薄明のカンテ - 多分それは修学旅行の夜。/涼風慈雨


 パラグラフ14と呼ばれる何処だかわからない部屋。
 そこに集められた涼風宅のキャラクター達。

チチトーーク・おんなのこ編

ヘラ「と言うわけで『チチトーーク!』始めるよ」
ガート「せやで。今回は『マルフィ結社にいる涼風宅の女子』ってくくりで集まってもろたんやって」
ヘレナ「ヘラさん、ガートちゃん、何の話ですの?」
アペルピシア(以下・エル)「これはバストの話ね。乳ってもろに言ってるじゃない」
ガート「流石エル先生やね、大正解の花丸ぴっぴ!」
ヒルデガルト(以下・ヒルダ)「親父の話かと思ったぜ……」
 安心したのか顰めていた眉をヒルデガルトが開く。
サリアヌ(以下・サリ)「まぁまぁそうなのですのね……ところで、進行役が其方の御二人なのは何か意味があるのでして?」
 ヘラとガートの前で優雅に微笑むサリアヌ。
ガート「えぇと……これや。『ゴメンネ😅機械人形なので関わりないと思っちゃっタ😆』……やかましいわ!設定やゆーてもうちだって気にしとんねん!!後なんやねん!このオヂサン構文は!!」
 取り出したメモを床に叩きつけるガート。
ヘラ「ガート、落ち着きな?あたしら機械人形は主人の許可さえ有ればパーツ交換可能なんだからねぇ」
 ヘラに取り押さえられたガートはむくれながらも大人しくなる。でもその目線はテナ山のようなヘラの胸をがっっっっっつり見ていた。
ヘラ「じゃぁ仕切り直そうかねぇ、題して『バスト問題ぶっちゃけ相談室』!!」
 ヘラの隣りでクラクションを鳴らして盛り上げるガート。微妙な空気が漂う人間の女性陣。逃げ出そうとしたミサキは光の速さでアンに捕まえられていた。
フィオナ(以下・フィー)「はいぃぃぃ!!!!」
 勢いよく手をあげて立ち上がるフィオナ。
フィー「この!椅子の並びに!悪意を感じるのですが!!」
 軽くターンしながら全員を見回すフィオナ。半円状に並んだ椅子だが、右端にヘレナが座っており、司会者席を挟んだ反対側の左端にはミサキが座っている。フィオナの席は左寄りである。
ヘレナ「何かおかしいですの……?」
 首を傾げるヘレナに左端側に座るヒルダから呆れた視線が飛ぶ。
マルガレーテ(以下・キッカ)「まさか……バストの重量順で並んでいるのでしょうか……?」
 真ん中よりやや左側に席のあるマルガレーテが呟くように言うとフィオナが首が取れそうな勢いで激しく頷く。
フィー「涼風の悪趣味ーー!!何処の女侍らす富豪だーーー!!!」
ガート「なんやまたメモ出てきた。『わかりやすさを狙っただけで悪意はナイヨ💦悪趣味な富豪💰は涼風じゃなくてウェンちゃ達の元主人😘』知るかボケェ。キショっっっ!!」
 今度はメモをビリビリに破いて撒き散らすガート。
キッカ「バストサイズに何か意味がありますか?私は平均以下ですが、息子の授乳に何も問題はありませんでしたよ?」
ヒルダ「そりゃぁ既に子供までいるキッカさんなら問題はねぇだろ?アタシなんか見た通り胸板なせいで高校卒業して就職してっからも男扱いだぞ?だから問題なんだ」
キッカ「それは大変でしたね」
ヒルダ「愛の日なんてさ、男から何か貰えた試しがねぇ。冗談半分で女子から貰うばっかりだ」
ロザリー(以下・ロザ)「あら?今年は誰かに貰ったんじゃなかったかしら?」
ヒルダ「あーっと、汚染駆除班のテオって奴?確かに女子カウントされて驚いたな……あぁそっかこれで男から貰えない歴に歯止めかかったんかー……」
 腕組みをしてヒルデガルトが天井を仰ぐ。ただ天井には会議室によくある大理石風の模様が書かれているだけである。
ヘラ「それでフィオナさんは?自身のバストについて相談したい事はないのかい?」
フィー「悪趣味だって言っちゃった後でアレなんですけど、実は全く困ってないんですよね。小ぶりなのって機動性高いし邪魔にならないしどんなコーデでも悪目立ちしないし良い事づくめで。それに私、その辺の普通の男にも興味ないんで胸に吸い寄せられるような男は最初からお断りです。故に今のサイズに満足してます」
ザラ「うん?フラナガンさん、たまに人事部のマーシュさんと仲良さげじゃないかい?あの人巨乳の方が好きだと思ったけど」
 真ん中よりやや右側に座るザラがフィオナに声をかける。ちなみにザラは胴回りが大きいのでバストも大きく見えがちだが、実際のサイズは平均とさして変わらない。
フィー「アレはヲタ活仲間です!天変地異でソナルトが沈没しようがカヌル火山が噴火して火山灰に埋もれようが関係性は変わりません。マ……ーシュさんは意外と一途なんですよ。毎日フラれても楽しそうなんで傍観してて面白いです。むしろお決まり漫才の一種かと思う次第ですね!」
 爽やかな笑顔で言い切るフィオナ。ここまで清々しいと幾ら百戦錬磨のザラおばさんもこれ以上聞けない。
ヘラ「アンはどうだい?バストサイズがもう少し大きかったら〜とか考えた事ないのかいね?」
 ヘラに話を振られたアンは真ん中より左側に座っており、決して良いとは言えない顔色で溜息をついた。
アン「ンで皆んなしてデカイ胸に憧れンだ?デカ乳は無駄に狙われやすくねェか?」
ヒルダ「狙わ……?」
アン「変質者に絡まれやすくなッから育たねェ事願ってた。元々食える物も少なかったがな」
 アンの無感情な遠い目には何が映っているのか、纏う空気は一段と暗いものだった。
アン「水商売で生計立てる人なら需要があンだろうけどな。あーしは客商売向いてねェし、手に職がある方が危険な橋を渡る回数減らせンだろ」
ミサキ「同じく。男に消費される人生なら無意味だ」
 吐き捨てるように言うミサキ。マルガレーテやフィオナの表情が曇る。10代前半、しかもこの棒切れのように細っこい子から言われるにしては重い言葉に、岸壁街の壮絶さを垣間見る。
アン「けどな、食べられる時に食べとけな、ミサキ。成長を拒否したッて育つモンは育つ。その年齢でその年を過ごせるのは一回きりなンだからよ」
 アンに言われて不機嫌な顔になるミサキ。
エル「ミサキちゃん」
 右側の席に座っているアペルピシアが静かな笑みを浮かべてミサキと視線を合わせる。
エル「貴女の感じているそのアイデンティティの揺れは、背景がどうであれ貴女くらいの年頃なら考える事があるものよ。多数派ではないかもしれないけれど、自分と向き合って考えられるのは素晴らしい事。ただし、体調を崩さないようにね」
ミサキ「エル先生……」
エル「社会が求める所謂“女らしさ”が自分の在りたい姿と違うかもしれないわね。貴女が齟齬に悩むなら、流されるより考え続けて自分なりの落とし所を見つけた方がいいわ」
 アペルピシアに言われたミサキは硬く握っていた拳をゆっくり広げた。
ヒルダ「そう言えばマシマさん」
ヘレナ「なんですの?」
ヒルダ「いつも見てるより何割か大きく見えんだけど」
ヘレナ「当然ですの。仕事中はスポブラでしっかり潰してるですの」
ヒルダ「スポブラ……?」
ガート「潰す……?」
 宇宙の真理でも理解してしまったかのような猫の顔になるヒルデガルトとガート。
ヘラ「ここで全員に訊くけど、普段からスポブラ使用してる人は挙手お願いできるかい?」
 ヘレナ、ロザリー、アペルピシア、ユリィ、マルガレーテが手を挙げる。
ヘラ「じゃぁ、ヘレナさんから話して貰おうかねぇ」
ヘレナ「大きな胸は羨望の眼差しも受けるけど、人生において邪魔で邪魔で仕方ないですのっっ!!」
 よく通る大きな声で力説するヘレナ。
ヘレナ「爺ちゃんが言ってたですの『生き残る為にデカイ乳は無用の長物だ』って。その爺ちゃんの奥さんもやっぱりバストサイズは小さかったですの」
ガート「そんなら、ヘレナのバストは天然なんか?」
 恨めしそうな視線でヘレナのカヌル山級のバストを見つめるガート。
ヘレナ「勝手に育ったですの。中学高校の時なんて走って揺れると乳腺千切れると思うくらい痛かったですの。重くて肩だって凝るですの。なのに男子の目線がエロいですの!あたしがどれだけ苦労してるか!知らずに!!男子共全員巨乳になってみればいいですの!!!」
エル「わかるわ、マシマさん」
 神妙な面持ちで語り始めたのはアペルピシアだった。
エル「医療班の特性上、動けないと仕事にならないのよ。うっかりスポブラつけ忘れると胸が揺れて乳腺も血管も細胞も全部壊死するんじゃないかって勢いで痛いし、実際炎症起こるわけだけれど。しかも正面から話してると殆どの男性の目線が合わないのよ。胸と会話してるんですか貴方?って事あるわよね」
ヘレナ「わかってくれるですの?流石エル先生ですの!」
ロザ「そうよねぇ、私のいた大学も似たようなものだったわ。レポートの提出に来る男子生徒のほとんどの視線がバストに向くんだもの、『あらベルナールに言いつけちゃいましょうか』って毎度の如く言ったものよ」
ヘレナ「その男子ひどいですの!」
ロザ「講義だって聞いてたのか怪しい生徒もいたわよー?真剣に話してる内容そっちのけにされたら私だってイラッと来たし、採点辛めにしておいたわ」
ヘレナ「ふぇ?」
エル「本当、彼氏でもないのに性的な目で見てくる男性全員巨乳になれば良いのに」
 真顔で酷く冷たい声音で言い放つアペルピシア。いきなり巨乳になった男性の群れをうっかり想像した数人が顔を真っ青にする。
エル「それから。マシマさん、胸が何もしなくてもその位置にいてくれるのは20代のうちだけよ」
ヘレナ「へ?」
エル「30代になると重力に負けるの。クーパー靭帯をトレーニングして重力に勝つつもりでいないとあっという間にハリがなくなって垂れるわよ。失ったら戻らないんだから」
ロザ「それは本当よね。結婚後から育乳して、授乳期も経て今のバストサイズになったけど、ふと鏡見た瞬間恐怖よ」
エル「エルナーさんも矢張り悩まれるのかしら?」
ロザ「そうよ?授乳期はまだ良かったけれど、離乳食になって使わなくなったらあっという間に垂れ始めて。お婆さんみたいになりそうだったから慌てて筋トレ始めたわ。今更大胸筋鍛えるなんて思わなかったわよ」
 頬杖をついて溜息をつくロザリー。
ロザ「これなら育乳する事なかったかもしれないわ……今は扱いに困ってるし」
キッカ「足し算は簡単ですが引き算は難しい、それがバストの扱いですよね。セリカさんもあのサイズに苦労しているようですし。小さければ盛るも潰すも自在ですけどね」
 1人頷くマルガレーテ。
キッカ「あぁでも、バル小隊長は30代であの通り筋肉質なお陰でハリのあるバストを維持していますね。一つの理想です」
ザラ「まだそんな事言ってられるうちが花だよ。この老ぼれの歳なると、筋トレすらしんどくて重力に抵抗なんて無駄なことしなくなるからね。何をするにも掛け声がないと動けないし」
 はいよっこいしょ、と言いながら座り直すザラ。
ヘレナ「ユリィ、この方々なんか怖いですの〜!」
ユリィ「普通の話だよ?筋トレしてないと美乳にならないなんて当たり前田のクラッカー」
 唖然とするヘレナにユリィが不思議そうに答える。
ユリィ「うち、元々役者だよ?体作りした上でしっかりおっぱいを抑えておかないと、良い戦闘シーンが撮れないでしょ」
ヒルダ「そうなんだー……何もしてなくても綺麗なもんだと思ってた」
ユリィ「弛まぬ努力が役者を続ける秘訣。揺れて痛いってのもあるけど、実際おっぱいが揺れる戦闘シーンなんてアニメかゲームの話だよ。映画やドラマじゃぁCGじゃないと再現できない」
フィー「宣伝とかでたゆんたゆんに揺れてるの見るたびに痛そうだなーって思ってたんですが、やっぱりアレ痛いんですね。一つ謎が解けました」
ヘレナ「大き過ぎるバストは邪魔ですの……」
ザラ「まぁまぁ、マシマさんよ。その大きな胸も捨てた物じゃないかもしれないよねぇ……リーシェルさんとか」
 ザラに言われてハッとするヘレナ。ただし、以前のように茹で蛸の如く赤くなることはなく、ほんのり頬を染めるだけで少し悲しそうにも見える表情になった。
ザラ「あれま、地雷だったかい。ごめんねぇ」
ヘラ「キッカさんもスポブラしているのはヘレナさん達と同じ理由かい?」
キッカ「元からある方ではありませんが、無ければ空気抵抗が減って動きやすくなると思いまして。女子アスリートと同じ理論です」
 糸目をさらに細くして答えたマルガレーテは女子マラソン選手の写真を見せる。
キッカ「ところでナシェリさん如何です?矢張り人事部だとスポブラが必要な仕事は無いのでしょうか?」
 マルガレーテに話を振られたサリアヌは1人で優雅にティータイムを楽しんでいた。音もさせずにティーカップをソーサーに戻すと上品にふわりと笑みを浮かべる。
サリ「荒事は人事部の仕事ではありませんもの。元気が良いのは新規勧誘課の彼だけで十分ですわ」
 そう言われてアペルピシアは少年同士で業務に差し障るほど喧嘩したり、医療班の部屋で問題を起こしたりボウガンの矢が刺さったり、療養中もアキヒロに叱られたりした黒スーツの彼を思い出して納得した。人事部は荒事(を起こす)担当ではないはずだ。約1名を除いて。
サリ「日々を丁寧に過ごせばバストに掛かる負担も減らせましょう」
 サリアヌが軽くフッと笑っただけで先程までのカオスな空気感が凪いでいく。
サリ「『美人は3日で慣れる』と言いますわ。バストが大きいのは初対面のインパクトにしか効果的ではありませんもの。本当に人を惹きつける美しさは日々の所作や会話の内容でしてよ?」
 キラキラした視線でサリアヌをうっとり見るヘレナ。ガートは真面目な話がつまらなくなってきたのか司会役なのに上の空で空中を眺めている。
ヒルダ「日々の所作かぁ……」
サリ「えぇ。もしバストについてのみ言うのであれば、まずはご自身に合ったブラジャーを選ぶ事、就寝時はバストが休まるナイトブラをお使いになられると良いかと思いますわ」
ヘレナ「このサイズだと可愛い好みのブラを見つけるだけで一苦労ですの……その上にナイトブラですの……?」
 がっくりとするヘレナの胸をじっと見たアペルピシアがふと何かを思い出した。
エル「そのカヌル山のようなサイズ……そう言えばヴォイドのブラは可愛いわね……」
ヘレナ「!!」
エル「ほら、更衣室使うこともあるから。それと私服が薄着だから見えるでしょう?」
ヘレナ「確かにホロウさんは何故か可愛いブラだったですの……一体どこで購入しているですの?これは聞き出さない手は無いですの……!!」
 持ち物の中を探ってカラスジャーキーの残数を確認するヘレナ。どうやらカラスジャーキーで買収して聞き出すつもりらしい。
ガート「せや、ヴォイドちゃんって聞いて思い出したわ」
 ぽんっと手を叩いたガートがヘレナに向き直る。
ガート「ヘレナちゃん、ふにふにふにふにしたらもにもにもにもにの、たぷたぷするとふんよふんよするのやらせてやぁ!」
ヘレナ「ふぁ!?」
 ヘレナのバストを狙ってガートは手を構えて指を蠢かす。危機を感じたヘレナは身を逸らして縮こまった。
ヘレナ「なっ、何の話ですの!?」
ガート「この間ウルちゃんが乳ソムリエしたってゆーてたん!うちもやりたいー!」
ヘレナ「嫌ですの!ぜっっっっったい嫌ですの!!」
ガート「そこをなんとか!!」
ヘレナ「嫌ったら嫌!ダメったらダメですの!!指一本触れさせないですの!!!」
ガート「こうなったらうちも意地や!実力行使すんねん!」
ヘレナ「いやああああああああ!!!」
 司会者席から飛び出して猫のようにヘレナに飛びかかるガート。
ヘラ「あーあー、ガートそこまでにしてくれないかねぇ」
 その後ろを追いかけて司会者席から飛び出したヘラがガートを押さえ込もうと中に飛び込んでいく。続いてユリィとキッカが乱闘に飛び込み、ガートをヘレナから引き剥がす。
ガート「ウルちゃんがやったならうちもやりたいー!!」
アン「データごと総取っ替えすッか?Guide022」
ガート「ひいいいっっっ!?!?」
ヒルダ「ご相伴に預かれるならアタシもやる!」
ヘレナ「リヒテンさんの裏切り者ーー!!」
フィー「うらやまけしからんので早よ続きお願いします」
ザラ「うらや……?おばちゃんには難しい言葉わからんねぇ」
ロザ「若い子は元気ねー」

 やいのやいの言っている側でティータイムを続けるサリアヌがボソッと一言。
サリ「まぁまぁ、元気のお宜しい事で……ところで皆様彼方に良い時計がありますわねぇ……」
 更にその声を聞いて時計を見たミサキは馬鹿にした目で乱闘騒ぎを見る。
ミサキ「帰りたい」

 結局治らない乱闘騒ぎに痺れを切らしたアペルピシアが大声を叩きつけた。
エル「 解 散 ! 」


結論:みんなコンプレックス。

チチトーーク!・おとこのこ編

公式CP編

 チチトーーク!・おんなのこ編が収録されていた時、別のスタジオにて。涼風宅の男子キャラが勢揃いしていた。
ジークフリート(以下・ジーク)「はい始まりました、『チチトーーク!』。今回の司会は医療班所属の機械人形ジークフリートと」
ヨダカ「前線駆除班第6小隊所属の機械人形ヨダカでお送りいたします」
 司会者席に立つジークフリートとその隣りに台本を持ったヨダカがいる。
スレイマン(以下・スレ)「ついにこっちまで回ってくるとはなぁ……」
アキヒロ(以下・アキ)「涼風さんのイメージ的にやらないと思っていたんですけどねぇ」
ユウヤミ(以下・ヤミ)「波に乗りたいだけではないかい?それにしても涼風らしからぬ巫山戯た遊戯だねぇ」
ヨダカ「涼風からのメモによると『フランソワは意味がわからないと思うので召喚していませんが、ノーマン(10)とユーシン(16)は同席します。大人の皆さんは節度を持ってチチトーーク!の収録を楽しんでください』……最年少10歳のカナリスさん!?」
ノーマン(以下・ノー)「あい!」
 手を挙げて自己主張するノーマン。
ユーシン(以下・ユー)「呼ばれたって事は一応僕らもいて良いんですかね……?」
ノー『涼風が呼んだんだからいいと思う』
 手持ちの電子端末に文字を打ち込み、合成音声で会話に入るノーマン。
ユー「そっか、そうだよね!」
 無理やり納得するユーシンとノーマンを見たロナとアキヒロとヨダカが「もし未成年に聞かせられない内容が出てきたら速攻2人を退避させよう」と目だけで確かめて頷き合った。
ジーク「前振りはいいとして、女性のバストサイズの好みを暴露してくれや」
ヨダカ「流石にそれは投げやり過ぎませんか」
 とは言え涼風宅の奥ゆかしい男子共に率先して口を開く奴はおらず。牽制し合う男性陣を見回したジークフリートが焦ったいと口を開く。
ジーク「誰も話さんみたいだから前主人のピョートルの話するぞ」
スレ「ピョートルにも好みの胸があったのか……!?」
ジーク「あったんだなこれが」
 驚くスレイマンを1カメで抜くムーン。
ヨダカ「ジーク、ピョートル・コロトコフが誰だか知っている人の方が少ないと思いますが」
ジーク「ん?あぁそうだな。私の前の主人で外科医でね、医療系NPOで国外の紛争地や貧困地域で医療活動していたぞ。適当なのに頑固なところがあったから、そうだな……ネビロスとヴォイドの悪いところを混ぜたような感じだな」
スレ「はは……ジークの言う通り。責任感は強いのに自分の事にはかなり無頓着で、治療の腕は良いのに荒っぽく、一度決めたら梃子でも動かない、そんな人だったよな」
アキ「なんだか想像できますねぇ」
ジーク「んで、その前主人が言うには『胸はカヌル山の如く大きい方が断然いい!できれば大胸筋と小胸筋で盛ったのよりきちんと皮下脂肪でふにふにしてクーパー靭帯で支えていると尚のことバッチグー!』って同僚に話してたな」
スレ「あはは、時代遅れな単語を使うの、ピョートルらしいな」
 全く無感情でピョートルのセリフを言うジークに苦笑いするスレイマン。
エリック(以下・エリ)「や、やたらと……細かい指定ありません……?」
アキ「それは彼が外科医だからだと思いますよぉ。ジークさん、本当はもっと細かい話なんじゃないですかぁ?」
ジーク「流石アキ先生、鋭い!でもここで言ったそのままを伝えてもスレイマン先生とアキ先生しかわかる人いないだろ?」
ビクター(以下・ビク)「大胸筋くらいならわかるぞー?」
ロナ「ビクター、大胸筋よりもっと細かい筋繊維の話らしいぞ」
ビク「もっと細かい……?へーよくわからんが凄ぇなー!」
ジーク「つーわけでだ。こんな感じでざっくばらんに語って貰えれば良いぞ。はい、スレイマン先生どうぞ」
スレ「いきなりオレ!?」
ヨダカ「そうですね。『公式にCPが成立してる人優先で』とカンペが出てます」
スレ「マジか……」
 AD役のサンが大きいスケッチブックを振っているのが見えて頷くスレイマン。
スレ「オレとしては理想はマシュマロだ。以上!」
アキ「マシュマロ……マシュマロですか」
スレ「ピョートルの言いたいことはわかるけど、全部同意はしないなー……」
ジーク「ここで関係者によるタレコミなんだが……『スレイマンは大きさより弾力がある方が好きみたい』と。匿名Lさんからだな」
スレ「!!」
ジーク「『付け加えればケモミミが好き。その時に聞いた感想では可愛いの相乗効果でむしろ可愛いの暴力、と少々難解な事を言っていました。ケモミミや獣人を愛する癖のある人についての研究では現実に満足できておらず常に刺激を求めている割合が高いと報告されています。普段の言動と比較して矛盾はないのでそういう事でしょう。この話をさせられたのでとりあえず後でラズベリーケーキ、ホールで買ってね』だそうで」
スレ「ラ、ラズベリーケーキくらい幾らでも買ってくるけどさ……分析まで暴露する事ないだろ……」
 撃沈して動けなくなっているスレイマン。早くも真っ白な灰になっている。
ヨダカ「本人があえて言わなかった場合、涼風情報やタレコミ情報で確実に仕留められるそうです。私は機械人形で良かったです」
ノー『その涼風情報ってどこから来るんですかー?』
ヨダカ「こちらの台本、実は超薄型有機ELパネルなんです。必要な情報は映像も文章も全てこちらに表示されます」
 おぉ〜と納得するノーマンとユーシン。
スレ「だってケモミミ可愛いじゃないか……」
 真っ白な灰になりながらもぶつぶつ言い始めるスレイマン。その言葉に小さく頷いているオルヴォとエドゥアルト。
スレ「ケモミミ付けてる子って妙に可愛いけどそれが可愛い彼女だったら可愛すぎておかしくもなるだろ……」
アキ「気持ちはわかりますけど、強メンタル設定が消えましたねぇ、今」
 茫然自失で宙を見つめているスレイマン。ぶつぶつ何か言っている。
ジーク「スレイマン先生がうわ言を言い始めたので次の方どうぞー」
ヨダカ「ベルナール・エルナーさん暴露お願いします」
 ADサンのカンペをチラリと見やりながらベルナールを名指しするヨダカ。
ベルナール(以下・ベル)「そう言われましても……語る事なんてそんなにありませんよ」
スレ「そんな事ないですよね……?エルナーさん……?」
 早くも復活したスレイマンがベルナールも引き摺り込もうと目を光らせる。
ベル「学生とか教授同士の飲み会でも聞かれるネタなんですよね。此処はパラグラフ14なので全員記憶を消される前提でぶっちゃけ話をしましょうか」
 前屈みに指を組んで話し始めるベルナールをシュオニが2カメで抜く。
ベル「前職大学教授なんて言いますと品行方正に生きてきたように思われるかもしれませんが、実を言うと学生時代相当なワルでしてね。グレーな事は一通りやってきたつもりです」
 今のベルナールしか知らない面々は不思議そうに次の言葉を待つ。
ベル「その頃の経験も踏まえて言えば、どのサイズにも良さが有りますね」
 真面目な顔よりむしろはっちゃけて言った方が良いのではーーそんなツッコミをできる勇者はいない。
ベル「何がどれくらいと言う話は未成年者に配慮して語りませんが……因みにロザリーは大学で初めて会った時はまだ今のようなサイズでは無かったんです。平均より下だったんじゃないかな」
 訥々と語るベルナールの空気に飲まれて誰も一言も発しない。それほど語り口調には圧があった。
ベル「お付き合いを始めてからですね……何を考えたのか未だにわからないんですど、育乳を始めたそうで。結婚した時には平均を超えていたのは確かです。それから暫くして息子のフランソワが生まれて。授乳期間が終わった頃には前より大きくなっていました。30代にして筋肉量の低下を心配したみたいで筋トレを始めて……今に至りますね。麻が成長する時のようでした」
 以上です、と言い切ってパン!と手を打ち合わせる。
エドゥアルト(以下・エドゥ)「勝手に奥さんの育成計画暴露してこの穏やかな表情とかどんな神経?」
ユー「なんか……聞いちゃった事に罪悪感がある……」
ロナ「エルナーさん、良いんですか?本人の許諾なくそこまで話してしまって」
ベル「勿論本編では言いませんよ?此処がパラグラフ14で全員の記憶が消される故、話しました。もし残るのでしたら此処にいる全員カタギといえど記憶が飛ぶまでヤキ入れないといけないですからね」
 一瞬ベルナールの昔の顔が見えたエリックの喉がひっ!!と音を立て、イオの顔が青ざめる。意味が理解できていない未成年組とヤクザ言葉の知識がない人達はキョトンとしているが、一刻も早く聞いた話を記憶から削除しなければならない事は理解した。
ベル「次は誰にします?公式CPってまだ居ましたっけ?」
ジーク「次はアキ先生で、ってカンペが出てんだが……大丈夫か?アキ先生?語れるか?」
アキ「意外と早く来ちゃいましたねぇ……涼風宅の公式CPカウントにまだ入れて貰える事が嬉しいですよぉ」
 にこ、っと微笑むアキヒロだが事情を知っている面々は少し心配そうな視線を向ける。
アキ「ふふ、心配ありがとうございます。こうなるのは覚悟していましたから大丈夫ですよぉ」
 何処から話そうかなぁと天井を見上げながら、髪の簪をそっと摩る。
アキ「うーん、そうですねぇ……僕としては大きいより小ぶりな方が好ましいです。皮下脂肪多めより筋肉量が多くて張りがあって皮膚が強そうだと働いている元気な人って思えて良いです」
エドゥ「やたら具体的……」
アキ「出来ればオレンジ色のセンター分けの髪で常に前向きな性格だと尚良いですねぱっちりな吊り目だともっと嬉しいです」
ヨダカ「ここで涼風情報ですね。『アキの好みは現在全てカレン基準に設定されています。以前は他の好みがあったようですが、もう忘れてます。今更思い出す事はないでしょう』とのことです」
ジーク「本当かいそれ」
 のほーんと悩んだアキヒロはぽんっと手を叩いた。
アキ「あれ、本当ですねぇ。学生の頃と変わっていました」
エドゥ「そんなに変わるものなんですね」
アキ「はい。当時はカレンの良さがわかるほど大人じゃなかったんですよ。もっと早く気が付いていれば……なんて栓なきことですね。そう考えると学生時代の感覚から随分離れたところに来てしまいましたねぇ」
エリ「そ、それ程の……み、魅力……があったんですね……」
アキ「えぇ。カレンの魅力は色々ありますが……僕としての一押しはコレ・・ですねぇ」
 手元の端末からアキヒロが出したのはレントゲン写真の映像。その場に居る者達は雲行きの怪しさに緊張する。
アキ「この脛骨と腓骨の太さのバランスさることながらこの曲線が良いんですよぉ特にカレンの膝は大腿骨と脛骨の長軸のなす角を大腿脛骨角って言うんですけど175 度で軽度のX脚つまり内股で股関節と足関節の中心を結ぶ機能軸が膝関節の中央を通る医学的にも理想の健脚でして」
 カレンの下肢レントゲン写真をモニターに表示させるフユ。続いて爪先のレントゲン写真をモニターに表示させる。
アキ「それから足の小指には3本骨があって第5基節骨と中節骨と末節骨で構成されるのが教科書通りですがカレンの場合は第5末節骨が最初から無いので2本しか骨が無いんですそこが凄く可愛くて」
 テンション高く語るアキヒロだがこの感性に賛同できる人は誰もいない。
アキ「大腿骨も良いですが脊椎の方が良いですね特に胸椎のT3〜T7あたりの曲線美は至高ですやっぱり棘突起の美しいカーブの連なりが成すところですねぇ」
 この場所で骨を名称で呼ばれて理解できるのは医療関係者スレイマンとジークフリートと警察コンサルタントで荒事に関わっていたユウヤミとヨダカくらいである。それ以外のメンバーはアンポンタン・ポカンな顔をしている。
スレ「なんだか、カレンさんの骨を標本化して保存しそうな勢いだよな」
アキ「本当はやりたかったんですけどねぇ……あの通りの混乱ぶりだったので、遺髪だけ残して他の方々と同じく火葬しました」
 本当に残念です、と付け加えるアキ。もしかして触れてはいけない話だったのではないかと戸惑う数人だが時既に遅し。
アキ「出来る事なら全身骨格標本にしてずっと一緒にいたかったんですけどねぇ」
 どん引いている面々など眼中にないアキヒロは爛々と光る目で虚空を見つめる。口元が結構な勢いで緩んでいるがさっきまでしていたのは骨の話である。
スレ「もしかしてアキ先生、綺麗な骨格ってだけで恋愛的に好きになれるのか……?」
アキ「ふふ、いえいえ。骨は昔から大好きですけど、これはカレンの骨だから特別なんです」
ジーク「前に『ヴォイドの骨が綺麗だからXP撮らせてくれ』って食券を報酬に頭を下げた事があったからまさかと思ったが。それならまぁ良かった」
ヨダカ「ここで涼風情報です。『アキはカレンの骨を治療した事は一回もありません。このレントゲン写真も本人に頼み込んで撮らせて貰ったものです。ちなみに素の骨が綺麗であれば、骨格の歪みを治すくらいやる筈です。ただし若干人体実験気味ですが』」
アキ「人体実験だなんて言い回しは誤解を招きますよぉ?最新の治療法を取り入れてみたい向学心だけですからぁ」
 いつも通りの春の陽光のような笑みに少し熱を込めて答えるアキヒロ。
エリ「えっと……チチトーーク!ってこういうものでしたっけ……?」
ビク「よくわからんが人骨の何がいいのかよくわからん」
ロナ「エリック、ビクター、人の趣味趣向はその人のものだ。そっとしておいてやれ」
 ADサンがスケッチブックに「一旦休憩」と書いて振っている。
ジーク「と言うわけでアキ先生の冷却も兼ねて一旦休憩にしようや」

一般人と未成年編

ヨダカ「と言うわけで次はサオトメさんの好みを聞きたいと思います」
ロナ「……言われてもイメージが湧かないんだがな。公式CP順というなら次はユウヤミじゃないのか?」
ヤミ「私、まだ誰とも何ともなってないのだけれどね?風評被害は辞めてくれ給え」
 ADサンのカンペには「フラグと番組進行の問題」「さっさと話進めて」と書いてある。
ヨダカ「ここで、涼風情報です。『ロナは幼い頃から一つ上の姉貴が半裸で過ごしてるのを見慣れているので、胸にセクシーさは感じません』どうなってるんですかこれ」
ロナ「え……涼風情報のそのままだ。付け加えるなら姉貴と妹とお袋が堂々と胸を揉み合ってるのを見たことがある」
ベル「それはそれで不健全なような。女性だけの世界は立ち入るものじゃないですよ」
ロナ「アレは完全に事故です……と言うかむしろ向こうが配慮してくれ」
 眉間を摘んで唸るロナ。
ヨダカ「また涼風情報ですね。『サオトメ家は母・姉・妹の女子3人に対し、祖父・父・ロナと男子3人でしたが、家庭内のパワーバランスは女性陣が強かったです。故に割と男子としての配慮をして貰えずに育ってます』……それは大変ですね」
ロナ「特に姉貴が酷かったな……サオトメ家の中でも随一の剣術の腕前があったので発言権強かったんですけど、人に押し付けるばかりで自分は好きな事しかしない究極の自己中です。道場経営と家事と妹の学費の為の副業で俺が忙しくても何も手伝わないんです。正確に言えば剣術以外何もできないんですが」
エリ「つ、ツッコミどころが多すぎて……何から言えば良いかわかんないです」
ヨダカ「涼風情報です。『ロナの姉であるユロは人を人とも思わない剣術バカの傍若無人女です。自分の剣技を磨くのは出来ても誰かに教えるのは苦手です。その割にコミュ力高いので友人は全世界にいると言っても過言ではありません』」
ロナ「その姉貴は外国で得体の知れない仕事して帰ってこないし、母親も6年前に亡くなって、今会いに行けるのは妹だけなんですけどね」
 軽く言うロナだが、またしても開けてはいけない箱を開けてしまった気がする他メンバー達は静まってしまう。
ヨダカ「涼風情報です。『彼奴言わないと思うので涼風からバンバン言います。胸にセクシーさを感じないとは言いましたが、あくまで平均とその少し上くらいまでです。規格外にデカイと流石に物珍しさから初対面1回は視線が行きますが、すぐ慣れます。まぁそういう人間もいるよねくらいの軽さです。というかまずロナは異性として見る範囲が極端に狭いです。もしくは友達の範囲が広すぎます』」
ロナ「否定はしない」
エドゥ「ロナさん流石に潔い」
ヨダカ「『じゃぁ何処見てるんだ?と思うかもしれませんが、ロナは中身重視派です。好きになった子がタイプなのでしょう。今後惚れ込む相手が出てきた場合、B専レッテルを貼るかもしれません。ちなみにアンに惚れ込んだらもれなくB専貧乳好きレッテルです』……結構な勢いで失礼ですね涼風が」
ロナ「俺は何言われてもいいが、アンに流れ弾当てるのやめてくれ涼風」
ベル「同感です。この場にいない人を巻き込むのは姑息ですよ涼風」
ヤミ「もしかしてこの言い方をするとベネット君にも流れ弾ではないかい?」
ロナ「……確かにな。そもそもアンは一般的な可愛らしさとは違うかもしれないが、十分人としての魅力を持った女性だ。勝手な先入観で醜女扱いは酷いだろ?」
ヤミ「おやぁ、意外と君も彼女の事を気に入っているのだねぇ」
ヨダカ「涼風がオヂサン構文で何やら主張していますが読むほどの内容ではありませんね。捨ておきましょう」
ジーク「お、タレコミ情報が入ってきたな……匿名菜種油さんからだ。『独身で犬猫を飼うと婚期が遅れると言いますが、独身で機械人形を購入する人も大体婚期が遅れると思います。ロナ・サオトメが心配です。親戚からも言われてるんで早く彼女作って連れてきてください』だそうで」
ロナ「え……」
 珍しく目に見えて挙動不審に動揺するロナ。
エリ「さっきまでの話からすると母親は亡くなっているし姉は興味なさそうだし……菜種油さんって妹さん……?いやいやここは何でもありのパラグラフ14だから死亡部屋からアクセスを……?」
ビク「軍師さんがなんか迷宮入りしてんなー」
ロナ「多分、菜種油は妹だな……前に似たような事を言われまして」
 説明するロナだが顔色は結構悪い。そのまま深く深く溜息をつく。
ロナ「はぁ……こう言う抉り方もあるのか……涼風悪趣味だな」
ジーク「お、続きがあるな。『うちは嫡流です。サオトメ家存続の問題があります。結社に行った兄さんは知らないかもしれないけど私の方は親戚からどうするつもりだって結構な頻度で圧力かけられてるんです。兄さんが早く嫁を見つけてくるか私が婿取りするか考える必要があるので今度じっっっくり話し合いましょう。兄さんが今いる環境なら前より見つけやすいと思うのでこれを聞いた皆々様宜しくお願いします。姉さん?アレは独り身でしかいられないでしょ』」
 今度こそ完全に撃沈させられたロナが思考の渦に飲み込まれて1人ぶつぶつ考え始める。
ジーク「そろそろ場も温まってきたんで、未成年組の意見も聞いてみるぞ。まずユーシンさん」
ユーシン「え、え……えーっと……」
アキ「無理しなくて良いですよぉ。嫌だったら黙っててもいいんです。涼風の傍若無人さに抗議してもいいんですよぉ」
 既に顔が赤くなっているピュアな少年にこの話を強要する事態無茶がすぎると良識ある大人達は頷く。
オルヴォ(以下・オル)「やっぱり未成年には可哀想すぎ。おーいスタッフー!」
ヨダカ「涼風からの伝言です。『燐花さん宅では同い年のテディ君も堂々とチチトーーク!に参戦して脚フェチ暴露されてましたし、べにざくろさん宅では清純派タイガ君も暴露されてました。よって未成年組もアリかなと』だそうです。よそはよそ、うちはうちじゃないですかこの案件」
オル「どこの矛盾系ママのセリフじゃ」
ベル「いや……少し待ってくれませんか。どっちみち話しにくいですよこの空気」
ノー『その前にタイガお兄さんはもう大人だよ?』
ジーク「おーっと涼風情報だ。『ユーシン自身に好みと言える好みはないでしょう。ただ、以前通っていた中学の同級生との会話内容や一般的にありふれたセクシーお姉さんの姿は見ています。よって、世間の空気的に胸が大きい方が良いとされるならそちらに流されている筈です』まぁ妥当だな」
エリ「ま、まぁ……大体世間の空気が答えかも……しれないですね……」
エドゥ「そう言えば大学の友達も色々エロい話する割に一般論ばっかりでした」
ジーク「涼風情報だが、『故に生まれた国がタジキスタンだったら太眉、昔の中国なら纏足された足、アフリカなら裕福の象徴たるおデブにセクシーさを感じていたでしょう。とある調査によれば、東アジア系は胸が好きで、欧米に近い文化圏だと尻が好きだそうです』だってな。国の文化の違いってあるからなぁ」
ヨダカ「『ちなみに、日本の江戸時代以前においては割と庶民女性が胸部を丸出しにして生活していたのだとかで、胸にセクシーさを感じる男性は少なかったそうです』。不衛生では?」
スレ「ん?メタ発言だけどカンテ国の文化って東アジア寄りなのか?位置的にはヨーロッパ圏内のはず。イギリスの北西くらいに描いてあったような」
ベル「文化圏的にはシリトーーク!すべきなんでしょうかね。それを言ったら企画倒れです。仕方ないでしょう、書き手が全員日本在住ですから」
ヤミ「文化圏の違い忘れないでくれ給えよ〜作者ぁ。ん?でもカンテ国は移民が多いよねぇ。確かアメリカだと勢力は拮抗していた筈だから、どっちの意見も半々くらいにいると見ていいのかもしれないねぇ」
ジーク「涼風からの伝言だ。『胸派か尻派かに分かれがちですが、2番手になると肌の白さや眼差し、表情、知性や佇まいにセクシーさを感じる人もいます。というか、フランスとか南欧とかのあたりになると儚い系美女より強くて自立しているカッコいい女性の方がセクシーに見えるそうです』」
ヨダカ「また追加情報来ましたね。『アメリカでは人の体系をとやかく言う事自体が最近はタブー視されるようになっているそうです。日本人がガバガバすぎるのだとアメリカ在住でアメリカ人の旦那がいる語学系YouTuberが言ってました。カンテ国の空気はどうなんでしょうね』……やはり企画倒れさせようとしてますね涼風」
ヤミ「でもこの手の話題は需要があるのだよねぇ。語ってない人を返す気はないらしいし?まぁ涼風の発言はシン君についての発言で思いっきりブーメランだけど」
エドゥ「そうですよねー……」
 きっちり隙なく陣取られたスタジオ内に逃げ場はない。
ヨダカ「私としても気が進むものではありませんが、収録はまだ終わらないようなので話を次に進めましょう。次は誰でしょうか」
 ADサンが出したカンペには「ノーマンで」と書かれている。
ジーク「ノーマンくんはどうしたい?このまま話すか?辞めとくか?」
ノー『よくわからないけど、ママの胸だったら見たことあるよ。テレビで見た女優さんより随分小さかった気がします』
オル「子供あるある……親の個人情報晒し」
ノー『学校にいた時はそーゆーおっぱいの話?とかお尻の話?したり、お兄ちゃんの部屋から水着お姉さんの本持ってくる子もいたけど、何がいいのかよくわかんないです』
 むくれながら合成音声でノーマンが話す。音声担当のコリンがマイクを近づける。
ノー『今もなんでこの収録が必要なのかわかんないです。あ、でも骨は面白かった』
スレ「それは……!!」
 アキヒロの目がきらりと光るがすんでのところでスレイマンに止められる。ついでにADサンからは「尺の問題。骨トークはするな」とスケブを振られる。
ジーク「涼風情報によると『ノーマンはキッカママしか知りませんし、興味もないでしょう。懐いてたお兄さんの影響次第で知る事はあるかもしれませんが、意味分かってないですし、なんで面白がってるのか理解できないでしょう』。10歳ならまだそれでいいだろ」
 後半の『これからどう性壁が成長するのか楽しみです(ΦωΦ)フフフ…』を削除して読み上げるジークフリート。ADサンが「次はエリック」とスケブを振る。
ヨダカ「では次、エリックさんですね」
エリ「ひゃ、は、はい……えーっと、えっと……」
ベル「自分から暴露するのが1番致命傷にならないんですよ」
エリ「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……」
オル「行きなさい!シンジ君!」(裏声)
エドゥ「デン デン デン デン ドンドン♪」(やたら上手いボイパ)
ヤミ「どこかで聞いたようなメタ発言だねぇ。というか君たちそんな特技があったのかい」
エリ「え、えっと!サイズ云々とやかく言う事自体、やっぱり失礼だと思います!」
スレ「1人だけ株を上げようとしてるな、さては?」
エリ「わわわわ、あ、でもっ!何事も平均なのが良いんじゃないかなってぼくは思います!」
ヨダカ「涼風情報ですね。『エリックは胸より尻派です。そして知性的な比較的クール系の女性に惹かれがちです。明るくてキャンキャンしてる女性の場合、何故か父親目線になっています。ヒギリちゃんを見ている愛の日の話からもわかりますが、あれは不器用親父そのものです』」
エリ「ふわああああああああああ!!!!」
 暴露されて羞恥心から撃沈しているエリック。
ビク「おいおい、クール系って役者じゃねぇのか?それ?」
エリ「ゆ、ゆゆゆユリィさんは……ち、違います。僕としてはああいう突飛な感じは逆に怖いです。あと、眼鏡って呼ばないでくださいって言っても辞めてくれないのでナシです」
エドゥ「超個人的な事情ですねー」
ヨダカ「『クール系とは言っていますが、翻弄しに来る大人小悪魔系女子にも弱いです。結社内だとセリカさんが近いかもしれませんが、矢張り該当するイメージがいないですね。「A secret makes a woman woman…」と言って似合う人でしょう』。遊ばれて終わらないよう気を付けてください」
 涼風情報の続きには『まだ本編で絡みを書いていませんが、ユウヤミの妹あたりドンピシャじゃないでしょうか』と書かれていたが、ヨダカの権限で無かった事にする。
イオ「見た感じより嗜好が中年かよ」
 ぼそっと呟いたイオの言葉にさらに沈められるエリック。
ベル「若いうちからバーのママに熱あげると大変ですからね」
エリ「熟女好きではないっっ!!」
 唐突にエリックが声を荒げる。が、その目元には涙が浮かんでおり、声も涙声である。
エリ「言わせて貰いますけどね、可愛いふわっとした女性も勿論可愛いと思うんです!けど!軽薄っていうか人としての深みを感じないんで恋できないんです!無理です!」
スレ「なんか一瞬ディスられた気がするんだが」
エリ「同じ理由で!胸がたわわなのも悪くないんですが、お尻の綺麗さは健康さに直結すると思うんです!胸は作ろうと思えば補正しやすいと思いますが、お尻は日常的に鍛えてケアしないと綺麗に作れないでしょう!?」
 ヒートアップしたエリックのスポーツ眼鏡が曇る。
エリ「よって!お尻を綺麗に保てる人は健康でマメで生活がきちんとしている基準になり得ると思うんです!!」
エドゥ「なんか田舎のオカンが言いそうな理由ですね」
アキ「恋愛に理論を展開するのはどうかなぁと思うんですけどねぇ」
イオ「けっ……やっぱり今から思考が枯れてんな」
エリ「なあああああっっっ!!!」
 スンっとした顔の面々を前に崩れ落ちるエリック。いつもなら大抵の事をフォローしてくれる筈のロナはまだ妹に言われた事で抉られたまま復活していない。1人だけぶつぶつ言いながら別の世界に入り込んでいる。
エリ「ビクターさああん!!わかりますよね!?筋肉好きでしょ!?」
ビク「え、俺?」
 キョトンとしているビクターに肯定して首を落とさんばかりに振るエリック。
ビク「いやぁ、チチトーークって言うから、てっきり大胸筋をどう鍛えるかって話かと思ってたな」
エリ「まずそこから……!?」
ビク「さっき先生たちが大胸筋とか小胸筋とか言ってただろー?」
スレ「言ったけど……」
ビク「だからダンブルプレスとかプッシュアップの正しい方法とか……って考えてたんだが、もしかして大臀筋とハムストリングの鍛え方の方が良かったか?」
全員「ん?」
ビク「まずヒップ・ヒンジを最初にやるといいぞー。やる時のポイントは……」
全員「んんんん????」
エリ「ビクターさん、Eテレの筋トレ講座じゃないです今日の収録。今まで何の話を聞いてたんですか」
ビク「いや、だから大胸筋を鍛えた方がいい胸ってどんなやつかって話かと思ってんだが、違うのかー?」
エリ「違います……ユーシンさん達のターンの時何思ってたんですか」
ビク「これから鍛えれば立派に大胸筋も上腕二頭筋も作れるぞって」
ユー「あのっ!鍛えたいんで後でコツとか教えて貰えますかっ!?」
ビク「おー、いいぞいいぞ!しっかり教えてやらぁ!……で、何の話だった?」
エリ「だーかーらー!……もう良いです放っといてくださいよ無理に話す事なかったですから」
 いじけ始めたエリックをさておき、ジークフリートがビクターにチチトーーク!とはなんたるかを説明し直す。
ビク「あぁそういう事!ならあんまり大きくない方がいいな」
ジーク「ビクターさん的にはどんなイメージの子が良いんだ?」
ビク「こう、ちまーっとしてて、それでわぁーっとした感じだと可愛いなって思うな」」
ヨダカ「涼風情報では、『前に個人面談した際にはSUZUKIのハスラーとかHONDAのN-BOXみたいな女子が好きって言ってました。要は小さめで明るい子で、健康的というより頑健な子ですね。男子っぽい訳ではなくちゃんと女子の可愛らしさを両立できてる事がポイントだと思います。ガタイのいい土建現場のムサイ男共の中で働いてきた反動か、自分と対局にある人に惚れやすいです』……成る程」
ビク「そうそう、それが言いたかった!」
ヨダカ「追加情報です。『ミニマム元気な子に惹かれるのは、学校卒業後に関わった女子というと上司に連れられて行ったキャバ嬢か同僚の土建女子がせいぜいなところの影響があるかもしれません。育った家自体は厳格な家風だったので、女子に関する好みも割と堅実です』」
ビク「て言うわけだ。小隊長、軍師さーん、見えてるかこっち?」
 いつも通りのノリのビクターがぼんやりしているエリックとロナに手を振る。
エリ「なんでビクターさんは無傷なんですかぁ……」
ビク「怪我なんかしてないが?」
エリ「そういう事じゃないです……もうなんかツッコミ入れるの疲れました」

特殊な人間編

ヨダカ「ところでスミスさんはどうです?」
 ヨダカが話を振るも反応がない。よく見ると鼻提灯を膨らませる古典的な居眠りをしていた。
ビク「おーい、第3の副長さーん」
ジョン「あ?」
 隣にいたビクターが鼻提灯を破裂させてやっと起きたものの、収録スタート時点から寝ていたので全く今までの説明も流れも把握しておらず首を傾げるばかりである。
ジョン「さっきサイコロの賭けで、って夢か……俺眠ぃんだけど」
 大欠伸をするジョン。気の抜けた顔のまま(と言っても前髪に隠れて目元は見えないが)、ついでにバリバリと頭をかく。地味にフケが周囲に舞う。
オル「前に漫画で見たんだよな、こんな感じの……アレなんだっけ……マダオとか言ったような……」
エドゥ「もしかしたらオレも同じ漫画考えていたかもしれないです……グラサンかけたマダオですよね……?」
オル「そう。確かグラサンのヘビースモーカーマダオがいたはず……」
ヤミ「ウーデット君、ワシレフスキー君、その作品も恐らくメタ発言だよ〜戻っておいで〜」
 此処ならざる世界の話を始めたオルヴォとエドゥアルトの肩を叩くユウヤミ。
 さくっとジークフリートから収録の要旨を聞いたジョンがぼんやりと空中を見つめる。
ジョン「女の胸か……」
 何か勘づいたアキヒロがノーマンの補聴器を直してあげるついでに外して聞こえなくする。
ジョン「ま、ふかふかしてて大きい方が寝心地がいいよな」
 “寝心地”と聞いて若干表情が変わる面々。ジョンがピンで2カメに抜かれている間に、アキヒロと復活したロナはノーマンとユーシンの背中を押して未成年組を退避させ、ヨダカとアイコンタクトを取るとついでにパラグラフ14のスタジオから楽屋へ移動する。
ヨダカ「涼風からの補足によりますと『ジョン=マダオ・スミスの言う寝心地は文字通りの意味です。何かの隠語ではなく綿の詰まった布団やマットレスと同義です』だそうです」
オル「今マダオって聞こえたけど」
エドゥ「聞こえましたよね」
ヤミ「涼風もグルなのかねぇ」
エリ「そっ、そこは布団扱いにツッコミましょうよっっ!」
 思わず言ってしまったエリックだが怯えているのか目に涙が浮いている。
ジョン「紛争地なんかだと、どうしても国民の懐は寂しくなんだろ。んで外国の傭兵に体売って稼ごうとする女がいるわけなんだが、これがまぁチビで痩せっぽちでな。中には何やら分からん病気持ってそうなのまで居てなぁ」
 溜息と共に吐き出される情報は決して軽く無い。
ジョン「一緒に派遣された同僚でいたんだよな、現地の女抱いた奴。そいつ梅毒持ち帰りやがって。あぁ、俺誘われた日はデスクワーク終わらなくて行ってねぇよ?勿論血液検査で陰性証明あるから」
 手を振って否定しながら話すジョン。
ジョン「そいつは血液検査で引っかかって病院で治せたらしいけど。どうしてもあの時の女に会いたいとかで現地戻ったあいつは鼻が無くなって全身ゴムみたいなできものでグジュグジュになって記憶も無くなった女見たらしいぜ」
 いきなり梅毒の話、しかも末期症状の話を持ち出されてドン引きしている一般市民達である。ユウヤミですら表情を曇らせて空気に合わせている。
ジョン「銃で蜂の巣にされるよかありゃ悲惨だな。時間かけて死ぬなんてやってられねぇわ。つくづく、話に聞くだけで良かった」
 ふぅ、とジョンが溜息をつく。
ジョン「ああ言うのの後だと、健康でふくよかなのは良いと思うな。平和な象徴だ」
スレ「失礼ですが……スミスさんの以前のご職業は傭兵業ですか……?」
ジョン「そんなとこだ。民間警備支援サービス会社社員って銘打ちゃいるが同じだよな」
 ヨダカの持っていた台本に文字が浮かぶ。
『ジョンは語らないだけで多くの悲惨な現実を見ています。年端もいかない少年兵を蜂の巣にした事や、捕まった13歳以下の女の子たちすら性欲処理の道具にされている現実を知っています。故に「ふかふかして大きい方が良い」には「健康な大人の女性であって欲しい」という優しさが隠れています。そこまで本人は語らないし、涼風サイドとしてもこれ以上を一般市民に聞かせられないです。ナチスドイツや太平洋戦争中に本当にあったヤバい話をベースにした話もありますが悲惨すぎて表に出せないです』
 読んだヨダカは自身の記録だけに留めておく事にした。
スレ「確かに梅毒の初期症状は見逃されやすいな。発症してもすぐ治ったように見えるから、その間に感染者を広げてしまう。潜伏期なら広げないとは言われるが0%ではない。医療水準の高い国なら第3期になる前に治療できるが、紛争中の貧困地域だと気が付いても治療を受けにくい……」
ジーク「ペニシリンがあれば良いが……第3期まで行ってると治せるか五分五分だよな」
 遠い目になるスレイマンとジークフリート。彼ら自身、紛争地・貧困地での治療を行なってきていると救えない現実に直面する事が間々あった。
スレ「はぁ……やっぱりメンタル響くな……」
ジョン「胸派か尻派かって話なら民間警備会社にいた時に同僚と話したもんだがな。デカい乳もプリッとした尻も1番か2番かくらいしか違いは無いんじゃねーか?俺はどっちも好きだ」
 言う事は終わったとばかりに大欠伸をすると、また船を漕ぎ始めるジョン。
ヤミ「相変わらずよく寝るねぇ、彼の御仁は」
ジョン「だまれ……こあっぱ……」
ヤミ「おや、寝言で怒られるという事もあるのだねぇ……実に面白い」
 ADサンのスケブに「次はイオ」と書かれている。
ヨダカ「次はアスキーさんですね。お願いします……ってどうされました?」
ジーク「ありゃ顔が真っ赤じゃないか。熱でもあるか?……サーモセンサーモードで全身見たが体温上昇が急激だな。照れだなさては」
イオ「う、あ、あ」
 赤面したイオは声もうまく出ず、挙動不審になる。
ジーク「お、ここでタレコミ情報だな……『アスキーさんはたゆんとした胸を無意識に目で追ってます。追ってる事に気付いて一人で赤面してます』だってな。匿名Fさんが言ってるコレどうなんだい、アスキーさん?」
イオ「ひ、ひ、ひ……」
オル「あー……大丈夫かいなこれ」
エドゥ「匿名Fって本人隠す気ないですよね」
ジーク「続きには『持ち主が誰とか考えてなさそうですし、人間関係もイマイチ把握していないでしょう。そこに揺れるモノがあるととりあえず目で追っているように思えます』……アスキーさん、ご愁傷様」
イオ「そっ、そこに!あるのが悪いんだろ!?見えなきゃ見てねぇよ!!目ぇ合わせたら失礼かと思って視線下げるとそこにあるんだからあるほうが悪い!!」
 開き直るイオだが、スレイマンとベルナールの背後で何か燃えているのはまだ見えていない。
ジーク「『胸だけでなく美尻にも無意識に目がいっていると思いますよ。休憩時間の殆どは机の前で個人用端末いじってますけど、女性メンバーが来るとふと視線を走らせてます。本当に見境い無いですね。最低です。ケルンティアさんに訴えられて追い出された時は就活の手伝いしますよ』だそうだな」
イオ「なっ……!ひっ、ぐぅぅ……!」
 イラッとして込み上げる言葉と、騒いだら誰かに怒られるんじゃ無いかと思う恐怖が拮抗して何も言えなくなっているイオ。
ヨダカ「涼風からの情報です。『ちなみに従姉妹のユリィはスタイル抜群ですがそれ以上に劣等感を強く持っているので対象外です。従姉妹なのでイオ×ユリもなくも無いですがアリよりのナシですね』とのことですね。何言ってるんですか涼風は」
イオ「……絶対、無しだ」
 苦虫を噛み潰したような顔をしてイオは言葉を捻り出す。
スレ「そうか、そうか……という事はもしかして、医療班に来た時もそう言う目で見てたって事かな?」
イオ「え」
 イオが顔を上げるとそれはそれは良い笑顔のスレイマンがいた。
スレ「医療班所属のアペルピシア・セラピア先生はオレの彼女なんだけどな」
イオ「ひっっ!?すっ、すみませんでしたすみませんでした」
 真っ青な顔になるイオの脳裏に姉に比べれば断然たわわな女医先生の胸がちらつく。ついでにたゆんっと擬音が付きそうなカヌル山のような人の胸までちらついてしまったがばかりにまた顔が赤くなるイオ。
ベル「それなら私からも。もしかして、機械班のロザリーと話した時も見てたって事ですかね?」
イオ「ひえっ!?」
ベル「金色の髪のロザリー・エルナーは私の妻ですが」
イオ「すみませんでしたすみませんでしたすみませんでした俺が全部悪いんで責め全部追うんで許してくださいお願いしますすみません」
 ベルナールが次の言葉を待たずに一気に話すイオ。
イオ「わかりましたとりあえず縄探してきます世間のゴミより役に立たない俺がここで生きてた事の方がおかしかったんだと思うんで地球にこの身体返してきますホコリよりは役に立つと思うんで」
 ゆらりと立ち上がったイオがスタジオをうろうろし始める。
エリ「イオさん!早まらないで下さい!」
ビク「そうだぞ、イオに会えて俺は嬉しいんだからな?」
イオ「うぅ……やっぱり俺なんかが生きてちゃダメだったんだ……姉ちゃんが怪我する代わりに俺が死んだ方が良かったんだ……」
 シュオニが操作する2カメのコードに吸い寄せられていくイオを見て、冗談だと思っていた面々の顔色が変わる。
エドゥ「アスキーさん!?」
スレ「おい、アスキー!ちょっと待て!」
 途端に騒然となるスタジオ内。フラフラしているイオを止めようとメンバーたちが追いかける。
ヤミ「アスキー君」
 凛としたユウヤミの声がざわめきを切り裂いた。イオが動きを止め、周囲のメンバーも動きが止まる。
イオ「は、は、ひゃい……」
ヤミ「首吊りだと苦しいだけだよ。中々死ねないし、上手く死ねても穴という穴から床を汚物だらけにするからそれはそれは醜悪な姿になってしまってね、後片付けが大変なのだよ。床もカーペットも何もかも遺体から染み出した雑多な体液に染まってしまうからねぇ。体液が床下まで行くと基礎から掃除する必要があるから清掃費用がかなり嵩むのだよねぇ」
 にっこりといつもの貼り付けた笑みで語るユウヤミが、ゆっくりとイオに歩み寄る。
ヤミ「それから……飛び込み自殺をするとね、電車の車輪によって手足を8回轢断されてグチャグチャになった後、電車の底部の突起によって8回体を否応なしに突き飛ばされ、枕木と砂利の間で服と皮膚をベリベリ剥ぎ取られて、25m以上にわたり自分の体と体液をあちこちに散乱させながらもまだ意識が残存し、切り刻まれて肉塊になった自分の体と臓物を恨めしく眺めながら激痛と絶望の中で死んでいくのだよ。実に凄惨だと思わないかい?ついでに周囲の交通状況の被害から莫大な損害賠償が遺族に請求される事も忘れないでくれ給え」
 聞きながら腰が抜けたのか、へにゃりと座り込んで震えながらユウヤミを見上げるイオ。そのイオの顎にそっと包み込むように手を添える。
ヤミ「君がその苦痛を背負う覚悟があるなら止めないけれど、家族やこの場にいる人に迷惑をかけたくないと思うなら、自殺は得策とは言い難いねぇ。役に立つ為に死んでも、得られるものは君の大事なお姉さんに請求される莫大な損害賠償と怨念だけだなんて悲しい話じゃないか」
 怯えるイオの目にユウヤミの三日月に歪んだ目の奥が愉悦に光っているのが見えた。
ヤミ「ちなみに水死だと青紫の風船の如くそれはそれは醜悪なデスマスクになってしまってねぇ、家族ですら顔の判別ができないくらいに崩れてしまうのだよ。染み出した体えk」
ヨダカ「主人マキール。そこまでです」
 ハリセンをユウヤミに突きつけるヨダカ。
ヤミ「どうしたんだい?迷惑をかけたくないと自殺まで思い詰めた彼を思いとどm」
 パーン!と綺麗な音が響いて肩を叩かれるユウヤミ。
ヨダカ「よく周りを見てください。アスキーさんどころかこの場にいるメンバーが貧血起こしそうな顔になっていますよ」
ヤミ「痛いなぁ、もう。あれ?」
 耳を押さえたユウヤミが周囲を見ると、イオほどでは無いにしてもそれぞれ顔色が悪くなっていた。うたた寝しているジョンを除けば、エドゥアルトだけ「凄い!さすが先輩博識!しかもちゃんと止められましたね!」と喜んでいる様子が異様である。
ヨダカ「と言うかその話が平気なのは強行犯担当や鑑識、それか医療関係者くらいですよ。医療関係者でも中々お目にかかる物ではありませんし」
 イオが思い詰めて自殺を考えた事とユウヤミのグロテスクな発言と容赦なく叩いたヨダカと、と情報過多になった面々はついていけずに目を白黒させる。
ヤミ「何を言っているんだい?苦痛の解説には自殺を思い止まらせる効果があると言われているのだよ。勿論追い詰めて轢死体になったところが見たいだなんて一言も言っていないじゃないか」
ヨダカ「主人マキール。貴方のその思考で周囲に被害を広げないで下さい。それだけは守って下さいね?」
 ジト目のヨダカがハリセンをぐりぐりユウヤミの頬に押し付ける。
ヤミ「うーん、ジャパニーズハリセンも紙束だから痛いのだよ〜?」
エドゥ「流石、先輩とヨダカさん……!漫才まで出来るんですね!頭叩かない優しさ流石です!」
 きゃっきゃしている2人と1体。それを信じられないものを見るような目になったメンバーが、もうあの3人は置いとこうかと話し始める。
ヨダカ「教育的指導です。あ、今のところカットしておいてください」
 しれっと言うヨダカにまた嘘だろの空気が流れる。
スレ「人だったらCT撮ったほうがいいかもしれない……?」
ジーク「涼風から伝言だ。『いくら涼風宅のキャラしかいないからと言って羽目を外すのはやめて下さい。収録をお蔵入りにしたいんですか3人とも?と言うかユウヤミお前出番まで喋るな(怒りのマーク)』だそうだ。リーシェルさーん聞こえましたかー?」
ヤミ「はーい」
 にっこりしながら良い子のお返事をするがどこまで本心か怪しい。その間にフユに連れられたイオが楽屋へ連れて行かれる。
エリ「や、やっぱり、リーシェルさん、って……」
ヤミ「Need not to know.と言ってしまえばそこまでだけれどねぇ……犯罪心理学の知識で警察のコンサルタントをしていた頃もあったっけねぇ」
 パチン、とでも音のしそうなウインクをエリックに向けるも、予期していたのか見事に避けられる。ありゃぁと言っている横からADサンから手渡されたバツ印のマスクを大人しくつけるユウヤミ。
ジーク「話を戻すが。今はチチトーーク!の収録で間違いないよな?」
ベル「間違いないですよ……色々ありましたが。他のお宅より脱線する率が高いですが。いや脱線しかしてない気がしますが」
スレ「そもそも涼風はシリアスな闇ネタ界隈の住人だもんな……チチトーーク!を収録する自体不慣れが過ぎるよなぁ」
エリ「そうですよね……町一つ壊滅させる時館モノでトリックを考えてる時のほうが楽しそうでしたよね」
 ADサンの持っているスケブには「次オルヴォ」と書かれている。
ヨダカ「先程は取り乱してしまい申し訳ありませんでした(主に主人マキールが)。というわけで次はオルヴォさんにチチトーーク!して頂きます」
オル「語って!語っていいんだよなっ!?」
 フフフ、と光の浮かない怪しげな笑みになるオルヴォ。
スレ「ワシレフスキーさん……キャラ違くないか?」
 ADサンのカンペには「オルヴォは最初からSNSモード寄りで参加しています」と書かれている。この中でSNSにいる時のオルヴォを知る者はいない。
オル「このリア充供の中に真の同志はいないと悟ったのでプレゼンさせていただきます!!」
 やたらと熱のこもっているオルヴォ。勿論この中にそんなオルヴォを見たことがある人はいない。
オル「ぼくとしてはちっぱいこそ正義であると主張しますよ」
 どこから出したのか、眼鏡をかけてくいっと持ち上げる。
オル「貧乳と言われがちですがぼくは品乳つまりは品のある乳であると思っています。勿論巨乳爆乳と言われるサイズにも良さはありますしそこにあればエロさを感じるものですが、品乳の清楚感に勝るものはないのです」
 何を想像したのかにへらぁと口元が緩む。
オル「大きさの慎ましさもさることながら、身長が低いと更に良いですね。自分の胸のサイズや体格を気にして恥じらってる姿がなんとも可愛らしくて且つ背徳感も良いのでして」
 フフフと笑うオルヴォ。2カメを操作していたシュオニは「ユーシンさんにこんなダメな大人を近付けてはいけない」と思った。
エドゥ「身長低くて、品乳で……えっっ……もしかしてオルヴォさんロリコンなんですかっ!?」
 堂々と声を上げてしまうエドゥアルト。こんなオルヴォが保育士やってて良いのかとスタジオもざわつく。
オル「YesロリータNoタッチとはどこかで聞いた言葉ですが、ぼくはロリコンじゃありません。これはきっちり線引きしています。成人済みの合法ロリが良いのであって決して17歳以下のいたいけな子供達をそういう目で見ている訳ではありません」
 きっぱり言って首を否と振るオルヴォ。
オル「よって、ピアルルのライラックさんはぼくの推しですが設定が未成年なので恋愛対象にはなりません。そのあたりご理解いただきたく存じます」
 未成年云々以前にそれは二次元だろうと指摘できる人はいない。それほどまでにオルヴォの纏う雰囲気は本気が溢れていた。
オル「『海上の青い星』のセーラちゃんは未成年なので絶対ナシです。『この世界に有終の美を』のナイジュは合法ロリっていうよりロリババァだからちょっと微妙なんですが、『響鳴の彼方』のクララちゃんなら20歳の合法ロリですよな。クララちゃんならhshsのバブみを感じてオギャるの境地です」
 ムーンが操作する1カメに向かってオルヴォがヴァイオリンを弾くクララのポーズを取る。
オル「できればその為に作られていない作品だと萌えるんですよねー。何も明言されていないところを妄想補完する方が萌えるじゃないですか」
 もしこの場にテオフィルスかギルバートかフィオナかクロードウィッグでも居れば頷いたかもしれないが、残念ながら妄想補完が通用するメンバーではない。
ヨダカ「涼風から伝言です。『それで、3次元女子の好みないの?2次元と3次元の好みって違うよね?』だそうですが。どうなのでしょうか」
オル「現実は敵だ……リア充供がのさぼる世界なんだ……いっそ爆発してまえ」
ヨダカ「一気に沈みましたね」
ジーク「涼風情報だが。『オルヴォはこれまでに色々あって、3次元の女性に心を開くことも恋愛的に好きになることも物凄〜く難しいです。可能性ゼロとは言いませんが、良いなと思った子がいても勝手に想像の中で幻滅して現実には出てきません。主な理由はヲタク文化への不理解です。自分が言われた事もそうですが、ネット等でヲタ友だった人が家族や親しい人の不理解で散々な目に遭っている現実を知っています。少なくともヲタグッズを勝手に捨てない人がいいですね』」
ベル「オタク云々以前に許可なく勝手に捨てるのはダメですよ」
エリ「あ、集めている人から……したら、大切な物、ですからね」
 うんうんと頷くメンバーたち。
ビク「あ、ひょっとして前線駆除班第3小隊のキッカさんとか第6小隊のウルリッカさんなら“合法ロリ”じゃないのか?」
エリ「キッカさん!?」
エドゥ「ウルさんとキッカさんですか!?」
ヨダカ「ウルとキッカさんですか……」
 おしゃべり禁止マスクをしているユウヤミはビクターの発言に悩むような面白がるような表情をする。
オル「笑止!現実を生きている女性に向かって合法ロリなどという不埒な言葉は向けるモノではない!!あくまでこの言葉はネットスラングとして自虐の一種であり相手が二次元である前提だと捉えて貰えるだろうかっ……?」
エドゥ「意外と紳士なんですね」
オル「はあ〜?意外ではないぞ〜!?ヲタクは紳士淑女の集まりに他ならないでしょうが」
ジーク「お、涼風情報だな。『色々言ってますが、オルヴォは2次元を認めてくれる人であれば3次元の女子に結局そこまで見た目の選り好みしません。お互いのプライベートな時間を確保できて、二次元を語っても怒らない人で、かまちょでなければそれでいい方の人です。できれば一緒にマ●オカートやス●ブラやスプラトゥ●ンが出来ると嬉しいでしょう』」
オル「ゲーム一緒にできるの良い本当に良い。でもやっぱりちっぱいが良いですしできればス」
ジーク「話が終わらなそうだから次行くぞ。えーっと次は……」
 ジークフリートがオルヴォの話の腰を無理やり折ってADサンの方に視線を走らせる。スケブには「ユウヤミ」と書いてある。
ヨダカ「話す前に涼風から伝言です。『ユウヤミが変な話をし出したら皆さんご退席下さい。無理に聞く必要ありませんから』だそうです。私からもお願いしますね、自衛が出来てこそ大人ですから」
 おしゃべり禁止マスクを外しながら肩をすくめるユウヤミ。
ヤミ「随分色々気を遣って貰って悪いねぇ」
 勿論悪いとは一欠片も思っていなさそうな笑顔である。
ヤミ「そうだねぇ、女性のバストサイズについて外野があれこれ言う時点で美しくないと思うのだけれど……まぁ、自然なままにバランス良く、が一番美しいのではないかな?」
エドゥ「先輩、そうだったんですか!?」
ヤミ「何を驚いているんだい、ウーデット君?」
エドゥ「だって、だって……!よく一緒にいるホロウ姐さんって巨乳じゃないですか!?」
ヤミ「ウーデット君……君には其処しか見えていないのかい?もう少し観察力があると思っていたのだけれどねぇ……期待外れだったかな?」
 にこりと微笑むユウヤミだが目の奥が全く笑っていない。背筋がピシッと伸びるエドゥアルト。
ジーク「おっとここで涼風情報だ。『ユウヤミはバストサイズに好みありません。もっと言うと顔にもほぼ好みありません。外側なんて整形したり盛れば幾らでも変わる物にあんまり執着しません。もしヴォイド姐がクロエちゃん系の容姿だったらB専貧乳好きになってました』……それはそれで節操ねぇし酷いし後涼風の言い草も酷い。とりあえず涼風はクロエさんに謝れ」
ヤミ「中身重視って表現してくれないかい?この際だからメタ発言で主張させて欲しいのだけれど、『ヴォイド・ホロウのバストは規格外レベル』の設定が公式に決まったのは食い倒れ共闘シーンを収録したより後だよ。あの当時書き手で親御さんの燐花さんも含めて誰も知らなかった情報だからね?後から整合性つけようとした結果が今の設定とも言えるのではないかな?」
ジーク「涼風が『怒ってる?』って聞いてんだけど」
ヤミ「怒ってないよー?性格設定上、最初から決まっていた事だったとしても対応は変わらないと思うし。ただ作者サイドが書かなかった事はキャラサイドとしても眼中に無いのと同じに見えるって覚えといてよね」
ヨダカ「涼風が『作者として不甲斐なし!穴があったら入りたい!』と言ってます」
ヤミ「何かに影響されてそうだねぇ……Twitter知識しかないくせに」
ヨダカ「ついでに貴方も埋めてもらったらどうですか」
ヤミ「怒ってる?」
ヨダカ「怒ってませんよ。機械人形に感情はありません」
 そう言いながらヨダカは電子版台本をパタンと閉じる。浮かんでいた涼風情報を誰かに見られたくなかったのだ。
『ユウヤミは今でも“普通”の感覚は持っていません。生きている人間よりも惨殺された遺体の方がドキドキするし、興味持ちます。やって良いなら拷問や殺人も楽しんでやりますし、自分に死にも無頓着です。殺人は癖になるという通り、手段のラインナップに標準装備でありますが意識的に選ばないようにしているだけです。仕事で決まっている枠内の責任は負いますが、それ以上に責任感が働く事はまずありません。束縛を嫌うのは、思うままに動けば好奇心と向学心で無意識に周囲を壊してしまうので、常に軌道修正して生きないといけない故です。心の中に分離したアルセーヌが残ったままの影響もあるでしょう。なので、ヴォイド姐やミサキに損得横に置いて対応できるのはかなり異例であると言えます』
 軍警への報告なら兎も角、一般人に聞かせる内容ではない。
オル「リーシェルさんとヨダカさんっていつもあんな感じなの?」
エドゥ「いつもあんな感じです。割と先輩の自業自得ですけど」
オル「言うね〜」
 にこっとしながらオルヴォに答えるエドゥアルト。
ジーク「涼風情報によると『外見に執着しないと言いましたが、盛ったり減らしたりできる乳と違って、虹彩の色は好きな色に変えられないので他よりは執着する可能性が高いです』……なんだか理由が理由だな」
ヤミ「正確に言えば移植したりレーザー手術で色を変えるのはできるよ。安全は保証できないけれどね」
スレ「美容目的の移植はやめてくれな。本当に必要な人の為、合併症防止の為、健康なら出来るだけ自分の身体をいじらないでくれ」
 思わず口を挟んだスレイマンにジークフリートもうんうんと頷く。
 そんな2人を見つつ、ん〜そうだねぇ〜とさも悩んでいるかのように首を捻りながら眉間をトントン叩くユウヤミ。某刑事ドラマの主人公のようなポーズになっているが誰もツッコミを入れない。
ヤミ「君たち、『マジシャンが右手を出したら左手を見よ』と聞いた事はないかい?大体肝になる重要な事は目立たないところにあるものだよ」
エドゥ「虹彩は目立つと思うんですけど」
ヤミ「それも含めて“右手”だよ?かの事件記者は『目に見える事実は、見方によってはどうにでも解釈できてしまうので、事実をもとに推理すると、しばしば判断を誤ることがある』と言ったそうだからねぇ。目立つ“右手”に惑わされるなんて光物に群がる鴉みたいじゃないか」
エドゥ「成る程、勉強になります!メモしときます!」
 早速携帯型端末にメモを書き込んでいくエドゥアルト。でもここはパラグラフ14。何を言っても何を書いても全部消えてしまうパラグラフ14である。
ジーク「また追加情報だな。『巨乳自体の寿命は何もしなければ10年か長くても15年ほどなので彼女候補には一切求めていません』……リーシェルさん、何思ってヴォイドさんのアレ見てるんだい」
ヤミ「そうだねぇ、継続的に鍛えてないと将来……というか5年後あたりから可哀想だなと。遅かれ早かれ鍛えようとなんだろうと結果的に崩れる運命さだめなのだよねぇ」
エドゥ「すっごく女子目線な意見じゃないですか。偶に先輩IKK●みたいですよね」
ヤミ「恐れ多いねぇ、例の高尚なギャグであればウーデット君の方が至極上手に言えそうだと思うのだけれどねぇ」
エドゥ「本当ですか!?えーっと……『どんだけぇ〜!?』」
 エドゥアルトの渾身のギャグに対してスンっと音がしそうなユウヤミの表情。他のメンバーもドン引きで一言も発しない。
エドゥ「『まぼろしぃ〜!!』」
 ここまで言ってみたものの反応がイマイチな面々を見てあっという間に顔が赤くなるエドゥアルト。
ヤミ「うん、それでねエントロピー増大の法則だよ。一つの状態を維持するには弛まぬ努力が常に必要だからねぇ」
エドゥ「いやそこは笑ってくださいよ!滑り芸人ですかオレは!?」
ヤミ「何かあったかな?小鳥の囀りなら聞こえた気がするけれど」
エドゥ「せんぱあああああいいいいい!!!」
 地団駄を踏むエドゥアルトだが完璧にユウヤミは視界から消して涼しい顔をしている。
 台本をチラリと見るヨダカだがまた閉じてしまう。
『反社会性人格障害(サイコパス)を抱えているユウヤミですが、昔は酷い素行症でした。要は反社会性人格障害の子供用の病名です。現在のユウヤミになるまでに行動認知療法や薬物投与などの様々な治療が行われて今現在になっています。そのおかげで現在は自己管理の徹底が出来る様になりました。それでも、立てこもり事件を解決ではなく実験の材料にしたり、罪悪感が無かったりと黒い所はまだまだあります。それで、いざと言う時の為の衝動を抑える薬が処方されており、普段はヨダカが管理しています』
 そんな機密事項だらけの文面を読み上げられる筈もなく。痛むはずのない頭を抱えてヨダカはため息をつくような顔をする。
ジーク「ん、追加情報多いな。『実はユウヤミは自分の猫っ毛で癖っ毛な髪に苦労しており、サラッサラのストレートで綺麗なキューティクルの髪の女性に惹かれやすいです。脱色や染色や体調不良でボロボロになった髪や猫っ毛癖っ毛や人工髪にはほぼ興味示しません』……髪フェチか」
ヤミ「言い方に棘を感じるのだけれどねぇ?一般論として美しい物は美しいものだろう?」
スレ「んー、オレ的には綺麗なのは認めるけどつまらないなぁって思うな。癖っ毛の方が好き」
 サラサラストレート髪のエリックやエドゥアルトもそこまで執着する感じもなく。
オル「わかりますぞ。サラサラストレートのキューティクルですべすべな髪って良きですよな……!」
 髪に難があると言えばこの男もそうである。癖っ毛に困っている歴では間違いなくユウヤミよりオルヴォの方が上である。ちなみにもっと上のジョンは爆睡している為カウントされていない。
オル「サラサラストレートは我が人生の憧れです」
 キリッとした顔でユウヤミの手を取って堂々と力強く握手するオルヴォ。
ヤミ「それはどうも……」
オル「どんな趣味でも素晴らしくないものはないんです!堂々と髪フェチを出せば良いじゃないですかここはパラグラフ14だし」
ヤミ「ふふ、ありがとうございます。お気遣い頂いて」
 オルヴォの熱量にかなり引いているユウヤミだったが、大人の対応で微笑むとやんわり手を引き剥がす。
ヨダカ「涼風から追加情報ですね……『ユウヤミの場合、そもそも異性として惹かれる相手が圧倒的に少な過ぎるので母数が足らず好みやフェチ等断じるのは難しいです』。私としては小さい話だけの方が把握しやすくて助かります。それから『表向き言ってる事と実際の考えに乖離がある時もあるので意味わかんないですマジでどうにかしろお前この天邪鬼野郎』だそうですね同感です」
エドゥ「つまりは好きになった人がタイプなんですね先輩。あ、でもなんか先輩なら好きが高じてヘアスタイリストになってそうですね」
 うんうんと頷きながら言うエドゥアルト。
エドゥ「ホロウ姐さん専属ヘアスタイリスト……良い響きじゃないですか〜」
 1人で何を想像したのか楽しそうなエドゥアルトの肩に、ユウヤミがぽんと手を乗せる。
ヤミ「ところで……最後にまだウーデット君が暴露してくれてない気がするのだけれどねぇ?」
エドゥ「!?」
ヤミ「ほらほらウーデット君ぶっちゃけトークしてしまい給えよ?もうみんな恥を忍んで吐露したのだよ?死なば諸共と行こうじゃないか」
エドゥ「アタタタタ、先輩痛いです!そんなに力込める事ないじゃないですか!」
 ギギギギと音がしそうな勢いでユウヤミに掴まれるエドゥアルトの肩。流石前線駆除班小隊長で手芸が趣味なだけあり、皆んなが思うより握力がある。
オル「北斗●拳みたいな声が聞こえた希ガス」
エドゥ「それならひでぶって言いますよっ!」
 ヨダカが口を挟もうと動いた途端にパッとユウヤミが手を離す。痛かったぁ…と言いながらエドゥアルトはぐるぐる肩を回して調子を確認した。
エドゥ「な、なんか先輩の後で恐縮なんですが……」
 困り眉の笑顔で頬をポリポリ掻いているエドゥアルト。
エドゥ「やっぱり大きくってふにふにもにもにしてる方がロマンが詰まってると思います!!出るとこ出てて引っ込むところ引っ込んでるのが最高ですよっ!」
 言い切るエドゥアルト。
 ムーンの1カメ。シュオニの2カメ。司会者席から見ていたジークフリートとヨダカの視点。3つのどの視点から見てもわかるほどエドゥアルトの顔が真っ赤になっていく。
エドゥ「オレは、先輩ほどカッコよくなれないんで、潔く騙されようと思います!」
 スレイマンとベルナールが無言で拍手をし、他のメンバーも「まぁそうだろな」と頷く。
 ADサンの方から巻いて巻いてと指示が来たので、エドゥアルトを弄りにいきそうだったユウヤミを止めに入るヨダカ。
ジーク「それでは全員の意見が出揃ったところで、意見をまとめてみるぞ」

ピョートル→大きくて筋肉で支えてるバストが良い。
スレ→大きめの方が良いけど弾力性重視。ケモミミ好き。
ベル→どのサイズにも良さがある。妻の胸が麻のように育つのを見た。
アキ→全てカレン基準。骨オタクの変態。

ロナ→姉貴の所為で感覚バグり気味。胸に反応しない。
ユー→世間の空気感による。個人としての意見はそのうち?
ノー→母親の胸を見た事はあるが、まだ興味ない。
エリ→胸も悪く無いが美尻の方がもっと好き。
ビク→小振りな方が好き。

ジョン→大きくてふかふかな方が良い。健康的だから。
イオ→大きい胸があると目で追ってる。綺麗な尻も目で追ってる。
オル→ちっぱいの背徳感が良いと言う合法ロリ好きの変態。
ヤミ→バランスの良さ重視だが基本外見に執着しない。だが髪フェチ。
エドゥ→出るとこ出て引っ込むとこ引っ込んでるのやっぱ最強じゃない?

ジーク「結論だが、全員何某かの意味で変態だとわかったぞ!」
ヨダカ「それでは次回のチチトーーク!ねぇねぇ好きな子いる?編をお楽しみにしてください」
 メンバーが拍手をし、ジークフリートとヨダカがムーンの1カメに手を振る。

 ADサンが「はいおっけー」と声をかけるとスタジオ内に漂っていた緊張感が一気に解れた。
 其々に「お疲れ様でした」「意外でしたよ〜」「新たな一面ですね」などと話しながらスタジオを後にする。スタッフたちもテキパキと機材を片付けていく。段々と消されていく照明。
ジョン「ひぇっくしょん!寒ぃなぁ……収録なら暖房くらい……って誰もいねぇじゃねぇかっ!!」
 誰もいなくなったスタジオで1人くしゃみをしたジョン。そそくさとスタジオから退散していくがまだ彼は知らない。先にスタジオを後にした面々は偶然にして女子版チチトーーク!を収録したばかりの女性メンバーたちに出くわして物凄く気まずい空気になってしまった事を。



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