薄明のカンテ - ヘレナと面談しましょうか
涼「ようこそ、パラグラフ14へ。」
へ「美味しいご飯があるって聞いたですの。慈雨しかいないじゃないですの!」
涼「はて?誰だい、そんな事言ったの?」
へ「寮のポストに『新作ご飯の味見を頼む。パラグラフ14まで来られたし。涼風』ってハガキが届いたですの。」(ハガキを涼風の顔に叩きつける)
涼「美味しさは保証してないけど、味見は本当にしてもらうよ。今冷蔵庫で寝かせてるところだから。」(叩きつけられたハガキを剥がしてヘレナに渡す)
へ「そういう事ですの…」
涼「ってわけで、出来上がりまでの時間を使って面談しましょ!」
へ「面談!?」
涼「そう。こっちからインタビューしていく感じだけど、質問があったら全然聞いて!」
へ「仕方ないですの……どうぞですの。」
涼「じゃぁまず。今の結社でのお仕事はどう?楽しいとか怖いとか。」
ヘ「山の中とは違った楽しさがあるですの。ゴミ箱が近くにあるのは便利ですの。」
涼「ゴミ箱ってそんな使う?」
へ「当然ですの。使える材料がてんこ盛りで、山の中よりずーっと罠の材料になるものがあるですの!」
涼「サバイバルに使えそうな材料ってことね。やっぱり無敵のサバイバーは目の付け所が違うね。」
へ「褒めてくれてありがとですの!」
涼「そういえば、機械人形が怖いって前言ってたけど今はどうなの?」
へ「あ〜……何を考えているのかわからなくて怖かったですの。一緒に仕事するようになって、わかるようになったのもあるかなぁ……今はそんなに怖くないですの。」
涼「なるほど。知らない物への怖さってあるよね。マルフィ結社の前線駆除班って職にはどんな思いがある?」
へ「暴走する機械人形を止めるのはいい仕事ですの。でも……たまに迷いはあるですの。」
涼「迷うってどんな事で?」
へ「あたしが猟師をしていたのは、食べる為ですの。荒らされて困っている人の為もあったけど、食べられるから獲っていたんですの。テロを起こす機械人形は食べられないし破壊するばかりで何だか微妙ですの。」
涼「ふむ。人の生活を守る以上の生産性が無いってことかな。」
へ「ちょっと違うですの。獲った動物なら隅から隅まで使うのが礼儀だけど、機械は壊すばかりで礼儀も何もないですの。食料にも服にも薬にもしてあげられない機械を仕留めるなんて、エミリアとじいちゃんの事が無ければ続けてないですの。」
涼「なるほど。生きているものへの礼儀って大事だよね。」
へ「そうですの!」
涼「じゃぁ、次の質問に行くね。結社に来て、面白い出会いってあった?」
へ「うーん、出会いと言えばユリィですの!」
涼「今は同じ前線駆除班の第4小隊にいるよね。」
へ「そう!ユリィに会わなかったら結社にも入らなかったですの。エミリアの親友で、高校時代に何度かお泊まり会に来てるですの。エミリアとケンズに引っ越した後もたまに遊びに来てたですの。」
涼「割と濃い付き合いだったんだね。結社に入ってからの仲は?」
へ「とても良いと思うですの。ユリィはエミリアの事を語れる唯一の相手ですの。今は辛いって言うよりも思い出話に出してあげないとエミリアも可哀想かなって思ってるですの。」
涼「ふむふむ。さじ加減が難しいね。同じ班内で他に面白い人とか気になる人っている?」
へ「小隊長のサオトメさんとか、参謀のシードさんかな。サオトメさんは頼り甲斐があって仕事が楽しくなるけど、働きすぎなのは玉に瑕ですの。シードさんは普段と仕事のギャップが大きくて面白い人ですの。」
涼「ん〜確かに。ロナは働きすぎだよね。班外だといる?」
へ「え〜と……そう、ワシレフスキーさん!確か保育部って言ってたですの。ユリィに近づく怪しげな奴は監視対象になるですの。」
涼「まさかの監視対象。ユリィに会いに来たオルヴォに睨みをきかせてたもんねぇ」
へ「当然ですの!エミリアの親友が危ない男に引っかかったらどうするですの!」
涼「う〜ん、ユリィはちゃんと見極められると思うよ。」
へ「でも心配なんですの〜!!」
涼「わからなくもないけどさぁ……あ、他はいる?」
へ「むぅ……ん〜と、ベネットさん?」
涼「ギルバートくんがどうかした?」
へ「あの人、本当に煩いですの。前世駆除班は直ぐ物壊す〜とか言っちゃってるけど、こっちも壊したくて壊してるわけじゃないんですの!壊すなってあたしの方が言いたいですの。しかも壊してる元凶はあたしじゃないですの〜!!」(机をバンバン叩く)
涼「落ち着け〜ヘレナ〜はい、深呼吸〜!吸ってぇぇ吐いてぇぇ吸ってぇぇ吐いてぇぇ」
へ「むぅ……」
涼「ともかく何かあったんだね。大丈夫、ヘレナは無敵のサバイバーなんでしょ、物の大切さは良く知ってるよね?」
へ「もちろんですの。」
涼「なら、わかってる人がちゃんと認識を広めてあげるのはどう?」
へ「言ってるですの。でも、ゴミと素材の見分けがつかないなら話が始まらないですの。」
涼「うん、なんか斜め上だったわ。ヘレナはそのままでいい。うん。このままでいい。」
へ「そうですの?」
涼「そこ変えたらキャラシの意味がなくなるからねぇ……この話は横に置いておこう。ところでヘレナ。前にユウヤミに一目惚れしてなかったっけ?」
へ「ひゃっ!?な、ななな何を突然言うですの!?」
涼「覚え違いかなぁ。そんな事はないよねぇ、ユリィに止められてたもんね?」
へ「忘れてくださいですの!!一時の気の迷いですの!!」
涼「え〜?あれは気の迷いじゃないよねぇ?現にヘレナの肩が喜んでるし。」
へ「うにゃ!?なんなんですの、根掘り葉掘り!」
涼「この手の話は視聴率稼げるんだよ、よろしく頼むよぉ」
へ「嘘ばっかり、視聴者なんて元が少ないくせに何言ってるですの!」
涼「待ってヘレナ、今のは刺さってめちゃくちゃ痛いんだけど。やめてマジ痛い」
へ「自業自得ですの。」
涼「う〜痛い〜痛すぎる〜ヘレナが恋話してくれないと治らない〜」(痛いと転がる涼風)
へ「うっ……」(転がる涼風を放置しようか悩むが見るに耐えないと諦めた)
へ「確かに一目惚れしたですの。でもユリィに止められて現状観察する事にしたですの。」
涼「要はストーカー?」
へ「何言ってるですの!見極める為ですの、ストーカーじゃないですの!」
涼「あそ。なら、いいんだけど。一応聞くけど視線が合うとどんな感じ?」
へ「え、あ、そりゃ……」(茹でタコのように赤くなって小さくなるヘレナ)
涼「ありゃりゃ、思ったより拗らせてる……ごめんよ、ヘレナ。無理に聞き出して。」
へ「もう、いいですの……?」(潤んだ目で見上げるヘレナ。可愛すぎて悶絶する涼風)
涼「げっほ……死ぬかと思った……あ、そろそろ料理が出来上がる時間だな。ちょっと冷蔵庫行ってくる〜」
へ「いい気なもんですの。」
涼「おまたせ!テリーヌ作ってみたから試食よろしく〜」
へ「テリーヌ、オシャレ!いただくですの!」(口に含むヘレナ、何かを察知し固まる)
涼「どうかした?ヘレナ?」
へ「げほっ……これ、材料なんですの?」
涼「裏山のキノコ。」
へ「ゲテモノは好きだけど、毒は範疇外ですの。」(怒気を含むヘレナの声)
涼「これ毒キノコなんだ?見分けつかなくて悩んでたんだ〜ヘレナに毒味して貰って良かった!」
へ「涼風!殺す気ですの?」
涼「全然?むしろヘレナなら何食べても死ななそうと思って。」
へ「あたしも人間ですの!毒食べたら死ぬですの!!」