薄明のカンテ - アンと面談しましょうか
涼「ようこそ、パラグラフ14へ。」
ア「いきなり呼び出してなんなんだよ……てか、パラグラフ14って何。」
涼「あ〜!!やっぱりアンはいい子だ!!今まで誰も聞いてくれなかったんだよ!!」
ア「話が長くなンなら別にいいや。」
涼「ゑ」
ア「んで?」
涼「呼び出し状の通り、面談だよ。他の方々に親しんでもらいたいからね。」
ア「……どうせ、個人的な興味が先走ンだろ?」
涼「全部が全部じゃないさ。答えたくないならノーコメって言ってよ。」
ア「あ、そ……ンにしてもあーしが面談対象になるとはな。」
涼「それは同意見。アンの成分はリアルの涼風が結構入っちゃったから聞くまでもないんだけどね。対外的な目的だから仕方ないって事で。」
ア「それ、オリキャラに言う台詞かよ?」
涼「本来は違うだろうけど、ボクと君たちの仲じゃん?……ってボクがインタビューされてどうすんだい!」
ア「……どんな仲だか知らねェけど、わかった。質問に答えるよ。」
涼「うん、助かる!!まずは、今のアンがどの時代のアンか教えて!」
ア「は?」
涼「え、重要でしょ?『年末年始』より前とか、『積もり積もった思い』より後なのか。時系列はっきりしないと読者の皆様がびっくりしちゃうでしょ?」
ア「読者って……メタ過ぎンな。」
涼「すみませんこれ本当に大事なんできっちり答えて下さいお願いします」
ア「……ギルバートには、本当に悪かったと思ってる」
涼「了解。何某かで報えるように製作者サイドとして全力を賭すよ。それは約束する。」
ア「そう、か……」
涼「うん。それじゃ一つ目の質問。今の結社でのお仕事ってどんな感じ?面白い?」
ア「慣れた仕事だってのが一番助かってる。機械班内でも別に問題は起きてねェし、ストレスなく働けてるからいいンじゃねェか?」
涼「ま、そうだよね。支部勤務はどんな感じ?」
ア「支部勤務は流石にキツいな……」
涼「具体的には?」
ア「一人で全部の機械メンテをしなけりゃならねェのが1番キツいな。しばらくマジュは他人の家か保育部に預ける事になるし、我慢してもらうのも辛い。」
涼「そうだよねぇ、まだ6歳だもんね。」
ア「マジュの腕なら留守番くらい任せられンだけどな。どっちかっつーと防犯の問題だな」
涼「防犯?そんなに治安悪かったっけ?」
ア「岸壁街程じゃないっつっても、何処にだってヤバい奴はいンだろ?」
涼「うーん、そうだね。保育部以外の預け先ってどこなの?」
ア「それ、“対外的”に入る奴か?個人的な興味なら答えねェぞ。」
涼「マジュの理解を深めるのに必要でしょ?嫌だって言うならマジュに聞くけど。」
ア「ちっ……」
涼「舌打ちするくらいなら聞かないよ。んじゃ二つ目の質問。結社で面白い出会いって誰かあった?」
ア「機械班だとエルナー夫妻だな。二人とも学者先生だって言うのに凄く気安い感じで不思議だな。ロザリーが経理部と喧嘩するのは本当にやめてほしいけど。」
涼「なるほど?エリートの上から目線な感じが少ないからかな?ベルは中学時代にワルやってたからかもね。」
ア「そうらしいな。あの二人見てると学者先生も人間なんだなって思う。後、あそこんちにはフランソワって4歳児がいるだろ?保育部でマジュが遊んでやる事もあるらしくて、その繋がりもあるな。」
涼「マジュの繋がりね!ママ友みたいな空気にはなれた?」
ア「ママ友……?いや、あーしは母親じゃねェし。」
涼「あそー、ほぼ母親役だと思うけど?」
ア「あーしに母親をやる資格なんてねェよ。一瞬の気の迷いで拾った母親なんて嫌だろ。」
涼「形だけでも居る方が良い気もするけどねぇ……そういや、アンってマジュ繋がりの知り合いは多そうな気がするなぁ」
ア「マジュ繋がりか……医療班のアキヒロにはかなりお世話になってると思う。」
涼「どう言う感じで?」
ア「マジュは凄い動くだろ?落ち着きが無いっていうか。それでよく怪我するから医療班
自体によくお世話になンだ。」
涼「あ〜そうだよね、いつも何処か絆創膏貼ってるよね。」
ア「そう。それとマジュがアキヒロの姪っ子のカヤと仲が良くてな。アキヒロと送り迎えで顔を合わせる事も多いンだ。流石に小児科も診てただけあるよな、子供の扱いが上手いし色々情報交換できてありがたいよ。」
涼「それ大事だよね。医療関係者から子供の扱いについて聞けるのって助かるよね。」
ア「あぁ。アキヒロの詳細は知らないけど、ケンズのテロで検死に参加してたっていう噂は聞いた事ある。他の奴より命の重さを知ってそうだよな。」
涼「うんうん。他にも面白い出会いってあった?前線駆除班とか絡み多いと思うけど。」
ア「前線か。つったらロナとユリィだな。」
涼「ほぉ?どんな感じ?」
ア「ロナはミサキの事で。気難しいミサキに振り回されてるみたいだったからつい声をかけちまった。今はミサキの報告会を定例会にして、エッレ(酒も飲める小料理屋)で飲み友してる。」
涼「ミサキ繋がりで飲み友にまでなってたか。そうだよね『年末年始』で宅飲みしてるもんね。」
ア「二度とやらねェけどな。つくづく、ロナは働きすぎンだ。あんな根の詰めかたしてたら命がいくつあっても足ンねェだろうにな。誰にでも優しいのが諸刃の剣だってのもわかってねェ。結局は通常居住区の真っ当な人間なンだろうよ。」
涼「普通の人間は死ぬほど仕事しないよ……ロナには他の原因があるからさ。」
ア「ミオリか?まぁ、あの共感力と優しさがあるからミサキとも折り合えるンだろ。」
涼「そうなんだよね。あれ、ユリィは?」
ア「ユリィ?あぁ、彼奴もミサキと同じで無表情だろ?けど、ただ顔に出ないだけで頭の中は色んな発想と感情をこねくり回してるらしいンだよな。『瓦100枚割れそうなくらい嬉しい』は流石に驚いたけどな。」
涼「ガチで割れるからじゃない?」
ア「マジ?流石アクション女優。壁は登るものっつってたしな。あぁそうだ、あだ名も変な奴が多いだろ?3秒で付けるってのが恐ろしいな。『無気力』なんて呼ばれたくねェよ。」
涼「いやーあれはユリィの記憶術だから。作者権限で禁止にはできないよ。」
ア「ミサキがバニラでヒルダが砂浜。会話に出てきてもンなのわかるか。」
涼「あ〜それはわかんないねぇ……慣れて。ボクには止められない。」
ア「肝心な時に役に立たねェな。涼風。」
涼「ボクの役目はみんなの様子を絵や文字に写しとる事。操作はできないよ。……それはそうと。出会いと言えば?誰か忘れてない?」
ア「誰かいたか……?悪ィ、思い出せねェ。」
涼「なんと言う事よ……(姫抱っこまでされた癖に)忘れるなんて……」
ア「ムーンか?仕事に支障はねェし、前の持ち主のお陰でわかる範囲も増えたみてェだし。たまにやってる手品は面白いな。マァ、うちで引き取ったっつってもほぼ機械班の持ち物だよな。」
涼「あーうん!そう、そうなんだけど!そうじゃないんだ!ほらぁもっとこういるでしょ?ねぇアンってばぁ〜?」
ア「五月蠅い存在なら一人心当たりが」
涼「お!?」
ア「見ると何かイライラしてな。そこに居るだけで圧があるっつーか。てゆーか、あーしの苦手なものの塊りみたいな人間だよな。彼奴。」
涼「おっと?まずそこから?」
ア「体力が有り余ってンだろうな。勢いだけで五月蠅いったらありゃしねェ。器用に生きろとは言わねェけど、もっと力加減考えろってもンだろうが。見てらンねェよ。」
涼「雲行きが怪しいな」
ア「この間助けて貰った事は感謝してっけど、一回で全部帳消しにはなんねェよな。」
涼「なんちゅーことや……」
ア「何が?」
涼「こげな事があってよかとですか……こげな悲しか事があってよかとですか……」
ア「涼風、標準語忘れてるぞ?」
涼「無理だ、無理にちげぇねぇ……おらにゃぁそないなこった認められんぜよ……」
ア「方言ぐっちゃぐちゃじゃねェか涼風、一旦落ち着けって。」
涼「そーゆーアンだってかなりべらんめぇ調の江戸っ子節じゃないの」
ア「涼風。洗面器に漬け込ンでやろうか?」
涼「すみませんでした巫山戯て本当にすみませんでした」
ア「共同創作者との兼ね合いもあるンだろうけどさ、涼風も問題起こすなよ?」
涼「アンのありがたい言葉、肝に銘じます。気を付けます。」
ア「ったく……で?今回の面談はこれで終わりか?夕飯の準備が忙しいから帰りてェんだけど。」
涼「あーっと、三つ目の質問!これラスト!良き人はいた?」
ア「“良き人”?」
涼「うん。アンも23でしょ、一生独身でマジュを育てるのは大変じゃないかって思って。老婆心だけど聞きたい。」
ア「ふーん……ならいねェな。価値観のズレはデカイだろ。岸壁街の生まれながらの負け組が通常居住区の人間と釣り合うわけねェだろ。」
涼「やっぱり気になる?」
ア「数ヶ月前まで岸壁街を怖れて近寄らなかった連中ーー涼風の言う意味でいきなり仲良くできるか?」
涼「なるほど。乗り越えるものはお互い多そうってところ?」
ア「そうなる。」
涼「ほほぅ……とりあえず、面談来てくれてありがとね。これ、お土産のおかず。麻婆茄子は食べた事ないと思うからあげる。アク抜きしてあるし辛くないしマジュもミサキも食べられるよ。」
ア「わざわざ悪ィな。おかずまで。」
涼「いいって事さな。ちゃんと良き人見つけるんだよ〜」
ア「はぁ!?!?」