薄明のカンテ - ミサキとユウヤミのじゃれあい/涼風慈雨
「これ、本人に伝えて。」
嫌とか言うなとミサキの冷たい瞳が光り、ユウヤミに書類が手渡される。
その視線を軽く受け流して微笑むユウヤミ。
「時にケルンティア君、この後空いてるかい?」
「忙しい。」
間髪入れず答えるミサキ。
揺らがぬミサキの強い視線とまとわりつくようなユウヤミの柔らかな視線が絡まる。
「本当につれないねぇ、ケルンティア君。」
表情を変えないミサキに既に下がってる眉を更に下げて諦めるユウヤミ。
「いいよ、伝えておいてあげようじゃないか。ただし、このお代は高くつくよ?」
クスリと笑うユウヤミを尻目にミサキがカバンからさりげなく数枚の写真を取り出す。
「これでいいでしょ。」
ミサキの手に握られているのはヴォイドの生写真。
「何をどう思ってるかに興味はない。噂からの推測。」
握られている写真の中にヴォイドにユウヤミが壁ドンして逃げられているものが混じっているのを見つけ、ユウヤミの白い頬の色がサッと変わった。
必死に動揺を隠そうとしているのか微笑みを崩さないが、明らかに顔色が悪い。
「一体何処で撮ったのかな?こんなローアングル?」
「ただの噂に実体を持たせる。」
「観葉植物?悪趣味だねぇ。」
「使える駒を使用不可にするならそれなりの措置を取る。」
「物騒な事を言うねぇ、ケルンティア君。」
「逆らう気?」
「まさか。その程度かい?」
「15年前の新聞も必要?」
「……!」
わずかに、ユウヤミが目を見開いた。
「探偵屋も軍警の首輪。」
「素人が軍警組織に首を突っ込むのは感心しないねぇ。」
「別に。使える間は使う。」
「そうかい、今日はこのホロウ君の写真に免じて真面目に仕事するよ。」
さっとミサキの手の中から1枚だけ写真を抜き取って席を立つユウヤミ。
「証拠ができちゃったよ?ケルンティア君?」
写真をひらひら振って笑うユウヤミにジト目で返すミサキ。
だからこの人は嫌いなんだと口の中で呟く。
「今度の時は君の番だよ、私に付き合ってくれないかい?」
パチンと音のしそうなウインクを残して部屋を出て行くユウヤミ。
扉が閉まる音にミサキのため息が重なった。

その後、写真はあっけなくヨダカに見つかり没収された。
壁ドンを逃げられた写真はまだミサキの手の中にあるので、何か理由をつけて回収しようとユウヤミは考えたが、良いタイミングで第6小隊は支部勤務の割り振りが回ってきたので断念せざるを得なくなったのだった。



補足ありはこちら