薄明のカンテ - 若きお嬢さんの悩み/べにざくろ
私の名前はミア・フローレスです。
マルフィ小学校の⚫年生です。
私には好きな人がいます。私の好きな人の名前はネビロス・ファウストさんといいます。とっても優しくて、とってもかっこいいお兄ちゃんです。でも、最近は元気がありません。
「 ネビロスお兄ちゃん、元気だして! 」
私はネビロスお兄ちゃんに元気になってほしいので、がんばれと言ってみるけどネビロスお兄ちゃんは、私が言っても悲しそうに笑います。
ネビロスお兄ちゃんが元気がないのは、お兄ちゃんととっても仲よしのルミエルお姉ちゃんがいないからです。ルミエルお姉ちゃんは、とっても優しくて、とっても美人のお姉ちゃんです。ルミエルお姉ちゃんが、とっても遠くの外国に行ってしまったので、ネビロスお兄ちゃんは寂しくて元気がないのだと思います。
「 ファウスト君はルミエルちゃんの事が好きなんですよ 」
同じクラスの私のお姉ちゃんのララお姉ちゃんが言っていました。
私も、もし好きなネビロスお兄ちゃんが、遠くに行っちゃったら寂しくて泣いちゃうと思うので、ネビロスお兄ちゃんの悲しい気持ちが分かる気がします。
でも、ネビロスお兄ちゃんとルミエルお姉ちゃんが結婚したら、私は嬉しいけど悲しいです。そうしたら最近、お友達のマジュちゃんが良いことを教えてくれました。
「 いっぷたさいとかいうのをやればいいんだよ! 」
マジュちゃんは時々難しい言葉を使います。マジュちゃんの中学生のお姉ちゃんが、とっても頭が良くて天才だから難しい本が、お家にいーっぱいあるんだそうです。その本を読んで覚えた知識を教えてくれるマジュちゃんも天才だと私は思います。
「 いっぷたさいってなぁに? 」
「 だんなさんが一人でおくさんがいっぱいいるんだって 」
「 わたしとルミエルお姉ちゃんがいればいいから、おくさんがいっぱいじゃなくていいなぁ 」
「 二人はいっぱいだよ! 」
「 そっかぁ! マジュちゃんは天才だね! 」
「 天才はミィ姐だよ! 」
マジュちゃんがお姉ちゃんのことを言う時、とっても嬉しそうです。「 ミィ姐 」というのは天才のお姉ちゃんでミサキ・ケルンティアお姉ちゃんです。ミサキお姉ちゃんは、お姉ちゃんだけど上のお姉ちゃんのアン・ファ・シンお姉ちゃんと違って、名字がマジュちゃんと違います。不思議だけど、それは「 かていのじじょー 」というものなので深く聞いてはいけないそうです。
ネビロスお兄ちゃんとルミエルお姉ちゃんと私で一緒に生活できたら、とっても楽しいだろうなあと思います。ララお姉ちゃんも一緒にネビロスお兄ちゃんの奥さんになったら、もっと楽しいと思ったからララお姉ちゃんにも言ったら、
「 お姉ちゃんは遠慮しておきますね」
と言われました。とっても残念です。
さっそく、マジュちゃんに教えてもらった『 いっぷたさい 』を、お友達のクロエちゃんに言ってみました。
クロエちゃんは「 けいざいのぷろへっしょなる 」を目指している格好良い女の子です。クロエちゃんも難しい言葉を使うことがあって、私ももっとお勉強しないといけないなぁと思います。
「 わたしね、ネビロスお兄ちゃんとルミエルお姉ちゃんといっぷたさいする! 」
私が言うと、クロエちゃんは変な顔をしました。
「 一夫多妻? 」
「 マジュちゃんが教えてくれたの! 」
「 マジュ氏が? 」
クロエちゃんにマジュちゃんが教てくれたことをお話すると、クロエちゃんは余計に変な顔をしました。
「 カンテ共和国は一夫一妻制の単婚しか認められてないですよ 」
「 んん? どういうこと? 」
「 ネビロス氏とは一人しか結婚できないということです 」
「 ええ!? 」
ネビロスお兄ちゃんと、ルミエルお姉ちゃんと結婚 しようと思ったのに、それはできないとクロエちゃんに言われてしまいました。
「 あーあ。ネビロスお兄ちゃんが2人いればいいのに 」
「 クローン技術の進化を待つしかないですね 。それか法律を変えるか 」
「 え? 」
「 大統領に頼んで国の法律を変えて重婚可の世の中にすれば良いんですよ 」
クロエちゃんは本当に同じ年なのか不思議になるくらい、むずかしいことをたくさん知っています。
「 それじゃ、私はだいとうりょうにおねがいのお手紙書いてみるね! 」
「 あー、そうですね。やらないよりはマシだと思います 」
私がもっと大きくなったときにネビロスお兄ちゃんと結婚できるように、だいとうりょうにはほーりつを変えてもらいたいです。
めざせ、いっぷたさい!