薄明のカンテ - 涼風とオリキャラの距離感
涼風、頭を抱えてゴロゴロする。
唐突に現れたアンが上から覗き込む。
「涼風、何やってんだ……?」
「だめだ……やりたいネタは沢山あるのに書ききれん……」
「あ、そ……」
放置して背を向けるアン。
「やめてスルーしないで何か聞いてよお願いだから」
アンの足にすがりつく涼風。
迷惑そうな表情のアンに振りほどかれる。
「ベタベタまとわりつくとか気色悪ぃ」
「そんなぁ〜」
そんな2人を見て、影からひょっこり出てくるムーン。
「あ、ムーン!ねぇ話聞いてよぉ〜!」
「ムーン、こいつなんざ相手にすんな。」
「え、ちょ、アン!酷い!まだ何も言ってないじゃん!!」
アンの言葉に従うムーン、どこかへ消える。
「ああああああ」
「そういうこった。愚痴は創作仲間にでも吐けよ。」
「言える事と言えない事があるでしょ!」
「はぁ?自分のオリキャラなら愚痴っても構わないってんのか?」
「そういう訳じゃないんだけどさ……?」
ため息をつくアン。またもやアンの足にすがりつく涼風。
「愚痴聞きならロナに頼めばいいんじゃねぇの?よりによって何であーしに絡むんだよ…」
アンの舌打ちが部屋に響く。
不意に部屋のドアが軽やかに開く。
「やぁ、お困りの人がいると聞きましてねぇ……ふぅん、面白い展開だねぇ」
へにゃと笑う優男、ユウヤミ。その後ろにはヨダカとさっき出て行ったムーン。
「私への依頼は何かな?」
「あぁ、涼風がしつこく絡んできてな。離せっつってんのにミリも動かねぇ」
「ははぁ、それは大変だねぇ。それならくっつけたまま歩くのはどうかい?」
「「「はぁ?」」」
アン、涼風、ヨダカが合唱する。
「んなもん、重くて持ち上がるかよ!」
「何を言いだすかと思えば……主人(マキール)、実現不可な事をしゃあしゃあと言わないで下さい。拾い食いしたものに寄生虫でもいたんですか?」
2人に責められ肩をすくめてみせるユウヤミ。
「何、ほんの冗談にここまで反応してくれるなんて光栄だねぇ」
「やっぱり……」
口を尖らせた涼風が何か言おうとした時、乱暴にドアが開いた。
「こんなとこで何やってるんだい、探偵屋?……無気力とトビウオも」
ユリィが入り口で腕組みをする。
「涼風がアンから離れなくて困ってるらしいんです。どうにかできませんか?うちの主人(マキール)は役に立ちそうにないので。」
「ヨダカぁ〜いつにも増して辛辣だねぇ」
困り顔のユウヤミに誰も目を向けない。
「簡単じゃないのかい?離れたくない原因を潰せばいんだろう?」
「原因はわかってんだよ、それが嫌だからこうなってんだ。」
吐き捨てるように言うアン。
「アンじゃないとダメなのかい、創作屋。」
「アンじゃないとって訳でもないけど……何かアンがいい。」
はぁぁああああ、と盛大なため息をつくアン。
「嫌だっつってんだろ!折角聞いてくれたんだ、ユリィでも構わねぇだろ!?」
「やーだーー!アンの困る顔が可愛いーんだもーーん!!」
「は?」と表情の固まるアン。爆笑寸前の面々。
アンに涼風が吹き飛ばされた瞬間、堪えきれずにユウヤミが噴き出した。
「趣味悪りぃな!!生蕎麦でも食ってろ!!!」
アンの隠れた右目が野生の獣のようにギラつく。
「蕎麦は……アレルギーだし、愛しのオリキャラの頼みといえど無理……」
「真面目か!」
ユリィの入れたツッコミの衝撃でムーンの髪が揺れる。
眉間に指を当て、呆れた表情のヨダカに笑いの止まらないユウヤミが叩かれた。