薄明のカンテ - アサギと面談
ア「面談って何するんだ?俺これからロナと…」
燐「あ、稽古?」
ア「いや、この間壊しちまった建物の主人に謝りに行く」
燐「また壊したんかい」
ア「勢い余って…ついロナには悪いことした」
燐「我が子ながら馬鹿力よな…」
ア「あ、そう言やぁ…」
燐「ん?」
ア「ウェンズデーって俺らの主人手に掛けるだけの腕力だったろ?最初っからああだったのか?それとも、最後だけああなったのか?」
燐「き、急に重めの話振られたよ…」
ア「主人はウェンズデーを愛玩用だと言ってた。主人にとっての愛玩が何を意味するかは分かるようで分からないが、少なくともあれだけの力を必要としないものだったのは分かる」
燐「うん…ウェンズデーは腕とか普通の機械人形に比べて脆い作りになってたから…それだけじゃないけど…」
ア「?他にも何かあるのか?」
燐「(あの狸親父が特注で作らせたプログラムを搭載してて、もし謀叛かそれに準ずる反逆行為、破壊行為を行おうものなら腕やら足やらが壊れる仕組みだったんだよねぇ…おまけにリアリティを求めたあまり、人間と同様に体の痛みと言うか危険信号を感じてそれを苦痛や恐怖として処理する様に作られてたなんて言えない…ウェンズデーと言う一種の完璧な奴隷を作る為に、彼女の嫌がる姿を見たいが為に法に触れる事もやむなしな主人だったとも言えない…)」
ア「よく分かんねえけど、今はロナもミサキも居て前より色んな事覚えられてると思うんだ。 結社に来る前よりな。他はどうだか知らねえが、機械人形はネットワークを使って情報を得るだろ?だからもしかしたら、耳から聞いて教えてもらう事は、聞いて理解して処理をしてって凄くアナログなアッ プデートな気がするんだよ。 単に俺の覚えるシステムを重要視される瑣末な物導入されたのかも分かんねぇけど」
燐「否めない」
ア「だとしても、皆のおかげで俺は前より物もわかるしそれはそれでこだわらなくて良いと思うんだ。俺がどんな風に作られたか考えるのも今更だろ? ただ…ウェンズデーにもう一度会いたい。ウェンズデーと話してると、ロナやミサキと話すのと違う回路がはたらく気がするんだ。何だかよく分かんねえけど、ウェンズデーと話す時しか動かないものがあったんだ」
燐「おお…っ!そ、それはウェンズデーがいない今動く気配は…?」
ア「…無いな。ウェンズデーの事を思い出したりすると微かに動くが…他の誰と話してても反応しねえんだ。ウェンズデーだけなんだ。最後、暴走した時俺、アイツを壊したろ?後悔はしてた。でも脆いのに無茶な暴走してたから苦しんでたかもしれない。今の俺の勝手な判断だが、壊してやれて良かった」
燐「(洪水)」
ア「…オイル漏れてるぞ」
燐「いやオイルじゃねえよ」
ア「見てくれ、これ」
燐「…何この子」
ア「こいつ見てると近い回路が動くからウェンズデーって名付けた」
燐「猫やないけ」
ア「こいつもそうなんだ」
隣「犬やないけ」

結局まだ気持ちに気付かないアサギ。 そもそも気持ちの複雑さを理解する事があるんだろうか。会話は成立する、が、物を知ると言う範囲で見れば大きな赤ん坊感は否めない。
でも、ウェンズデーに対して特別な回路が動いたのと同じ様に、ロナ君とミサキちゃんに対してもまた違う 「特別な回路」が動いてるのもきっと気付いてる。これから更に「特別な回路」が増えるんだろう。戸惑いつつ嬉しいとも思うんだろうなぁ。



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