ヨダカ「ところでスミスさんはどうです?」
ヨダカが話を振るも反応がない。よく見ると鼻提灯を膨らませる古典的な居眠りをしていた。
ビク「おーい、第3の副長さーん」
ジョン「あ?」
隣にいたビクターが鼻提灯を破裂させてやっと起きたものの、収録スタート時点から寝ていたので全く今までの説明も流れも把握しておらず首を傾げるばかりである。
ジョン「さっきサイコロの賭けで、って夢か……俺眠ぃんだけど」
大欠伸をするジョン。気の抜けた顔のまま(と言っても前髪に隠れて目元は見えないが)、ついでにバリバリと頭をかく。地味にフケが周囲に舞う。
オル「前に漫画で見たんだよな、こんな感じの……アレなんだっけ……マダオとか言ったような……」
エドゥ「もしかしたらオレも同じ漫画考えていたかもしれないです……グラサンかけたマダオですよね……?」
オル「そう。確かグラサンのヘビースモーカーマダオがいたはず……」
ヤミ「ウーデット君、ワシレフスキー君、その作品も恐らくメタ発言だよ〜戻っておいで〜」
此処ならざる世界の話を始めたオルヴォとエドゥアルトの肩を叩くユウヤミ。
さくっとジークフリートから収録の要旨を聞いたジョンがぼんやりと空中を見つめる。
ジョン「女の胸か……」
何か勘づいたアキヒロがノーマンの補聴器を直してあげるついでに外して聞こえなくする。
ジョン「ま、ふかふかしてて大きい方が寝心地がいいよな」
“寝心地”と聞いて若干表情が変わる面々。ジョンがピンで2カメに抜かれている間に、アキヒロと復活したロナはノーマンとユーシンの背中を押して未成年組を退避させ、ヨダカとアイコンタクトを取るとついでにパラグラフ14のスタジオから楽屋へ移動する。
ヨダカ「涼風からの補足によりますと『ジョン=マダオ・スミスの言う寝心地は文字通りの意味です。何かの隠語ではなく綿の詰まった布団やマットレスと同義です』だそうです」
オル「今マダオって聞こえたけど」
エドゥ「聞こえましたよね」
ヤミ「涼風もグルなのかねぇ」
エリ「そっ、そこは布団扱いにツッコミましょうよっっ!」
思わず言ってしまったエリックだが怯えているのか目に涙が浮いている。
ジョン「紛争地なんかだと、どうしても国民の懐は寂しくなんだろ。んで外国の傭兵に体売って稼ごうとする女がいるわけなんだが、これがまぁチビで痩せっぽちでな。中には何やら分からん病気持ってそうなのまで居てなぁ」
溜息と共に吐き出される情報は決して軽く無い。
ジョン「一緒に派遣された同僚でいたんだよな、現地の女抱いた奴。そいつ梅毒持ち帰りやがって。あぁ、俺誘われた日はデスクワーク終わらなくて行ってねぇよ?勿論血液検査で陰性証明あるから」
手を振って否定しながら話すジョン。
ジョン「そいつは血液検査で引っかかって病院で治せたらしいけど。どうしてもあの時の女に会いたいとかで現地戻ったあいつは鼻が無くなって全身ゴムみたいなできものでグジュグジュになって記憶も無くなった女見たらしいぜ」
いきなり梅毒の話、しかも末期症状の話を持ち出されてドン引きしている一般市民達である。ユウヤミですら表情を曇らせて空気に合わせている。
ジョン「銃で蜂の巣にされるよかありゃ悲惨だな。時間かけて死ぬなんてやってられねぇわ。つくづく、話に聞くだけで良かった」
ふぅ、とジョンが溜息をつく。
ジョン「ああ言うのの後だと、健康でふくよかなのは良いと思うな。平和な象徴だ」
スレ「失礼ですが……スミスさんの以前のご職業は傭兵業ですか……?」
ジョン「そんなとこだ。民間警備支援サービス会社社員って銘打ちゃいるが同じだよな」
ヨダカの持っていた台本に文字が浮かぶ。
『ジョンは語らないだけで多くの悲惨な現実を見ています。年端もいかない少年兵を蜂の巣にした事や、捕まった13歳以下の女の子たちすら性欲処理の道具にされている現実を知っています。故に「ふかふかして大きい方が良い」には「健康な大人の女性であって欲しい」という優しさが隠れています。そこまで本人は語らないし、涼風サイドとしてもこれ以上を一般市民に聞かせられないです。ナチスドイツや太平洋戦争中に本当にあったヤバい話をベースにした話もありますが悲惨すぎて表に出せないです』
読んだヨダカは自身の記録だけに留めておく事にした。
スレ「確かに梅毒の初期症状は見逃されやすいな。発症してもすぐ治ったように見えるから、その間に感染者を広げてしまう。潜伏期なら広げないとは言われるが0%ではない。医療水準の高い国なら第3期になる前に治療できるが、紛争中の貧困地域だと気が付いても治療を受けにくい……」
ジーク「ペニシリンがあれば良いが……第3期まで行ってると治せるか五分五分だよな」
遠い目になるスレイマンとジークフリート。彼ら自身、紛争地・貧困地での治療を行なってきていると救えない現実に直面する事が間々あった。
スレ「はぁ……やっぱりメンタル響くな……」
ジョン「胸派か尻派かって話なら民間警備会社にいた時に同僚と話したもんだがな。デカい乳もプリッとした尻も1番か2番かくらいしか違いは無いんじゃねーか?俺はどっちも好きだ」
言う事は終わったとばかりに大欠伸をすると、また船を漕ぎ始めるジョン。
ヤミ「相変わらずよく寝るねぇ、彼の御仁は」
ジョン「だまれ……こあっぱ……」
ヤミ「おや、寝言で怒られるという事もあるのだねぇ……実に面白い」
ADサンのスケブに「次はイオ」と書かれている。
ヨダカ「次はアスキーさんですね。お願いします……ってどうされました?」
ジーク「ありゃ顔が真っ赤じゃないか。熱でもあるか?……サーモセンサーモードで全身見たが体温上昇が急激だな。照れだなさては」
イオ「う、あ、あ」
赤面したイオは声もうまく出ず、挙動不審になる。
ジーク「お、ここでタレコミ情報だな……『アスキーさんはたゆんとした胸を無意識に目で追ってます。追ってる事に気付いて一人で赤面してます』だってな。匿名Fさんが言ってるコレどうなんだい、アスキーさん?」
イオ「ひ、ひ、ひ……」
オル「あー……大丈夫かいなこれ」
エドゥ「匿名Fって本人隠す気ないですよね」
ジーク「続きには『持ち主が誰とか考えてなさそうですし、人間関係もイマイチ把握していないでしょう。そこに揺れるモノがあるととりあえず目で追っているように思えます』……アスキーさん、ご愁傷様」
イオ「そっ、そこに!あるのが悪いんだろ!?見えなきゃ見てねぇよ!!目ぇ合わせたら失礼かと思って視線下げるとそこにあるんだからあるほうが悪い!!」
開き直るイオだが、スレイマンとベルナールの背後で何か燃えているのはまだ見えていない。
ジーク「『胸だけでなく美尻にも無意識に目がいっていると思いますよ。休憩時間の殆どは机の前で個人用端末いじってますけど、女性メンバーが来るとふと視線を走らせてます。本当に見境い無いですね。最低です。ケルンティアさんに訴えられて追い出された時は就活の手伝いしますよ』だそうだな」
イオ「なっ……!ひっ、ぐぅぅ……!」
イラッとして込み上げる言葉と、騒いだら誰かに怒られるんじゃ無いかと思う恐怖が拮抗して何も言えなくなっているイオ。
ヨダカ「涼風からの情報です。『ちなみに従姉妹のユリィはスタイル抜群ですがそれ以上に劣等感を強く持っているので対象外です。従姉妹なのでイオ×ユリもなくも無いですがアリよりのナシですね』とのことですね。何言ってるんですか涼風は」
イオ「……絶対、無しだ」
苦虫を噛み潰したような顔をしてイオは言葉を捻り出す。
スレ「そうか、そうか……という事はもしかして、医療班に来た時もそう言う目で見てたって事かな?」
イオ「え」
イオが顔を上げるとそれはそれは良い笑顔のスレイマンがいた。
スレ「医療班所属のアペルピシア・セラピア先生はオレの彼女なんだけどな」
イオ「ひっっ!?すっ、すみませんでしたすみませんでした」
真っ青な顔になるイオの脳裏に姉に比べれば断然たわわな女医先生の胸がちらつく。ついでにたゆんっと擬音が付きそうなカヌル山のような人の胸までちらついてしまったがばかりにまた顔が赤くなるイオ。
ベル「それなら私からも。もしかして、機械班のロザリーと話した時も見てたって事ですかね?」
イオ「ひえっ!?」
ベル「金色の髪のロザリー・エルナーは私の妻ですが」
イオ「すみませんでしたすみませんでしたすみませんでした俺が全部悪いんで責め全部追うんで許してくださいお願いしますすみません」
ベルナールが次の言葉を待たずに一気に話すイオ。
イオ「わかりましたとりあえず縄探してきます世間のゴミより役に立たない俺がここで生きてた事の方がおかしかったんだと思うんで地球にこの身体返してきますホコリよりは役に立つと思うんで」
ゆらりと立ち上がったイオがスタジオをうろうろし始める。
エリ「イオさん!早まらないで下さい!」
ビク「そうだぞ、イオに会えて俺は嬉しいんだからな?」
イオ「うぅ……やっぱり俺なんかが生きてちゃダメだったんだ……姉ちゃんが怪我する代わりに俺が死んだ方が良かったんだ……」
シュオニが操作する2カメのコードに吸い寄せられていくイオを見て、冗談だと思っていた面々の顔色が変わる。
エドゥ「アスキーさん!?」
スレ「おい、アスキー!ちょっと待て!」
途端に騒然となるスタジオ内。フラフラしているイオを止めようとメンバーたちが追いかける。
ヤミ「アスキー君」
凛としたユウヤミの声がざわめきを切り裂いた。イオが動きを止め、周囲のメンバーも動きが止まる。
イオ「は、は、ひゃい……」
ヤミ「首吊りだと苦しいだけだよ。中々死ねないし、上手く死ねても穴という穴から床を汚物だらけにするからそれはそれは醜悪な姿になってしまってね、後片付けが大変なのだよ。床もカーペットも何もかも遺体から染み出した雑多な体液に染まってしまうからねぇ。体液が床下まで行くと基礎から掃除する必要があるから清掃費用がかなり嵩むのだよねぇ」
にっこりといつもの貼り付けた笑みで語るユウヤミが、ゆっくりとイオに歩み寄る。
ヤミ「それから……飛び込み自殺をするとね、電車の車輪によって手足を8回轢断されてグチャグチャになった後、電車の底部の突起によって8回体を否応なしに突き飛ばされ、枕木と砂利の間で服と皮膚をベリベリ剥ぎ取られて、25m以上にわたり自分の体と体液をあちこちに散乱させながらもまだ意識が残存し、切り刻まれて肉塊になった自分の体と臓物を恨めしく眺めながら激痛と絶望の中で死んでいくのだよ。実に凄惨だと思わないかい?ついでに周囲の交通状況の被害から莫大な損害賠償が遺族に請求される事も忘れないでくれ給え」
聞きながら腰が抜けたのか、へにゃりと座り込んで震えながらユウヤミを見上げるイオ。そのイオの顎にそっと包み込むように手を添える。
ヤミ「君がその苦痛を背負う覚悟があるなら止めないけれど、家族やこの場にいる人に迷惑をかけたくないと思うなら、自殺は得策とは言い難いねぇ。役に立つ為に死んでも、得られるものは君の大事なお姉さんに請求される莫大な損害賠償と怨念だけだなんて悲しい話じゃないか」
怯えるイオの目にユウヤミの三日月に歪んだ目の奥が愉悦に光っているのが見えた。
ヤミ「ちなみに水死だと青紫の風船の如くそれはそれは醜悪なデスマスクになってしまってねぇ、家族ですら顔の判別ができないくらいに崩れてしまうのだよ。染み出した体えk」
ヨダカ「
主人。そこまでです」
ハリセンをユウヤミに突きつけるヨダカ。
ヤミ「どうしたんだい?迷惑をかけたくないと自殺まで思い詰めた彼を思いとどm」
パーン!と綺麗な音が響いて肩を叩かれるユウヤミ。
ヨダカ「よく周りを見てください。アスキーさんどころかこの場にいるメンバーが貧血起こしそうな顔になっていますよ」
ヤミ「痛いなぁ、もう。あれ?」
耳を押さえたユウヤミが周囲を見ると、イオほどでは無いにしてもそれぞれ顔色が悪くなっていた。うたた寝しているジョンを除けば、エドゥアルトだけ「凄い!さすが先輩博識!しかもちゃんと止められましたね!」と喜んでいる様子が異様である。
ヨダカ「と言うかその話が平気なのは強行犯担当や鑑識、それか医療関係者くらいですよ。医療関係者でも中々お目にかかる物ではありませんし」
イオが思い詰めて自殺を考えた事とユウヤミのグロテスクな発言と容赦なく叩いたヨダカと、と情報過多になった面々はついていけずに目を白黒させる。
ヤミ「何を言っているんだい?苦痛の解説には自殺を思い止まらせる効果があると言われているのだよ。勿論追い詰めて轢死体になったところが見たいだなんて一言も言っていないじゃないか」
ヨダカ「
主人。貴方のその思考で周囲に被害を広げないで下さい。それだけは守って下さいね?」
ジト目のヨダカがハリセンをぐりぐりユウヤミの頬に押し付ける。
ヤミ「うーん、ジャパニーズハリセンも紙束だから痛いのだよ〜?」
エドゥ「流石、先輩とヨダカさん……!漫才まで出来るんですね!頭叩かない優しさ流石です!」
きゃっきゃしている2人と1体。それを信じられないものを見るような目になったメンバーが、もうあの3人は置いとこうかと話し始める。
ヨダカ「教育的指導です。あ、今のところカットしておいてください」
しれっと言うヨダカにまた嘘だろの空気が流れる。
スレ「人だったらCT撮ったほうがいいかもしれない……?」
ジーク「涼風から伝言だ。『いくら涼風宅のキャラしかいないからと言って羽目を外すのはやめて下さい。収録をお蔵入りにしたいんですか3人とも?と言うかユウヤミお前出番まで喋るな(怒りのマーク)』だそうだ。リーシェルさーん聞こえましたかー?」
ヤミ「はーい」
にっこりしながら良い子のお返事をするがどこまで本心か怪しい。その間にフユに連れられたイオが楽屋へ連れて行かれる。
エリ「や、やっぱり、リーシェルさん、って……」
ヤミ「Need not to know.と言ってしまえばそこまでだけれどねぇ……犯罪心理学の知識で警察のコンサルタントをしていた頃もあったっけねぇ」
パチン、とでも音のしそうなウインクをエリックに向けるも、予期していたのか見事に避けられる。ありゃぁと言っている横からADサンから手渡されたバツ印のマスクを大人しくつけるユウヤミ。
ジーク「話を戻すが。今はチチトーーク!の収録で間違いないよな?」
ベル「間違いないですよ……色々ありましたが。他のお宅より脱線する率が高いですが。いや脱線しかしてない気がしますが」
スレ「そもそも涼風はシリアスな闇ネタ界隈の住人だもんな……チチトーーク!を収録する自体不慣れが過ぎるよなぁ」
エリ「そうですよね……
町一つ壊滅させる時や
館モノでトリックを考えてる時のほうが楽しそうでしたよね」
ADサンの持っているスケブには「次オルヴォ」と書かれている。
ヨダカ「先程は取り乱してしまい申し訳ありませんでした(主に
主人が)。というわけで次はオルヴォさんにチチトーーク!して頂きます」
オル「語って!語っていいんだよなっ!?」
フフフ、と光の浮かない怪しげな笑みになるオルヴォ。
スレ「ワシレフスキーさん……キャラ違くないか?」
ADサンのカンペには「オルヴォは最初からSNSモード寄りで参加しています」と書かれている。この中でSNSにいる時のオルヴォを知る者はいない。
オル「このリア充供の中に真の同志はいないと悟ったのでプレゼンさせていただきます!!」
やたらと熱のこもっているオルヴォ。勿論この中にそんなオルヴォを見たことがある人はいない。
オル「ぼくとしてはちっぱいこそ正義であると主張しますよ」
どこから出したのか、眼鏡をかけてくいっと持ち上げる。
オル「貧乳と言われがちですがぼくは品乳つまりは品のある乳であると思っています。勿論巨乳爆乳と言われるサイズにも良さはありますしそこにあればエロさを感じるものですが、品乳の清楚感に勝るものはないのです」
何を想像したのかにへらぁと口元が緩む。
オル「大きさの慎ましさもさることながら、身長が低いと更に良いですね。自分の胸のサイズや体格を気にして恥じらってる姿がなんとも可愛らしくて且つ背徳感も良いのでして」
フフフと笑うオルヴォ。2カメを操作していたシュオニは「ユーシンさんにこんなダメな大人を近付けてはいけない」と思った。
エドゥ「身長低くて、品乳で……えっっ……もしかしてオルヴォさんロリコンなんですかっ!?」
堂々と声を上げてしまうエドゥアルト。こんなオルヴォが保育士やってて良いのかとスタジオもざわつく。
オル「YesロリータNoタッチとはどこかで聞いた言葉ですが、ぼくはロリコンじゃありません。これはきっちり線引きしています。成人済みの合法ロリが良いのであって決して17歳以下のいたいけな子供達をそういう目で見ている訳ではありません」
きっぱり言って首を否と振るオルヴォ。
オル「よって、ピアルルのライラックさんはぼくの推しですが設定が未成年なので恋愛対象にはなりません。そのあたりご理解いただきたく存じます」
未成年云々以前にそれは二次元だろうと指摘できる人はいない。それほどまでにオルヴォの纏う雰囲気は本気が溢れていた。
オル「『海上の青い星』のセーラちゃんは未成年なので絶対ナシです。『この世界に有終の美を』のナイジュは合法ロリっていうよりロリババァだからちょっと微妙なんですが、『響鳴の彼方』のクララちゃんなら20歳の合法ロリですよな。クララちゃんならhshsのバブみを感じてオギャるの境地です」
ムーンが操作する1カメに向かってオルヴォがヴァイオリンを弾くクララのポーズを取る。
オル「できればその為に作られていない作品だと萌えるんですよねー。何も明言されていないところを妄想補完する方が萌えるじゃないですか」
もしこの場にテオフィルスかギルバートかフィオナかクロードウィッグでも居れば頷いたかもしれないが、残念ながら妄想補完が通用するメンバーではない。
ヨダカ「涼風から伝言です。『それで、3次元女子の好みないの?2次元と3次元の好みって違うよね?』だそうですが。どうなのでしょうか」
オル「現実は敵だ……リア充供がのさぼる世界なんだ……いっそ爆発してまえ」
ヨダカ「一気に沈みましたね」
ジーク「涼風情報だが。『オルヴォはこれまでに色々あって、3次元の女性に心を開くことも恋愛的に好きになることも物凄〜く難しいです。可能性ゼロとは言いませんが、良いなと思った子がいても勝手に想像の中で幻滅して現実には出てきません。主な理由はヲタク文化への不理解です。自分が言われた事もそうですが、ネット等でヲタ友だった人が家族や親しい人の不理解で散々な目に遭っている現実を知っています。少なくともヲタグッズを勝手に捨てない人がいいですね』」
ベル「オタク云々以前に許可なく勝手に捨てるのはダメですよ」
エリ「あ、集めている人から……したら、大切な物、ですからね」
うんうんと頷くメンバーたち。
ビク「あ、ひょっとして前線駆除班第3小隊のキッカさんとか第6小隊のウルリッカさんなら“合法ロリ”じゃないのか?」
エリ「キッカさん!?」
エドゥ「ウルさんとキッカさんですか!?」
ヨダカ「ウルとキッカさんですか……」
おしゃべり禁止マスクをしているユウヤミはビクターの発言に悩むような面白がるような表情をする。
オル「笑止!現実を生きている女性に向かって合法ロリなどという不埒な言葉は向けるモノではない!!あくまでこの言葉はネットスラングとして自虐の一種であり相手が二次元である前提だと捉えて貰えるだろうかっ……?」
エドゥ「意外と紳士なんですね」
オル「はあ〜?意外ではないぞ〜!?ヲタクは紳士淑女の集まりに他ならないでしょうが」
ジーク「お、涼風情報だな。『色々言ってますが、オルヴォは2次元を認めてくれる人であれば3次元の女子に結局そこまで見た目の選り好みしません。お互いのプライベートな時間を確保できて、二次元を語っても怒らない人で、かまちょでなければそれでいい方の人です。できれば一緒にマ●オカートやス●ブラやスプラトゥ●ンが出来ると嬉しいでしょう』」
オル「ゲーム一緒にできるの良い本当に良い。でもやっぱりちっぱいが良いですしできればス」
ジーク「話が終わらなそうだから次行くぞ。えーっと次は……」
ジークフリートがオルヴォの話の腰を無理やり折ってADサンの方に視線を走らせる。スケブには「ユウヤミ」と書いてある。
ヨダカ「話す前に涼風から伝言です。『ユウヤミが変な話をし出したら皆さんご退席下さい。無理に聞く必要ありませんから』だそうです。私からもお願いしますね、自衛が出来てこそ大人ですから」
おしゃべり禁止マスクを外しながら肩をすくめるユウヤミ。
ヤミ「随分色々気を遣って貰って悪いねぇ」
勿論悪いとは一欠片も思っていなさそうな笑顔である。
ヤミ「そうだねぇ、女性のバストサイズについて外野があれこれ言う時点で美しくないと思うのだけれど……まぁ、自然なままにバランス良く、が一番美しいのではないかな?」
エドゥ「先輩、そうだったんですか!?」
ヤミ「何を驚いているんだい、ウーデット君?」
エドゥ「だって、だって……!よく一緒にいるホロウ姐さんって巨乳じゃないですか!?」
ヤミ「ウーデット君……君には其処しか見えていないのかい?もう少し観察力があると思っていたのだけれどねぇ……期待外れだったかな?」
にこりと微笑むユウヤミだが目の奥が全く笑っていない。背筋がピシッと伸びるエドゥアルト。
ジーク「おっとここで涼風情報だ。『ユウヤミはバストサイズに好みありません。もっと言うと顔にもほぼ好みありません。外側なんて整形したり盛れば幾らでも変わる物にあんまり執着しません。もしヴォイド姐がクロエちゃん系の容姿だったらB専貧乳好きになってました』……それはそれで節操ねぇし酷いし後涼風の言い草も酷い。とりあえず涼風はクロエさんに謝れ」
ヤミ「中身重視って表現してくれないかい?この際だからメタ発言で主張させて欲しいのだけれど、『ヴォイド・ホロウのバストは規格外レベル』の設定が公式に決まったのは
食い倒れ共闘シーンを収録したより後だよ。あの当時書き手で親御さんの燐花さんも含めて誰も知らなかった情報だからね?後から整合性つけようとした結果が今の設定とも言えるのではないかな?」
ジーク「涼風が『怒ってる?』って聞いてんだけど」
ヤミ「怒ってないよー?性格設定上、最初から決まっていた事だったとしても対応は変わらないと思うし。ただ作者サイドが書かなかった事はキャラサイドとしても眼中に無いのと同じに見えるって覚えといてよね」
ヨダカ「涼風が『作者として不甲斐なし!穴があったら入りたい!』と言ってます」
ヤミ「何かに影響されてそうだねぇ……Twitter知識しかないくせに」
ヨダカ「ついでに貴方も埋めてもらったらどうですか」
ヤミ「怒ってる?」
ヨダカ「怒ってませんよ。機械人形に感情はありません」
そう言いながらヨダカは電子版台本をパタンと閉じる。浮かんでいた涼風情報を誰かに見られたくなかったのだ。
『ユウヤミは今でも“普通”の感覚は持っていません。生きている人間よりも惨殺された遺体の方がドキドキするし、興味持ちます。やって良いなら拷問や殺人も楽しんでやりますし、自分に死にも無頓着です。殺人は癖になるという通り、手段のラインナップに標準装備でありますが意識的に選ばないようにしているだけです。仕事で決まっている枠内の責任は負いますが、それ以上に責任感が働く事はまずありません。束縛を嫌うのは、思うままに動けば好奇心と向学心で無意識に周囲を壊してしまうので、常に軌道修正して生きないといけない故です。心の中に分離したアルセーヌが残ったままの影響もあるでしょう。なので、ヴォイド姐やミサキに損得横に置いて対応できるのはかなり異例であると言えます』
軍警への報告なら兎も角、一般人に聞かせる内容ではない。
オル「リーシェルさんとヨダカさんっていつもあんな感じなの?」
エドゥ「いつもあんな感じです。割と先輩の自業自得ですけど」
オル「言うね〜」
にこっとしながらオルヴォに答えるエドゥアルト。
ジーク「涼風情報によると『外見に執着しないと言いましたが、盛ったり減らしたりできる乳と違って、虹彩の色は好きな色に変えられないので他よりは執着する可能性が高いです』……なんだか理由が理由だな」
ヤミ「正確に言えば移植したりレーザー手術で色を変えるのはできるよ。安全は保証できないけれどね」
スレ「美容目的の移植はやめてくれな。本当に必要な人の為、合併症防止の為、健康なら出来るだけ自分の身体をいじらないでくれ」
思わず口を挟んだスレイマンにジークフリートもうんうんと頷く。
そんな2人を見つつ、ん〜そうだねぇ〜とさも悩んでいるかのように首を捻りながら眉間をトントン叩くユウヤミ。某刑事ドラマの主人公のようなポーズになっているが誰もツッコミを入れない。
ヤミ「君たち、『マジシャンが右手を出したら左手を見よ』と聞いた事はないかい?大体肝になる重要な事は目立たないところにあるものだよ」
エドゥ「虹彩は目立つと思うんですけど」
ヤミ「それも含めて“右手”だよ?かの事件記者は『目に見える事実は、見方によってはどうにでも解釈できてしまうので、事実をもとに推理すると、しばしば判断を誤ることがある』と言ったそうだからねぇ。目立つ“右手”に惑わされるなんて光物に群がる鴉みたいじゃないか」
エドゥ「成る程、勉強になります!メモしときます!」
早速携帯型端末にメモを書き込んでいくエドゥアルト。でもここはパラグラフ14。何を言っても何を書いても全部消えてしまうパラグラフ14である。
ジーク「また追加情報だな。『巨乳自体の寿命は何もしなければ10年か長くても15年ほどなので彼女候補には一切求めていません』……リーシェルさん、何思ってヴォイドさんのアレ見てるんだい」
ヤミ「そうだねぇ、継続的に鍛えてないと将来……というか5年後あたりから可哀想だなと。遅かれ早かれ鍛えようとなんだろうと結果的に崩れる
運命なのだよねぇ」
エドゥ「すっごく女子目線な意見じゃないですか。偶に先輩IKK●みたいですよね」
ヤミ「恐れ多いねぇ、例の高尚なギャグであればウーデット君の方が至極上手に言えそうだと思うのだけれどねぇ」
エドゥ「本当ですか!?えーっと……『どんだけぇ〜!?』」
エドゥアルトの渾身のギャグに対してスンっと音がしそうなユウヤミの表情。他のメンバーもドン引きで一言も発しない。
エドゥ「『まぼろしぃ〜!!』」
ここまで言ってみたものの反応がイマイチな面々を見てあっという間に顔が赤くなるエドゥアルト。
ヤミ「うん、それでねエントロピー増大の法則だよ。一つの状態を維持するには弛まぬ努力が常に必要だからねぇ」
エドゥ「いやそこは笑ってくださいよ!滑り芸人ですかオレは!?」
ヤミ「何かあったかな?小鳥の囀りなら聞こえた気がするけれど」
エドゥ「せんぱあああああいいいいい!!!」
地団駄を踏むエドゥアルトだが完璧にユウヤミは視界から消して涼しい顔をしている。
台本をチラリと見るヨダカだがまた閉じてしまう。
『反社会性人格障害(サイコパス)を抱えているユウヤミですが、昔は酷い素行症でした。要は反社会性人格障害の子供用の病名です。現在のユウヤミになるまでに行動認知療法や薬物投与などの様々な治療が行われて今現在になっています。そのおかげで現在は自己管理の徹底が出来る様になりました。それでも、立てこもり事件を解決ではなく実験の材料にしたり、罪悪感が無かったりと黒い所はまだまだあります。それで、いざと言う時の為の衝動を抑える薬が処方されており、普段はヨダカが管理しています』
そんな機密事項だらけの文面を読み上げられる筈もなく。痛むはずのない頭を抱えてヨダカはため息をつくような顔をする。
ジーク「ん、追加情報多いな。『実はユウヤミは自分の猫っ毛で癖っ毛な髪に苦労しており、サラッサラのストレートで綺麗なキューティクルの髪の女性に惹かれやすいです。脱色や染色や体調不良でボロボロになった髪や猫っ毛癖っ毛や人工髪にはほぼ興味示しません』……髪フェチか」
ヤミ「言い方に棘を感じるのだけれどねぇ?一般論として美しい物は美しいものだろう?」
スレ「んー、オレ的には綺麗なのは認めるけどつまらないなぁって思うな。癖っ毛の方が好き」
サラサラストレート髪のエリックやエドゥアルトもそこまで執着する感じもなく。
オル「わかりますぞ。サラサラストレートのキューティクルですべすべな髪って良きですよな……!」
髪に難があると言えばこの男もそうである。癖っ毛に困っている歴では間違いなくユウヤミよりオルヴォの方が上である。ちなみにもっと上のジョンは爆睡している為カウントされていない。
オル「サラサラストレートは我が人生の憧れです」
キリッとした顔でユウヤミの手を取って堂々と力強く握手するオルヴォ。
ヤミ「それはどうも……」
オル「どんな趣味でも素晴らしくないものはないんです!堂々と髪フェチを出せば良いじゃないですかここはパラグラフ14だし」
ヤミ「ふふ、ありがとうございます。お気遣い頂いて」
オルヴォの熱量にかなり引いているユウヤミだったが、大人の対応で微笑むとやんわり手を引き剥がす。
ヨダカ「涼風から追加情報ですね……『ユウヤミの場合、そもそも異性として惹かれる相手が圧倒的に少な過ぎるので母数が足らず好みやフェチ等断じるのは難しいです』。私としては小さい話だけの方が把握しやすくて助かります。それから『表向き言ってる事と実際の考えに乖離がある時もあるので意味わかんないですマジでどうにかしろお前この天邪鬼野郎』だそうですね同感です」
エドゥ「つまりは好きになった人がタイプなんですね先輩。あ、でもなんか先輩なら好きが高じてヘアスタイリストになってそうですね」
うんうんと頷きながら言うエドゥアルト。
エドゥ「ホロウ姐さん専属ヘアスタイリスト……良い響きじゃないですか〜」
1人で何を想像したのか楽しそうなエドゥアルトの肩に、ユウヤミがぽんと手を乗せる。
ヤミ「ところで……最後にまだウーデット君が暴露してくれてない気がするのだけれどねぇ?」
エドゥ「!?」
ヤミ「ほらほらウーデット君ぶっちゃけトークしてしまい給えよ?もうみんな恥を忍んで吐露したのだよ?死なば諸共と行こうじゃないか」
エドゥ「アタタタタ、先輩痛いです!そんなに力込める事ないじゃないですか!」
ギギギギと音がしそうな勢いでユウヤミに掴まれるエドゥアルトの肩。流石前線駆除班小隊長で手芸が趣味なだけあり、皆んなが思うより握力がある。
オル「北斗●拳みたいな声が聞こえた希ガス」
エドゥ「それならひでぶって言いますよっ!」
ヨダカが口を挟もうと動いた途端にパッとユウヤミが手を離す。痛かったぁ…と言いながらエドゥアルトはぐるぐる肩を回して調子を確認した。
エドゥ「な、なんか先輩の後で恐縮なんですが……」
困り眉の笑顔で頬をポリポリ掻いているエドゥアルト。
エドゥ「やっぱり大きくってふにふにもにもにしてる方がロマンが詰まってると思います!!出るとこ出てて引っ込むところ引っ込んでるのが最高ですよっ!」
言い切るエドゥアルト。
ムーンの1カメ。シュオニの2カメ。司会者席から見ていたジークフリートとヨダカの視点。3つのどの視点から見てもわかるほどエドゥアルトの顔が真っ赤になっていく。
エドゥ「オレは、先輩ほどカッコよくなれないんで、潔く騙されようと思います!」
スレイマンとベルナールが無言で拍手をし、他のメンバーも「まぁそうだろな」と頷く。
ADサンの方から巻いて巻いてと指示が来たので、エドゥアルトを弄りにいきそうだったユウヤミを止めに入るヨダカ。
ジーク「それでは全員の意見が出揃ったところで、意見をまとめてみるぞ」
ピョートル→大きくて筋肉で支えてるバストが良い。
スレ→大きめの方が良いけど弾力性重視。ケモミミ好き。
ベル→どのサイズにも良さがある。妻の胸が麻のように育つのを見た。
アキ→全てカレン基準。骨オタクの変態。
ロナ→姉貴の所為で感覚バグり気味。胸に反応しない。
ユー→世間の空気感による。個人としての意見はそのうち?
ノー→母親の胸を見た事はあるが、まだ興味ない。
エリ→胸も悪く無いが美尻の方がもっと好き。
ビク→小振りな方が好き。
ジョン→大きくてふかふかな方が良い。健康的だから。
イオ→大きい胸があると目で追ってる。綺麗な尻も目で追ってる。
オル→ちっぱいの背徳感が良いと言う合法ロリ好きの変態。
ヤミ→バランスの良さ重視だが基本外見に執着しない。だが髪フェチ。
エドゥ→出るとこ出て引っ込むとこ引っ込んでるのやっぱ最強じゃない?
ジーク「結論だが、全員何某かの意味で変態だとわかったぞ!」
ヨダカ「それでは次回のチチトーーク!ねぇねぇ好きな子いる?編をお楽しみにしてください」
メンバーが拍手をし、ジークフリートとヨダカがムーンの1カメに手を振る。
ADサンが「はいおっけー」と声をかけるとスタジオ内に漂っていた緊張感が一気に解れた。
其々に「お疲れ様でした」「意外でしたよ〜」「新たな一面ですね」などと話しながらスタジオを後にする。スタッフたちもテキパキと機材を片付けていく。段々と消されていく照明。
ジョン「ひぇっくしょん!寒ぃなぁ……収録なら暖房くらい……って誰もいねぇじゃねぇかっ!!」
誰もいなくなったスタジオで1人くしゃみをしたジョン。そそくさとスタジオから退散していくがまだ彼は知らない。先にスタジオを後にした面々は偶然にして女子版チチトーーク!を収録したばかりの女性メンバーたちに出くわして物凄く気まずい空気になってしまった事を。
>不定期更新!!