察することが苦手だ。視線だろうと念だろうと気づかないだろう。
でもこういう時、何も気にせず笑顔で話せる機械人形のシュオニは凄いと思う。
「確か結婚記念日は明後日でしたよね?」
それを聞いた父さんの顔は輝き、母さんは余計なことをと言いたげな目をシュオニに向けた。
「うん、そう、結婚記念日!大丈夫、忘れてないよ!出し抜けに言われて言葉が出てこなかっただけだから!ね?」
早口でまくし立てる父さんに深いため息をつき、目を光らせる母さん。それに萎縮して一瞬輝いた父さんの表情がまた陰る。
母さんに見えないところでそっとシュオニに親指を立てる父さんが痛々しい…
「しょうがないじゃないかぁ、いきなり上司に言われたんだから…しかも向こうの会社にも予定があるんだし…」
ぐだぐだ言い訳をし始めた父さんの前で母さんが席を立った。びくりと父さんの肩が動く。
「言い訳は聞きたくないわ。1日くらいなら待つ。だから急いで帰ってくるのよ。」
おっ、と目を見開く父さん。
「いつまでもうじうじされたら家の中が湿気っぽくなるでしょ。ほら、出張用の荷物まとめないと。さっさとやってよ?シュオニ、父さん手伝ってあげて。」
「わかりましたぁ〜ユーロウさん、行きましょ!」
シュオニが父さんの手を引いて箪笥へ向かう。
「さて、と。ユーシン、ミーファ、お皿並べるの手伝ってくれる?」
「はーい」「りょーかい」

翌朝。
玄関にはスーツケースを下げた父さんがいた。
まだ出張が何たるかをわかっていないらしいミーファは父さんの荷物に下がっているストラップを引っ張ったり、腕にぶら下がろうとしていた。
「ね、お父さん!しゅっちょーって、ミクリカなんだよね?」
「あぁ、そうだよ。国の北側になるね。」
「じゃあさ、じゃあさ、ケーキ買ってきて!美味しいケーキ屋さんがあるってテレビで言ってたの!」
「いいけど…どこのケーキ屋さんかな?名前がわからないと行けないよ?」
「あ!う〜ん…どこだろう…ケーキ屋さんの名前は…?ちゃりちゃりみたいな…」
うーんと頭を抱えて思い出そうとするミーファ。ぼくも思い出そうとしたが見ていない番組だったらしい、ケーキ屋の紹介すら覚えていなかった。
「Cherry×Sherryのフルーツタルトではないでしょうか?」
母さんと一緒に台所からお弁当と水筒を持ってきたシュオニがそう言った。
「そう、それ!シュオニ凄いね、なんでわかったの?」
「いえ…最近のよく見ている番組で紹介されていたミクリカのケーキ屋さんを検索しただけです。その中でミーファさんの好きそうなものを宣伝していたのはCherry×Sherryだけでしたので。」
「なるほど、ありがとうね、シュオニ。よしわかった。帰りにそのケーキ屋さんのフルーツタルト買ってくるよ。ユーシンもフルーツタルト大好きだもんな?」
「あ、あぁ。」
「いいよね、母さん?」
「ちゃんと早く帰ってくるのよ。」
素っ気なく言う母さんの耳は赤かった。
「わかってるって!じゃぁ、お土産楽しみに待ってるんだぞ〜」
ひらひらと軽く手を振って父さんは家を出て行った。

父さんが夜居ないこと以外、何も変わらない。
日中、ぼくとミーファは学校で、シュオニは母さんと家事や買い出しに行って。
みんなそれぞれの時間を使っている。


機械汚染(マス・ズギサ)


異変が起きたのは父さんが出張に出かけて2日目の午後7時56分。
カンテ国初の国産人工衛星が打ち上げられた事が夕刊に載った日だった。
母さんがシュオニと買い出しに出かけて中々帰ってこないので、仕方なく台所にあるデジタル時計をちらちら見ながらシチューを作っていた時だった。ミーファがタブレットで見ていた動画投稿サイトに小さな乱れが起きて、数秒で砂嵐になった。
「お兄ちゃん!?ねぇ、これ何が起きてるの!?」
「だいじょーぶ、電波の乱れは時々あるだろー?」
すぐ直ると思っていたのに、中々砂嵐が収まらない。何だ?どういうことだ?とりあえず、鍋の火を止め、ミーファのタブレットを覗き込む。
腕には鳥肌が立っている。普通、電波の乱れで動画が固まって動かない事やモザイク状態になっても、電子世界の画像が砂嵐になる事はまずない。機械自体のバグでも聞いた事がない。今は父さんも母さんもシュオニもいない上に異常事態だということしかわからない。全画面表示の解除をしようと画面を叩くがうんともすんとも言わない。一度キャッシュクリアをして改めてブラウザを開いても相変わらずの砂嵐だった。まさか汚染?でもこれには強いクオリティフィルターもファイアウォールもある。そんな馬鹿な…
どこかで、ガラスの割れる音がした気がした。車のクラクション…?誰かの叫ぶ声?金属のひしゃげる音?よくわからない…妙な雰囲気が外に満ち始めているように思えた。
ぼくだけでミーファを守れる気はしない、とはたと思ったが何か解決策を考えなければ。
実際の時間は1分ほどだったらしいが、永遠にも思える時間が流れた。
急に砂嵐が収まると、最後に開いたブラウザが見えた。何だ、ただの通信障害か。
「あー!さっきまで見てた動画どっかいっちゃった!ねぇ、どうしてくれるの!」
「履歴探しなよ、多分どっかにある。」
「見たよ!ないんだもん!きっとさっきのザリザリが履歴持ってちゃったのね!」
嫌な予感がした。何か考えたとかではない、純粋な勘だ。
何気にテレビをつけて国営放送のチャンネルに変えると放送欄通りの番組ではなく、時間つなぎの自然の映像がゆったりした音楽と共に流れていた。
『この時間は予定を変更してこちらの動画を放送しております』
嘘だろ…?これは、相当な非常事態だ。何だ?どこかの放送塔に雷でも落ちたのか?噴火の予兆とか?あるいはーー?
「お兄ちゃん、何してるのー?お鍋放っといていいの?」
「あ〜?早速ご飯の心配か?いいけどさ。」
台所に戻って火を掛け直す。
シチューのルゥを鍋に入れた頃に硬い表情の男性アナウンサーがテレビに映った。

ーーニュース速報です。電子世界で何者かにより強力な汚染物質が撒かれました。ーー

まさかとは思ったけど、汚染か。でも政府のサイバーチームがいるから大丈夫だよな。

ーー該当省庁と関連機関が汚染物質の駆除を試みていますが、未だ解決の糸口が見つかっていません。ーー

は?嘘だよな?国中のハッカー集めてるんだよな?

ーー被害を抑える為に、皆さんの協力が必要です。まず、お使いの電子機器・機械人形を電子世界から隔離してください。繰り返します。まず、お使いの…ーー

呆然とニュースをミーファと見ていると、手元の鍋が吹きこぼれる音と共に家の鍵が開く音がした。
「たっただいま〜!ユーシン、ミーファ!ごめんね、遅くなっちゃって〜!」
「お帰りー!お母さーん!シュオニー!」
たたた…と玄関へ迎えに出るミーファ。その間に火力を下げ、鍋をくるくるかき回す。
母さんが荷物を持ち、それでもはみ出る多量な分を暗い顔のシュオニが持って帰ってきた。
「ただいまです…充電させてくだひゃい…電池残量が3%切ってるんです…」
「ごめんね〜シュオニ!それがね、ユィルさんところの奥さんに会ってねぇ、立ち話始めたら時間を忘れちゃって〜…」
シュオニらしくないほど悲壮な表情で充電ボードの上に乗って、体育座りをする。
数秒で充電が開始され、表情が崩れていく。
「あ〜癒されますぅ〜省電力モードだと電子世界にもアクセスできなくて不安だったんですよ〜」
ふにゃりとした笑顔でつぶやくシュオニ。
「あれ?電子世界が凄い混雑してますね。混雑っていうか混乱?いろんなニュースがあっちゃこっちゃしてますねー」
電子世界…?さっき何か…ニュースで…
「シュオニ!今すぐ電子世界との接続を遮断してくれ!」
「え?」
「いいから早く!」
「機内モードに切り替えました…ユーシンさん、何があったんです?」
困惑した表情のシュオニ。
「汚染だよ。外で何か妙な事は起きなかった?」
「全速力で走っている機械人形を何体か見たわね。信号が中々変わらなかったりもしたけれど、それが何?」
訝しむ母さんの声。外から聞こえた音は気のせいだったのか?
「窓ガラスを破って外に飛び出している機体もいました。車に急ブレーキをかけて外へ飛び出した機体もいましたね。電池残量が少なすぎて撮影はできませんでしたが。」
証拠がなくてすみません、と俯くシュオニ。
「証言があれば充分だよ、シュオニ。…そうか、汚染物質は本当に撒かれたのか…」
「さっきから何言ってるの、ユーシン?汚染くらい国が対応できるでしょ?」
「それが、全然なんだって。」
一瞬で母さんの顔に影がさす。
「そんな、本当?」
「本当だよ、さっきテレビで速報やってたからー」
いつのまに開けたのか大袋のお菓子をぽりぽり食べながらミーファが言う。
母さんがテレビに視線を向ける。

ーー首相の会見はこの後、午後8時15分からです。ーー


ミクリカの惨劇

翌朝になっても災害対策本部が設置されただけで、汚染駆除は進んでいなかった。
その代わり、マスコミが国内の被害状況を放送していた。
把握されただけでも国内の機械人形の47%が異常暴走を起こし、行方をくらませているということだった。テレビの画面にはソナルトやスラナの大きな通りでガラス片が散らかっている様子が映っていた。

ーーご覧ください、辺り一面にガラス片が飛び散っています!ここまで多いと普通の車は通れません。用心していないと靴にガラスが刺さってきますーー
ーーあちらの家の窓にも大きな穴が開いています。住民の方に伺ってみましょう…ーー

聞かれたって困るだろうに、と思いながらテレビの向こうを眺める。

ーーええ、ええ、優しくて賢い機械人形だったんですよ、あの子。それなのにいきなり持っていたものを落として一目散に窓に向かって突進していったんです。あの時、何でしょう、初めてあの子が怖いと思ったんですーー

いろんな被害の報道の所為か、ぼくもミーファも学校は休校になった。
でも母さんは「仕事は休めないのよ、あなたたちはちゃんと留守番しててね」と言ってパートに出て行った。つくづく大人って奴は大変だ。
テレビは通常の番組放送の端にずっとテロップが流れている。
この時までは何かゲームの中を歩いているような、修学旅行の当日のような、日常が非日常にひっくり返されていく感覚を楽しんでいた。
うちのシュオニは暴走していないし、電子世界が使えない以外の不便も特にない。
ついでに休校になるなんて楽しすぎる、と内心胸を高鳴らせていた。
午前中の間に汚染は機械人形のMeltyOSのみでタブレットなど普通の電子機器端末は汚染されない事が確認されたと発表があったので汚染も悪くないとか思い始めていた。

そして、その日の昼過ぎ。
付けっ放しになっているテレビから急に速報のサイレンとテロップが流れた。
『ミクリカでテロが発生 機械人形の暴走と思われる』
『周辺地域の皆さんは素早く安全なところへ避難を』
ミクリカだって…?父さんの出張先じゃないか!
思わず立ち上がりかけ、慌てるなと自分に言い聞かせて座り直す。
さっきまでの番組がいきなり途切れ、ニュースセンターの様子が映る。

ーー番組の途中ですが、ここでニュース速報です。正午ごろ、ミクリカでテロが発生しました。汚染された機械人形による暴走と思われます。軍警が出動していますが、未だ鎮圧の目処は立っていません。ーー

機械人形の暴走だって…?汚染で?まさか、そんな?父さん…
画面がセンター内から外に立つリポーターに移った。安全の為かヘルメットを被っている。

ーー私は今、現地から1.5km離れた地点にいます。ここからでも市内から立ち昇る黒々とした煙が何本も見えます。時折、なにかが爆発するような音も聞こえます。 直昇飛行機が何台も上空を飛び交っている様子も見えます。軍警への取材では正午ごろに起きた機械人形のテロで、既にかなりの方が犠牲になったようですーー

洗ったコップを丁寧に磨いているシュオニを横目でチラリと見る。
綺麗に磨けて満足したのか、口元が緩んだ。
何もない、うちのシュオニはそんな事しないし、なんといっても家族だ。
電子世界へも繋がないように言った。だから、大丈夫。

ーー未だ市内は機械人形によるテロが続いています。市外にいる方は中に入らないよう、市内にいる方は一刻も早く市外へ脱出して下さいーー

騒がない。父さんがいない間はぼくが家を守るんだから、ぼくは騒いじゃいけない。
「ユーシンさん、そんな怖い顔してどうしたんです?」
「おわっ!?」
真剣に考えていたせいか、となりにシュオニが座った事に気がつかなかった。
「ニュースですか?…え、ミクリカでテロ!?ユーロウさんの出張先じゃないですか!なんですぐ言わないんです!?早く連絡を取らないと!電話回線は使用してもいいですか?」
電子世界でなければ大丈夫か、と思い慌てて頷く。
一つ頷いたシュオニの耳から、ピピポパピとボタンを押すような音がした。
そうか、そうだ、父さんが無事か確認しないと。
「…だめです。電話回線も混乱しているようで繋がらないです。」
「そっか…しょうがない、確か緊急時用の伝言サービスがあったよな?」
「そうですね。伝言は何にしましょうか?」
「んー…いや、自分で電話するよ。」
「わかりました。ミーファさんにはこのニュースを伝えますか?」
「とりあえず後回しだな。先に母さんに連絡した方がいいね、あの職場だとニュースは見られない。」
「わかりました。」
またシュオニの耳からピポポパと音がした。
ぼくも自分の端末を立ち上げて電話アプリを開く。伝言サービスにかけようとして手が止まる。『記録できるのは約30秒です』この時間に何を言える?
「なんとか繋がったので、連絡完了しました。早引きして帰るそうです。」
「了解。母さんは無事だったんだな。」
よし、と思って伝言サービスに掛ける。
『こちら、緊急時用伝言サービスです。ピーという発信音の後に、お名前とご用件をどうぞ。時間は30秒です。…ピー…』
「父さん?ユーシンです。こっちは皆んな無事だよ。これを聞いたらすぐに電話下さい。待ってます。では。」
アプリを切り、思う。誰がテロなんて始めたんだろう。なんでもない日常をひっくり返したくなる何かがあったのだろうか。そうだとしても、関係のない人を巻き込むなんて最低だ。今日を普通に生きていただけなのに、死ななきゃいけないなんて理不尽だ。その人にも明日があったのに。
「ユーシンさん、ミーファさんにはどう伝えますか?」
「ミーファにはぼくから言うよ。シュオニは洗濯物干すの頼めるかな?」
「わかりました。」
ミーファの部屋のドアを開けるとミーファはベッドの上で漫画を読んでいた。個性派ピアニストと真面目指揮者のラブコメのようだ。
むすっとした顔を上げるミーファ。
「なーにー?人の部屋にノック無しってどーゆーこと?」
「あぁ、ごめん。それよりな、ミクリカでテロだってさ。」
「てろ??大っきいバイオリン?」
「それチェロだろ…?じゃなくて、自分の意見を押し通す為に街で暴力を振るうことがテロ。普通そんなに起きることじゃないけどな。」
「ミクリカってお父さんがしゅっちょーに行ったところだよね?お父さん大丈夫かな?」
「大丈夫じゃないの、父さんだし。」
「なんか弱そうじゃん?」
「仕事ができるから出張行ったんでしょ。信じてあげようぜ。」

早引きした母さんが帰ってくる頃には推定犠牲者数は市内の少なくとも20%を超えたと発表されていた。
テレビを見た母さんの顔は感情を押し殺した、子供の不安を煽ってはいけないと堪えるあくまで母でいようとする一人の人の顔だった。
午後2時を回った頃、鎮圧宣言が速報に入った。これから生存者を探すらしい。
まだ危険なので一般の人やマスコミなどの立ち入りは禁止されているそうだ。
出張へ行って3日目だったその日の夜、父さんは帰って来なかった。


犯行声明

朝になっても父さんは帰ってこなかった。
テレビからは現地のリポーターの乾いた声が流れていた。

ーー軍警によると、夜通しの捜索は一部では続けられています。瓦礫が多すぎる上に、火の元も多い為、隊員の安全が確保できないと軍警が判断し、広範囲では行われていない模様ですーー

カメラがスタジオに戻ると、いかにも「知識人です」という顔をしたおじさん達が事件の事を話し合う。正直、動機とか手口とかどうでもいい。父さんが無事かどうかわかればそれでいい。
「お兄ちゃん…」
「何。」
「指、噛んでる。また?」
はっと口元から手を離す。「指じゃない、爪だ」と強がってみたが意味はない。せめて、兄でいなければ。
「何が違うのさ」とむくれるミーファを無視して考える。父さんなら生きている、またあの困り笑いをしてくれる、「すぐ帰って来られなくてごめんな」と言って帰ってくるんだ、と。

正午から一部のマスコミが市内への立ち入りを許可され、凄惨な光景が国営テレビの電波に載った。少しでも情報が欲しいぼくはテレビの前を陣取ったけれど、ミーファは読みかけの漫画があると言って部屋にこもり、シュオニはベランダで洗濯物を干し、母さんはリビングで家計簿をぼんやりと眺めていた。
最初にぼくが見たのはいたるところに散らばるガラス片。それから、崩れ掛けるビル。倒された街路樹。ぐちゃりと曲がった乗用車の群れ。店の品物が雪崩を起こして山になり、それらが踏みつけられた跡があった。時々、ばらばらになった機械人形が落ちている。潤滑油が血のように垂れていた。
飛び散っている血や血だまりは映さないようにしているらしいが、努力の甲斐なく所々写っていた。
見た人は皆、かすかな希望を捨てただろう。
特に酷かったのは中央通りと岩壁街だったらしい。
子供の積んだつみきのようにバラックが並んでいた岸壁街は跡形もなくただの瓦礫の山になっていた。そこに家があった事もわからないほどに。
中央通り付近の映像はあまりの悲惨さに自主規制が掛かり、音声による実況だけになった。

ーー気温の上昇で陽炎が昇っていますーー
ーーこれは、酷いです…腐臭が上がり始めていますね…ーー
ーー折り重なるように人々が倒れています…ーー

プツッという音ともにテレビの画面が消えた。
振り返ると無表情の母さんがテレビのリモコンを持っていた。
「ユーシン、無理に辛いものを見る必要はないのよ。」
その硬質な声はぼくに言ったというより、自分に聞かせているようだった。
何故かぼくは辛いとは思っていなかった。ただ、胸の底にひんやりとした苦い何かが溜まっていく感覚がした。
きっと、同じ国で同じ時間にあんな事が起きているという状況を飲み込みたくなかったのだろう。自分とは無関係で父さんも途中で足止めされてるだけなんだと思いたかった。

午後2時、動画投稿サイトにテロの首謀者だと名乗る男の動画がアップされた。
動画は骨と皮の様に痩せたやつれた男が白壁の部屋に入ってくるところから始まる。
緑のチェック柄のシャツの上に黒いパーカーを羽織っている。
中央に置かれたパイプ椅子に腰を下ろすと「私はギロク…25歳だ。」と名乗った。
「今回の機械汚染を始め、テロを計画したのは私だ。」
虚ろな目をカメラの向こうに向ける。
「目的はこの国の人間の殲滅だ…私はほとほと人類というモノに幻滅した。」
淡々とした話し方から彼の絶望が垣間見える。
「人間どもは動物も空気も資源も好き勝手に使い地球を食いつぶしている。君らも長く叫ばれてきた地球温暖化やら資源の枯渇やら聞いてきただろう。」
最初に比べると心なしか目に力が入っているように見える。
「挙げ句の果てに仲間の人間すら見殺しにするんだ。2年前だ……私の恋人は駅で発作が起きた時、誰も手を差し伸べてくれずそのまま亡くなってしまった……」
一瞬遠い目をした男に哀愁が漂った。
「人間は哀れなものだな。機械人形には人を助ける本能が埋め込まれているが、主人の命令を聞き遂行することが優先事項な所為で近くに寄ろうともしなかった。そのプログラムを書いたのもまた人間だ。故に!私は人間を殲滅する。機械人形は悪くない、悪いのは自分可愛さに保身に逃げる人間だ!」
はぁはぁと荒い息を吐く。やつれた顔の中で目だけが異様にギラギラと輝いていた。
「手始めにこの国の人間を殲滅する。次のテロが起きるまであと1時間だ。」
そう言い残し動画は終わる。
この動画は瞬く間に出回り数分で再生回数が10万を超えた。
……ぼくが見て知っているのはここまで。実際どこでテロが起きたのか、実は起こらなかったのか、政府もマスコミも沈黙していた。
次のテロの土地よりミクリカの惨劇を優先したのだ、と気付いたのは何日も経った後だった。

この日の夕方、機械人形が街から消えた。前触れはなかった。
機械汚染されたあの日は騒がしかったのに対し、気持ち悪いほど静かに機械人形達はこの国中から消えた。GPSで居場所を探したり、オリジナルの探知機で探そうとした人たちもいたが、位置も方向性も全く掴めなかったと電子世界の記事に書いてあった。
電子世界に一切繋がせていなかったうちのシュオニはいつも通り、食器をせっせと磨いていたが。


父の箱


翌朝、起きて端末を起動させてみると電子世界は使用不可能になっていた。
何をしても白いブラウザの画面には『電子世界に接続できません。』と表示されるだけで、解決策は見つからなかった。
こうなると情報源はテレビとラジオしかない。
普段使わない電話の連絡網で今日も学校は休みだと連絡が来た。
相変わらずテレビもラジオもテロの話しかしない。いつものCMすら流れない。
誰だよ、非日常は楽しいなんて言ったのは。

電子世界が使えなくなった日の翌日はいつもより暑い日だった。
ニュースではミクリカで破壊された状態で見つかった機械人形から機械汚染のプログラムが検出されたと騒いでいたがそれがどうした、と虚ろな目を画面に向け、体育座りをした膝に顔を埋める。父さんはどこでどうしているのか、それだけが知りたかった。
ミーファは前より物音に敏感になったし、母さんは物を落としやすくなっていた。

その日の夕方、家に宅配便が届いた。それは、父さんがもう絶対に帰ってこない事を意味するものだった。
死亡通知書と遺品の入った箱。
箱を開けた母さんは、父さんに蛇顔を向けていた頃の母さんと別人のようだった。
すっぽりと表情の抜け落ちた顔は教科書で見たお面を思い出させた。
横から覗き込んだミーファは「メガネ!」と叫んで掴んだ父さんのメガネを手放さなかった。
シュオニは無表情のまま何も言わずに箱の横に座り込んでいた。
同時に届いた書類では、あまりにも犠牲者の人数が多く、気温上昇による腐敗の速度も速い事から、身元の確認でき次第、死亡診断書と火葬許可証を発行し、まとめて火葬したことが書かれていた。文面から察するに、まともな葬式は誰も行われなかったらしい。
箱の隅に小さな壷も入っていた。
「母さん、これって……?」
何か入っているのだろうと振ってみたが、なんの音もしない。まとめて火葬したら、それぞれの燃え残りなんてわからないだろう。仕方ない事なのだろうか。
発見された場所や遺体の損壊状況なども書類に書いてあった。
『ミクリカ市内、中央通りにて発見される』
『損壊が激しいが、死因は頭部打撲による脳挫傷血腫』
『吉川線有り、首を絞められながら何度も頭を打ち付けられたと思われる』

どんなに痛かったろうか。辛かったろうか。悔しかったろうか。
想像しようとしてやめた。
ぼくにわかることではないし、これ以上自分の傷を深くしたくない。

画面が蜘蛛の巣状に割れた父さんの端末が出てきたので立ち上げてみる。
確かパスワードは家族全員の誕生日を繋げたものだったはず。
最後の画面には母さん宛の未送信のメールが残されていた。
『うまく仕事が早く終わったから、ケーキ屋に寄って帰ります。夕方には帰れると』
最終編集時間が3日前の12:02。
例のケーキ屋は中央通りにあった。
ミクリカのテロが起きたのは正午だったとニュースで言っていたから、その時間にケーキ屋の通りにいたとすれば、大急ぎで仕事を終わらせて帰ろうとしていたところだろう。
だとすれば。
あの時、ミーファがタルトなんて駄々を捏ねなければ。
あの時、シュオニがケーキ屋の名前を調べなければ。
あの時、早く帰って来いと母さんがせっつかなければ。
あの時、ぼくがケーキなんていいから早く帰ってきてと言っていれば。
あの時、出張なんてなかったなら。
未来は変わっていたかもしれない。
いや、父さんが死ぬ未来になんて絶対ならなかったんだ。
その日たまたまその土地にいたと言うだけじゃないか。完全なとばっちりじゃないか。
父さんだけじゃない、あの街に住んでいた人みんながそうだ。
怨恨だかなんだか知らないけど、奪われていい命なんてない。
ただその日も今日を生きていただけじゃないか。
首謀者のおっさんは誰かに助けて貰えなかったからとかほざいていたけど、だからって壊したところで何も変わらないし、余計に苦しくなるだけだ。
なんなんだよ!愚かとか哀れとか言ってるクセに、一番そうなのはお前じゃないか!
気付けば、視界が歪んだガラスを通したみたいに揺れていた。
父さんを殺された悲しみと怒り。僕らの何でもない日常を壊された悲しみと怒り。
もう戻ってこない日々。奪われた誰かの命。巻き込まれた何処かの機械人形。
許せない。
なんでこうなった?カンテの技術は一流じゃなかったのか?
国は国内の指折りのハッカーを集めてるんじゃなかったのか?
信じられない。
公共の放送を頼ってもちゃんとした情報は得られなかった。
都合のいい解釈しか聞けなかった。
動画のテロ予告のその後なんて一欠片も聞いてない。
おじさん達が話してる動機の解明なんてどうだっていいんだよ。
みんなが知りたいのは身を守る術と家族が無事か、それだけなんだから。
訳がわからない。
それなら、ぼくが自分で調べたい。父さんやたくさんの命を奪ったギロクはどんな奴なのか、テロ予告のその後はどうなっていたのか。同じことは起こるのか、続くのか。
気になる。知りたい。
あぁ、でもぼくにツテはないし、何より母さんとミーファの側にいられなくなる。
そんなのは嫌だ。とてつもなく心配だ。どうすればいい?

「父さんが帰ってこないのなら、」
唐突に母さんが口を開いた。
「これまで通り、生活するしかない。」
力の込め方を忘れたような響きがした。
「泣き喚いたところでユーロウさんは帰って来ないのだから。」
一つ、深くため息を吐く母さん。
「シュオニ、夕ご飯の準備をお願いね。私は洗濯物見てくるから。ユーシン、ミーファ。この箱を父さんの机の横に置いてきて。」
「わかりました。」
「了解…」
悲しみすら糧にして前に進むしか、今は道がない。
立ち止まっても何も解決しないのだから。


ゲリラと結社の噂


翌日の午前中に父さんの会社の人が来て、遺品の箱に入っていたパソコンとメモリを回収していった。見覚えのある顔だったから誰だっけとシュオニに小声で聞くと、父さんと同じ部署の人で一緒に飲み歩きするくらいに仲の良かった人だと教えてくれた。
父さんにも友人がいた。仲間がいた。
それを思うと余計にこのテロの真実が知りたくなる。続いて欲しくないからこそ。
どうすればこの悪夢を終わらせられるのか、知りたかった。

午後、シュオニと買い出しに出かけた。
テロのせいで世間の機械人形に対するイメージが180度変わってしまったのだと刺さる視線で知った。道を歩いても、バスに乗っても、店に入ってもだ。そうだろう、この中にも家族や友人を機械人形のせいで亡くした人がいるかもしれないのだから。
買い出しの帰り、ぼくらの事を全く見ずにスタスタと歩いていく黒いフードを被った集団を見かけた。妙な人がいる程度にしか思っていなかったが、いきなりピタリと道の真ん中で止まり、「ファ…ゥトフェ…ズ完…了、セカ…ンドフェ…ズに移行す…る」と呟いたのが聞こえた。そして彼らがフードを外すと、淡い色の髪と赤く光る目があらわになった。
驚きのあまり立ち止まる通行人達。ぼくも金縛りのあったように足が動かない。
一体が近くにいた人を無造作に殴り飛ばすと、通行人達を縛っていた空気が弾け、一斉に蜘蛛の子を散らすように走り出した。
「機械人形だっ…!?」
動かないと。逃げないと。せっかく買い出しできたのに。
それなのに体が震えて足に力が入らない。ここで死にたくない…!
「ユーシンさん、こっちです!」
ぐいとシュオニに腕を引かれ、細い路地に飛び込む。
「早く、軍警に連絡をしてください。機械人形のボクだと怪しまれるので。」
「あ、あぁ…」
震える指で軍警の番号にかける。場所や状況を説明し、通話を切る。
「ここだと見つかりやすいので場所移動しましょ?」
シュオニと一緒に一つ上の階へ上がる。そして通りに面した通路から下を見ると、そこに赤く光る目の機械人形はいなかった。老若男女問わずさっきの機械人形達に襲われた人が倒れている。まだ軍警は来てない。
ひょっとして、今凄く悪い状況じゃないか?
シュオニが暴れたのを隠そうとしているように取られないだろうか。
もしそう思われたら一巻の終わりだ。
「シュオニ…今すぐここを離れよう。」
「軍警が到着していないなら、救護義務がありますよ?」
「多分、今のぼくらがやったら犯人扱いされる。」
「でも傷ついている人を放っておくのは原則に当てはまらないです。」
「そうは言っても…」
不意に遠くからサイレンが聞こえた。軍警の緊急車両の音だ。
「シュオニ、大丈夫。ほら軍警が来たから!プロに任せよう?」
しぶしぶだったが、シュオニに首を縦に振らせて連れて帰った。
どこかのニュースで流れるかと思ったが何もなかった。
事件すら起きなかったような扱いだった。
その夜、布団の中で決意した。ぼくは独力でテロの詳細を解明すると。
機械人形との友情を信じて死んだ父さんに賭けて。

電子世界が使えなくとも、電話は使える。それでぼくは、クラスメートや先生や親戚から情報を集める事にした。近所の人が口にする噂も集めた。時にはシュオニと少し足を伸ばして別の地区の噂や貼り紙、落書きの内容を集めた。
そしてわかったのは、2回目のテロは西の農村ケンズで壊滅したらしい、ということと、政府や軍警の動きの遅さに苛立っている人が多いということ。
合わせて考えれば、ケンズは軍警の到着が遅れたせいで壊滅したということになる。
ギロクについてはもっと簡単にわかった。
図書館に保存されている雑誌のバックナンバーを探してみると数年前に、
「若くして様々なプログラムを開発し、大学は飛び級し、驚きの論文を発表した。」
「政府のサイバー対策課に最年少で入ったエリート」
と電子機器関係の雑誌のコラムで紹介されていた。
一緒に載っていた顔写真は目を輝かせたふくっとした頰の青年だった。
犯行声明の動画からは想像できない程の別人ぶりだ。
これが恋人の死だけでああも変わるものなのか。
不思議だと思ったが調査はここで行き詰まった。
家計の問題だ。
国中が不安定な今、貯金を切り崩すだけでは生活費はどうにかなるにしても、ぼくとミーファの学費が払えなくなるらしい。
それは困る。勉強は面倒だけど学校には行きたい。
ぼくがバイトを始めればいいわけだけど、果たしてこの状況で雇ってくれるところがあるだろうか。
少し考えて、噂話の一つを思い出した。
「軍警とは別に機械人形と戦う組織があるんだってさ。よく知らないけど。」
「結社があるらしいわ。胡散臭くて怖いわねぇ。」
「入れれば衣食住の心配はしなくていいらしいぞ。給金だって出るって聞いた。」
「機械人形と戦うのに機械人形との共生を目指す結社とか何とか?」
「なんか立派なお題目を掲げた組織だってね。マル何とかって言う?でもきっとみんなの夢が集まったおとぎ話でしょうね。」
機械人形と戦う結社の噂だ。給金ありの衣食住付き。確かに妙だ。待遇が良すぎる。
聞いた噂をまとめたノートを開いて確認する。その中で一つだけ具体的な接触方法が書いてあった。
「早朝のナウム通りで猫の鳴き真似を3回すると案内人と会える。」
これでいいのか不安だが、一度やってみる価値はあるだろう。
その前に母さんと相談か。
聞いてみると最初は嫌な顔をしていたものの、色々説明していくうちに最後はやりたいなら自分の好きなようにしなさいと言ってもらえた。
「シュオニも連れて行けば?お給金二倍になるかもよ?」
「え?」
「危ないと思ったらシュオニに助けてもらいなよ。いい、シュオニ。これから家に戻るまではユーシンがあなたの主人。ちゃんと守ってね。」
「わかりました。ですが、家事はどうすればいいのでしょうか?」
「それなら大丈夫。そもそも私は主婦だし、シュオニが来る前は全部やってたんだから。人数も少ないし。」
「なるほど、わかりました。全力でユーシンさんを守ります。」
「頼んだよ。」


結社との接触


翌朝。ぼくとシュオニは少ない着替えと噂をまとめたノートを入れたカバンを下げてナウム通りにいた。
「にゃぁ〜にゃぁ〜みゅお〜ん……」
恥を忍んで渾身の猫の鳴き真似をしてみる。不意にある商店の扉が開いた。
中から目をしぱしぱさせながらおじさんが出てくる。
「もしかして、君は噂を聞いた志願者かい?そっちにいるのは機械人形かな?」
「はっ、はい、そうです!」
「ここだと声が響いちゃうね。中で話を聞くよ。」
懐っこいおじさんの笑顔に押されて店内へ入る。普段は喫茶店をしているようだ。
「こんな時間にわざわざありがとうね、君たち。」
どうぞ、と置かれたカップには紅茶が入っていた。
「そちらの機械人形さんは飲めるタイプかい?」
「いえ、シュオニは電気のみです。」
「そうかい。それならこのボードを使うといいよ、ハーフサイズだから足だけ載せていられる。」
そう言って充電ボードをシュオニの足元に置く。
「昼間でも普通に窓口があるんだがなぁ、誰が言ったか知らないけど早朝に猫の鳴き真似3回なんてね。困っちゃうよ。」
ははは、と眉を寄せて力無く笑うおじさん。
「それで?君は何で結社に入りたいのかな?」
「ぼくは、父さんの言っていた機械人形との友情の叶う世界を作りたいんです。」
「ほう?」
「機械人形に感情はないと言われています。でも、人の行動を見て日々学習しているなら、感情も習得していくはずなんです。」
「なるほどね。じゃぁ、そっちの君は?」
「ボクの主人は彼です。彼が行くというなら行きます。」
「OK。じゃぁ、藍色の髪の君の得意なことを、教えてくれないかい?」
「7桁までの暗算と噂話や落書きを集める事です。」
「噂や落書きで何かわかるのかな?」
「はい。犯行声明の動画で2回目のテロが言われていましたが、報道には載ってなかったんです。それで、持っているツテをフル活用してシュオニと噂話を集めたんです。」
ケンズの事、ギロクの事、そしてマルフィ結社の事。噂話も重なる部分があれば、真実も見えてくるということを話した。
「凄いね、君。君の推測は当たっているよ。我々が調べた範囲ではこうだったんだ。」
犯行声明の動画が投稿された後1時間の間に政府は次のテロの地を突き止めることができなかった。右往左往しているうちに西の農村、ケンズで機械人形の暴走が起こった。ミクリカと同じくなんの前触れもなかったと言う。ただ、いきなり家庭にいた機械人形達が周囲の人間を虐殺し始めたのだそうだ。この時、軍警の本隊はミクリカに駐屯しており、駆けつけられたのはラシアスとランツに駐屯していた小隊のみ。それでも到着に1時間以上かかり、ついた頃には大量の遺体とほんの少しの重傷者と破壊された機械人形しかいなかったのだそうだ。
「凄い……」
小さな声でシュオニが呟いた。
「これで君たちの有用さが証明された。合格だ。君たち、名前と年齢を教えてくれるかな?」
「ユーシン・リン、15歳です。」
「シュオニです。稼働してからは3年です。」
名前と年齢を手帳に書き写すおじさん。
「マルフィ結社はユーシン・リンとシュオニを快く迎える!」

ーーようこそ、マルフィ結社へーー

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